旅先での出会いと、心地いい家づくり
【細沼ちえさんのコンパクトライフ 後編】

人の手が通った、
大切に育てたいもの

インテリアはどんなものが好きですか?

気づけば、新品よりも歴史を刻んでいるものの方が圧倒的に多いです。我が家には人から譲り受けて使っているものもあります。

部屋全体

キッチンカウンター

例えば、キッチンの器を収納している作業台は、フリマサイトで手に入れたもの。前の持ち主さんはたしかデザイナーさんで、紙を保管するのに使っていたみたいです。

器のラインナップも個性豊かですね。

旅先のベトナムやモロッコで見つけた器や、日本の陶芸家・青木良太さんの作品、以前住んでいたマンションのエントランスにあった“ご自由にどうぞコーナー”でいただいたもの、実家から持ってきたものなど、来歴は本当に様々です。

旅の思い出を、
暮らしの一部に

部屋を見渡すと異国情緒溢れる雑貨が多いですね。

我が家には旅の思い出もたくさんあります。自分の感覚で選んでいるので、国はさまざまですが、私らしい物が集まってきます。今まで15カ国以上旅をしましたが、いつも誰かに誘われて行くことが多くて、未知の土地で、未知のものと出会う。それが楽しいんですよね。旅先で友達と買い物をしていると『これ買うの!?』とびっくりされることがよくあります(笑)。

旅で出会ったお気に入りを教えてください。

ラクダの水差し

乗り継ぎで立ち寄ったドバイの空港の、ザ・お土産ショップで見つけたもの。たくさん同じ商品が並んでいたのですが、1点1点しっかり吟味して、好みの子を持ち帰りました。

アクセサリートレー

フランスのニースで古着屋さんへ訪ねたとき、そこの店員さんにリコメンドしてもらったお店で買いました。片言の英語しか喋れない私に、地図を書いて説明してくれて、とっても親切にしてもらった思い出があります。

卵型のアロマウッド

奈良の奥地・天川村で出会ったもの。本来はアロマオイルを垂らして使うそうですが、我が家では素の木の香りのまま楽しんでいます。

とうもろこしの写真

アフリカのシエラレオネへ行ったときに撮った、大量の干しとうもろこしの写真。現地ではみんなガシガシ食べていて。私も挑戦しようとかじってみたのですが、歯が欠けるかと思うほど硬かったです(笑)。

2拠点生活が生んだ、
暮らしの変化

東京と香川の2拠点生活。始めてみていかがですか?

とっても悩みましたが、人生1度きり。思い切って始めてみました。いろんなことが当たり前ではなく、毎日が新鮮。日々小さな発見があるのが楽しいです。

キッチン

出汁がおいしい地域なので、削り節は香川の〈丸一倉庫〉という専門店で、削りたてを贅沢に購入させてもらっています。いりこ出汁を取ったあと、うるめと宗田かつおを1:2で入れると良い出汁が出るよ!と教えてもらって、東京の家でも出汁ライフを楽しんでいます。

家を空けている間、植物たちのお世話はどうしていますか?

水を薄く張った浴槽に置いておいたり、自動給水器で水をセットして出かけるようにしています。我が家にいるのは比較的、生命力の強い植物。帰ってくると新芽を出していることもあって、むしろ過保護になり過ぎず、ちょうどいい距離感なのかもしれません(笑)。

旅先で見つけたものや人から譲り受けたものなど、偶然の出会いを楽しむ細沼さん。ネットで簡単にものが手に入る時代に、何と出会えるかわからないワクワクする気持ちを忘れない。ものと出会ったときの体験は、いつか大切な思い出になるはずです。

前編では、この物件を選んだ理由やコンパクト物件でのレイアウトのポイント、DIYアイディアや休みの日の過ごし方について詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

菊川さんを突き動かした、
リネンは“柔らかな道具”

LINEN & DECORを始めた経緯を教えてください。

もともとインドアグリーンを育てるのが好きで、今は家庭菜園にもチャレンジ。近所のシェア畑も借りるようになって、気づけば30種類ほどの野菜を育てています。朝ごはんは、おいしいパンにバターを塗って、その日食べたい野菜を庭で収穫して挟んで食べるだけ。素材がおいしいのでそれだけで十分ご馳走です。

リネンはどんな特徴のある素材ですか?

リネンは人類が開発した最初のテキスタイルだと言われています。乾きやすく丈夫で通気性が良い、“道具”というのがふさわしい機能的な素材で、かつ自然な光沢とゆらぎは触れているだけで心まで癒してくれます。また、LINEN & DECORで扱うリネンは、涼しい地域で育つため農地へ水を人工的に供給する必要がなく、農薬もほとんど使用しないため、サスティナブルな素材でもあります。

仕事がはかどる、
アトリエでの過ごし方

アトリエの空間づくりのテーマを教えてください。

部屋は居住用マンションの造りをそのまま生かして、暮らしにリネンをどう取り入れるかが想像できる雰囲気づくりを心がけています。頭をすっきりさせた状態でものづくりをしたいので、アトリエは適度な余白を作ることも意識。わずかな色味の差を悩みながら選ぶため、家具やアートも無彩色のものを選んでいます。

そもそもこの物件を選んだのは、ベランダとドライエリアが素敵だったから。近くの公園から鳥が種を運んできたのか、ベランダには小さなけやきの木がすくすく育ち始めました。風の通る、気持ちのいい空間にしたいなと思っています。

働き方のマイルールを教えてください。

1つ目は年齢や性別を超えて、いろいろな人と仕事をすること。いろんな感性を養って、ものづくりに反映できたらいいなと思っています。2つ目は疲れたら一息入れること。水やりをしたり、コーヒーを淹れたり、リネンに包まれながらお昼寝したり(笑)。気分転換をこまめに挟んだ方が、より効率的に仕事ができる気がします。

リネンがもたらしてくれる、
日々の小さな幸せ

菊川さんご自身の暮らしのなかでは、どのようにリネンを取り入れていますか?

タオル、ベッドリネン、クッション、カーテン、キッチンタオル、エプロン、テーブルマット、普段の衣服など、生活のあらゆるところで活躍しています。

暮らしにリネンを取り入れるなら、まずどのアイテムがいいでしょう?

キッチンタオル

日々の暮らしの中で最も出番が多いリネンかもしれません。最初は一種類からスタートしたLINEN & DECORのキッチンクロス。使いやすさを考えて、今では長方形・正方形・ラージサイズ・スモールサイズ・厚手タイプと種類が増えました。正方形はお弁当包みに、ラージサイズは大きいお皿や数が多い食器を拭くとき、またスモールサイズは一人分の食器やグラスを拭くときに、厚手のリネンはオーブン料理のトーションや、水切りかご代わりに使えたりもします。色やデザイン、サイズ、厚みで使い分けたり、使い始めはグラスや食器拭き→手拭き→台拭きなど状態に合わせて用途を変えていくなど、人それぞれオリジナルの使い方も楽しんでもらえたらと思います。

ベッドリネン

少し高価だからとつい敬遠しがちですが、毎日使えて、何年、何十年と愛用できるものだし、サラッとした使用感とふんわりやわらかな肌触りで、睡眠の質もグッと高めてくれます。私個人的には、これほどコスパが良いアイテムはないのでは?と思っているほど(笑)。まずは顔の周りで幸せ度の高い、ピローケースから取り入れてみるのをおすすめしたいです。

菊川さん自身、リネンと出会ってどのように暮らしが変化しましたか?

私のリネンストーリーは、パリのインテリアブランド〈カトリーヌ・メミ〉のリネンとの出会いを機に始まりました。『無地でシンプルなデザインのベッドリネンが、なぜこんなにも存在感があって素敵なんだろう』と感動したのを覚えています。しかしメミのリネンはかなりの贅沢品。まずはパジャマやピローケースから使い始めました。サラリとした感触と少し厚みのある生地感。最初はパリッとした風合いだったのが、洗うごとに柔らかくクタッと変化していきました。そして、控えめな光沢がエレガントな雰囲気を醸し出し、空間を大人っぽく、格好良く格上げしてくれたのです。部屋の掃除をするようになったのも、アイロンがけが嫌いでなくなったのもこの頃からでした。毎日、そんな小さな幸せがゆるやかに続くこと。その豊かさに気づけたのだと思います。

とろけるようなやわらかい肌触りや、味わいのある風合い。ウェルビーイングな暮らしを彩るリネンは生き方をも変える力があるのだと教えてくれた、菊川さんのインタビュー。今回訪ねたアトリエは事前予約制ですが、毎月4日間ほどオープンデーも設けています。LINEN & DECORのアイテムを手に取ってみたい方、リネンのある暮らしを体感してみたい方、ぜひ訪ねてみてくださいね。

前編では、菊川さんの“ウェルビーイングな暮らしのつくり方”についてお話ししています。ぜひ前後編合わせてお楽しみくださいませ。

菊川さんの暮らしを支える、朝と夜の毎日習慣

1日を気持ちよくスタートするための、朝の習慣を教えてください。

ベランダ菜園で収穫した、新鮮でおいしい野菜を食べる

もともとインドアグリーンを育てるのが好きで、今は家庭菜園にもチャレンジ。近所のシェア畑も借りるようになって、気づけば30種類ほどの野菜を育てています。朝ごはんは、おいしいパンにバターを塗って、その日食べたい野菜を庭で収穫して挟んで食べるだけ。素材がおいしいのでそれだけで十分ご馳走です。

焙煎したての新鮮な豆を挽いて、ハンドドリップコーヒーを淹れる

コーヒーは大好きで、教室に通っていたこともありました。豆は出かけた先で出会いにまかせて調達。コーヒーポットはいろいろと試した結果、ホーローポットに落ち着きました。手頃な価格帯ながら、ノズルの長さと注ぎ口が◎。濃く淹れたいときはゆっくり蒸らして、暑い日はサッと淹れてあっさり目の味わいに。焙煎日が若い豆は元気が良くて、お湯を注ぐとふわっと豆が膨らみます。それをボーッと眺めている時間が好きです。淹れていると白いアクのようなものが表面に浮いてくるので、それが落ちる前に引き上げると嫌な苦みが残らず、おいしく仕上がります。

帰ってきたとき、気持ちよくくつろげるように家を整える

テーブルの上など、ついものが散乱してしまう場所は一旦きれいに片付けてから出かけるように心がけています。床の掃除はロボット掃除機におまかせ。あと、朝起きたら簡単にベッドまわりを整えることも習慣のひとつ。リネンの薄手のスローをサッとかけるだけ(たった10秒!)ですが、ピシッと見栄えも心も整います。

片道30分の自転車通勤

毎日のルーティンの中に運動を取り入れようと、5年ほど前からクロスバイクで通勤しています。バスや電車に乗るよりも近くて、人混みのストレスもなく、気持ちよく1日をスタートできます。途中、本屋さんに寄り道できたりするのも楽しいんです。毎日のことなので、運動嫌いには習慣化されておすすめです。

1日の終わり、夜の習慣を教えてください。

良質な睡眠が摂れる空間づくり

仕事柄、自然光で生地の色やテクスチャーを確認したいので朝は早起き。その分夜は、21時、22時にはベッドに入ります。灯りは間接照明だけ。スマホはベッドルームに持ち込まないようにしています。カーテンはしっかり遮光できる厚手のリネンカーテン。寝具もシーツ、かけ布団カバー、枕カバー、すべてリネンで揃えています。柔らかなリネンに包まれて眠る時間は本当に気持ちがよく至福です。

ふと立ち止まってみると気づける、
日常の幸せな瞬間

日常のなかで幸せを感じるのはどんな瞬間ですか?

おいしいコーヒーを飲みながら、刻一刻と変化する光や、風に揺れる葉の様子を眺めているとき。アトリエのソファに座りながら外を見ていると、季節によって雲の形が変わったり、光の入り方が変わったり。それを眺めながら『もう冬が来るな〜』とのんびり季節を感じます。

あとは植物と触れ合っているとき。水やりをして、植物がいきいきしている姿を見ると自分の心も潤いますね。

没頭できる趣味はありますか?

収穫した野菜を洗って、調理すること。料理ってけっこう無心になれる時間だなと思います。あと、趣味ではないかもしれませんが、洗濯も好きです。ただボタンを押すだけなので洗っていることにはならないかもしれませんが(笑)、心が浄化されている気持ちになります。

ウェルビーイングな暮らしを実現するために、
大切なマインドとは?

ウェルビーイングを実現するために、どんなことを心がけていますか?

心に余白を持つ

予定や仕事など詰め込みすぎたときには、一度立ち止まって整理整頓することを心がけています。無理をしないことは心の健康、体の健康にも大切。自分のブランドを立ち上げた当初はいつも時間に追われていて、うまく気分転換できなかったのですが、今はやっと自分のペースを掴めるようになりました。

また、日々の生活の中で食事の時間は特に大切にしていて、素材の味を楽しむことも心の余白を保つことにつながっているように思います。家でごはんを食べるときは、畑で収穫した野菜を生でそのまま食べたり、焼いて塩だけで味付けしたり、シンプルな料理が多いです。

自然とのつながりを持つ

自然と触れ合うことで心が穏やかになるのは本能的ですよね。畑仕事をしたり、自転車に乗ったり、散歩をしたり、料理をしたり、日常生活で自然と触れ合う時間を作るのは大切で、煮詰まっていた心がふっとほぐれていきます。先日、都心から2時間ぐらい離れた奥多摩のわさびの田んぼに遊びに行って。夏なのにとても涼しく、きれいな水が湧く沢にわさびがたくさん生えていて、旅の最後には温かいごはんの上に擦りたてのわさびとかつおぶしを乗せた贅沢なわさび丼もいただきました。こういうリフレッシュできる時間を作るのも大切だなと思います。

自分に余白がないと気づけるサインはありますか?

家やアトリエが散らかっているとき。私は常にピシッとできるタイプではないので、わかりやすいです(笑)。片付けるとスッと気分も落ち着きます。

何気ない日々にふと立ち止まり、小さな幸せを噛み締める。自分のご機嫌を上手に取りながら、自然体に生きる姿が印象的だった菊川さん。後編では、菊川さんが営むLINEN & DECORの話や、リネンという素材の魅力について、詳しくお届けします。どうぞ、お楽しみに。

窓と無垢の床が気持ちいい。
低重心のリラックス空間

今の物件に決めた理由を教えてください。

窓と無垢の床が気に入って、ここに決めました。部屋探しでは直感も大事だなと思っていて、はじめて家に入ったとき、心地いいと感じるかどうかも重視しました。家を探すときはエリアを決めず、物件重視で探すことが多いですね。

コンパクトな空間での部屋づくりで、心がけたポイントを教えてください。

部屋の主役を決めること。この家は窓が主役で、窓を楽しむために周りには景色を遮るものを置かないように心がけました。最初は、窓の前にダイニングテーブルを置こうかとも悩んだのですが、せっかくの窓が隠れてしまってはもったいないと、ローテーブルのみを置くことに。主役がたくさんありすぎると窮屈な印象になってしまうので、ほどよい余白は大切だなと思います。

リビング

たしかに天井が高く、空間が広々感じられますね。

我が家には、背の高い家具が一切ないんです。ベッドもマットレスを直置きだし、ソファやダイニングセットもありません。特別天井の高い家ではないのですが、すべてのインテリアの重心を下げることで広々感じられるのだと思います。地面に近い分、すぐごろごろしちゃうのは、無垢の床だからできること。畳と同じような感覚で裸足で過ごすのが気持ちのいい空間です。

ベッドスペース

窓際のディスプレイはどんなことを心がけて飾っていますか?

高低差がないとのっぺりした印象になるので、空間にリズムが出るようにDIYで出た端材や本、額縁のガラスなど、家にある物でバランス良くなるように飾っています。

窓際のディスプレイスペース

家のものを循環させて、
“ありもの”DIY

収納に関して、工夫していることはありますか?

収納家具は買わず、持っている板などを組み合わせて家のサイズに合った収納スペースをDIYしました。あと、我が家ではりんご箱とワイン箱が大活躍。これならば引っ越しのたびに部屋のサイズに合わないからと手放さずに済むし、運搬箱としても使えて便利です。

この家ではどんなものをDIYしましたか?

ローテーブル

DIYと呼んでいいものか悩みましたが(笑)、ローテーブルは〈IKEA〉で購入したスツールに板を乗せたもの。天板は、以前住んでいた家のウォークインクローゼットで使っていた板を60cm四方にカットし、ひと回り小さな板に打ちつけて繋げています。天板とスツールは接着しているわけではないので、注意して使うようにしています(笑)。

ウォールラック

以前住んでいた家のデスクスペースで使っていた有孔ボードに、ホームセンターでカットしてもらった木の板と2×4材を組み合わせたウォールラック。鏡を見ながら身支度をしたり、お香をつけたり。裏側では仕事用の撮影をしたり、LDKとベッドスペースを分ける、ちょうどいい仕切り壁としても機能しています。

ものへの愛着が生まれる、
おうちメンテナンス

お家での休日やオフの時間は、どのように過ごしていますか?

冬でも晴れている日は暖房いらずなほど暖かいので、窓辺でのんびり本を読んだり、無垢の床が気持ちいいのでごろごろしたり。あとは掃除をして、家のメンテナンスをしたりしています。

家のメンテナンスは具体的にどんなことをしていますか?

植物の剪定や、植え替えをしたり。あとは、床を水拭きしたり、レモンオイルで磨くことも定期的にします。床を磨くと気持ちも空間もすっきりするんです。

最近、趣味はありますか?

最近は『金継ぎ』。おばあちゃんになっても続けられる趣味がほしくて、やってみることにしました。ちょっとかけてしまった器も金継ぎするとかっこよく生まれ変わります。今は現代金継ぎに加え、漆を使う本格的な金継ぎも勉強中です。

メンテナンスやDIYで“長く使う”を楽しむ、細沼さんのコンパクトライフ。後編では、細沼さんの好きなものや、ものに宿る思い出、今年の夏から始めた2拠点生活の話など、詳しくご紹介します。ぜひ後編もお楽しみに!

自作の新しいものと古いものが共存する、
北濱さん流インテリアのマイルール

アクセサリーをお店のディスプレイのようにして収納しているのも印象的ですね。

妻が趣味で作った指輪もインテリアに取り入れたいと思っていたので、ショーケースを作りました。天板はもともと古い家具の扉だったもので、ベニア板をくり抜き、同じサイズのガラスをはめています。

ご自宅には自作しているものが多いですね!

大学は美術大学に通っていて、工芸工業デザイン学科のインテリアデザインコースに在籍していました。その頃から図面を描くことは多かったのですが、実際にものを作るようになったのはインテリアショップのVMDを担当するようになってからです。仕事では、壁の塗装からテーブルや棚などの家具、アクセサリー用の小さなディプレイ小物まであらゆるものを自作。普段からピンタレストや海外のインテリアサイトから様々なアイディアを収集しています。

ご自宅には、新しいものも古いものも同じくらいありますが、見事に一体感を醸し出しているのが不思議です。インテリアのマイルールはありますか?

色使いは特に意識するようにしています。ベースになる色をある程度絞って、空間のなかで色が移っていくような感覚で、使う色をところどころリンクさせながらディスプレイすると上手くまとまるような気がします。あとは、見せたいもの以外は見せないこと。夫妻揃ってものが好きですが、好きなものをすべて表に出してしまうと上手くまとまらないので、もの同士のバランスを見て、そのときどきで入れ替えながらインテリアを楽しんでいます。我が家は収納スペースもたくさんあるので、昔手に入れて眠らせているものも結構あります。リビングに敷いているラグは7年ぐらい経ってようやく日の目を見ました(笑)。ものを選ぶときは組み合わせありきで選ぶのではなく、単体でもしっかり好きだと思えるものを選ぶこと。気に入ったものしか置かない空間であれば、ものが簡単に増えることもないし、空間をきれいに保ちたいと掃除もやる気になれますよ。

古いものと自然物の心地いい関係

ご自宅には古い家具が多いですが、古い家具でもどのようなものが好きですか?

マホガニー材を使っているような、いわゆるTHEアンティークの赤茶色のものよりは、経年変化して自然物に近づいた柔らかい色味だったり、単調ではない風合いのものが好きです。例えば、リビングでディスプレイに使っているイギリス製の古い棚は、もともと植物を置くために使われていた棚で、土がそのままペンキで塗り固められていたり、棚板の切りっぱなし感であったり、おそらくとてもラフに使われていたと思うのですが、そんな自然体な佇まいが気に入っています。

飾っているオブジェやアンティークの家具、自作のものに共通点はありますか?

作為的ではない、自然な風合いのものは美しくて好きです。自分がなにかを作るときも自然に委ねることを意識しています。石膏を使ったものづくりをすることも多いのですが、マーブル模様などは思いもよらない表情が生まれるので好きですね。

なにかコレクションしているものはありますか?

鉱石は大好きです。年に2回ほど開催している石の展示会「ミネラルショー」へ行って購入しました。一般の方でも入れる展示で、世界中から石のディーラーさんが集まります。見たことのないような美しい石がたくさん手に入りますよ。

時代に埋もれた古いものが甦る、
寝室は「好奇心の戸棚」

寝室作りのテーマはありますか?

好奇心を掻き立てる生物学的なオブジェを取り入れながら、“キャビネ・ド・キュリオジテ”をイメージしました。キャビネ・ド・キュリオジテとは、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの王侯貴族や学者、文人の間で流行したという様々な珍品を集めた博物陳列室のことで、“好奇心の戸棚”という意味です。ただ、キャビネ・ド・キュリオジテのインテリアは重厚なものが多いので、生活空間としては重くなりすぎないように、色は白を基調に軽やかに見せられたらと思いました。

カーテンも部屋の雰囲気によく馴染んでいますね。

寝室のカーテンは、布にプリントしてくれる業者さんに注文したオリジナルのもの。版権が切れている古い本の写真を自分たちでコラージュしてプリントしてもらいました。

寝室に置いている家具について教えてください。

本棚とベッド以外はすべて古いもので、60〜70年代ぐらいのヴィンテージのものが数多くあります。なかでも当時の人々にはその良さがあまり理解されずに、“時代に埋もれたもの”に魅かれます。今見ても素敵で新しく、本当に古いものなの? と感じられるようなものは、おそらくそのものが生まれた当時には流行らなかったはず。そんなものを見つけると発掘したという喜びがあります。例えば、ゴールドのバーカートや隣に置いている椅子は、今見ても新しく感じられる古いものだと思います。

古いものと新しいもののちょうどいい具合を探りながら、たくさんの好きなものを自分たちらしくまとめあげていく。その過程がなによりも楽しいと話してくれた北濱さん。趣味であるインテリアを通じてコミュニケーションを深めていく、ニュートラルな北濱さん夫妻の住まいには、夫妻で自然体に心地よく住まうためのたくさんのアイディアが詰まっていました。

ミックステイストだから色は統一感を持たせて。
お気に入りの家具でメリハリをつけたリビングダイニング

リビングダイニングの空間作りで心がけたことはありますか?

リビングダイニングは『コンテンポラリー』、『ポストモダン』、『ミッドセンチュリー』など、複数のテイストをミックスした折衷空間にしたかったので、家具も小物も木材を少なめに、金属、ガラス、石膏、陶器などさまざまな素材を組み合わせました。うるさくなりすぎないように、家具はベーシックな色味で統一し、小物やファブリックでカラフルな色をプラス。以前の住まいでは、フレンチアンティークの家具や、ダークトーンの色を好んでいましたが、ここは壁がコンクリート。今まで使っていた家具との相性があまりよくなかったため、モダンなデザインの家具を買い足しました。ダイニングテーブルはエーロ・サーリネンが手がけたチューリップテーブルのリプロダクトで、チェアは〈Bazar et Garde-Manger〉で購入したヴィンテージのポロックチェア。引っ越しをきっかけに、今までとは異なるインテリアを楽しめるようになったのはよかったです。

お気に入りの家具はありますか?

すべて気に入っているのですが、一番はTV台にしている石膏のテーブルです。遺跡のようにも見える、不思議なデザインに一目惚れ。我が家ではストーンヘンジと呼んでいます(笑)。インパクトのある家具が部屋にあることで、インテリアに締まりが出ました。テーブルの内部は空洞になっているので、ひとりでも簡単に持ち上げることができます。本来はガラス天板なのですが、手前のローテーブルと素材がかぶってしまうので、今はホームセンターで購入した木材にステインを塗装して天板にしています。いつか本来の姿で、〈カッシーナ〉のユトレヒトとコーディネートして使うのが夢です。リビングに置いている家具は基本的に大きめなので、リビングテーブルは〈Francfranc〉の小さめのオーロラテーブルをセレクトしました。

好きなインテリアショップを教えてください。

大阪にある〈WANT ANTIQUE LIFE STORE〉ではよく買い物をします。リビングにあるテレビ台や花瓶を収納している棚、大きな絵もここで購入しました。状態のよいものが多く、値段もお手頃。時代感を抑えたモダンなものを多くセレクトされているので、我が家の雰囲気とも相性がいいです。遠方なのでオンラインショップで商品を注文して配送してもらっています。

コンパクトな物件で暮らす上でのスペースづくりの工夫を教えてください。

働く、くつろぐ、食べるなど、目的別に空間を分けています。ラグを敷いたり、照明を使ったり、カーテンで空間を仕切ったりしながらゾーニングすることで、空間、生活にメリハリをつけることを意識しています。

お気に入りの花瓶や食器は、
見せる収納で可愛く使いやすく

収納に関して、工夫していることがあれば教えてください。

食器や花瓶は使っていないときでもオブジェのようにして楽しめるように陳列しています。数が多いので色別・素材別に分けて、スッキリ見た目よく並べることを意識。そうすることで花や料理とのコーディネートも考えやすくなりました。

花瓶は100個近く持っているそうですね! どのような基準で選んでいますか?

とにかく個性的なものを選びます。スーパーで買ってきたお花でも特別感を感じられるような、オブジェのようなものを選びたいと思っています。

花瓶はどこで購入することが多いですか?

特に個性が強いものは、インテリアショップや古着屋さんで買うことが多いです。オンラインショップの〈vassell〉や福岡の〈Blumo〉はよくチェックします。また、〈メルカリ〉や海外のフリマアプリ〈Etsy〉などを利用することもあります。あとは、骨董市で掘り出し物を見つけたり。ありとあらゆる手段で地道に探しています。花瓶はよっぽど大きなブランドではない限り、大量生産されるものではないので、ひとつひとつ出会いを大切にしています。

食器はどのようなものを集めていますか?

食器はほぼ〈H.P.DECO〉で購入しています。なかでも、数年かけて少しずつ集めている〈Astier de Villatte〉の器は多いですね。食器棚はディスプレイ用のラックとして販売されていた〈IKEA〉のものです。

コンクリートの壁には、モダンなオブジェを。
おしゃれなお家を見て養うインテリア力

オブジェも花瓶同様、個性的なものが多いですね。

そうですね。コンクリートの壁と調和するように、オブジェや小さな照明はシンプルでモダンなものをセレクトしています。テレビ台のオブジェスペースは、テレビに合わせて硬質的な素材でまとめました。お気に入りは、鼻筋の通った顔が美しい、ミシェル・レイモンドの女性像。オブジェは人体モチーフのものが好きで集めがちです。

インテリアのインスピレーションはどのようにして養っていますか?

ピンタレストやインスタグラムで、おしゃれな人のお家をたくさん見て、タグ付けされているショップなどを見ながらリサーチしています。参考にしているのは、オランダやデンマークのお家が多いです。インテリアだけではなくファッションブランドのコレクションやプロップスタイリングの写真もピンして、配色のヒントを得たりしながら目を肥えさせています。

スーパーに並んでいたたった300円のブーケから、色のあるインテリアやファッションに目覚め、暮らしが一気に活気づいたというSmithさん。Smithさんのカラフルなご自宅はただ眺めているだけで、自然と元気がもらえる空間でした。日常に当たり前に存在している“色”は私たちの暮らしのなかで、知らず知らずのうちに影響を与えてくれるもの。皆さんもまずは部屋の一部から好きな色を取り入れて、お家時間を楽しく彩ってみてはいかがでしょうか?

飾り棚で愛でる、とっておきのインテリア小物たち

ワンルームという空間のなかで、ベッドルームとリビングダイニングはどのように仕切っていますか?

リビングダイニングとベッドルームとの境に飾り棚を取り付けて、ゆるやかに仕切っています。棚は〈東急ハンズ〉でカットしてもらった板と〈モノタロウ〉でネット注文した工事現場用のパーツで自作しました。もともとお気に入りのレコードプレーヤーを置くために作ったもので、玄関の近くに置いていたのですが、リビングにソファを置いてからベッドルームとの空間を仕切りたいと思い、今の位置に落ち着きました。突っ張り棒のように高さを調整できるので、移動も楽々。ショップの什器などを参考にしながら作ってみました。

飾り棚に置いているお気に入りのものを教えてください。

ドイツのインダストリアルデザイナーであるディーター・ラムスが手がけた、〈ブラウン〉のヴィンテージレコードプレーヤーは唯一実家から持ってきたお気に入りです。三鷹にある北欧ヴィンテージショップ〈BRICKS STORE〉のオーナーさんにお願いして買い付けてもらったもので、社会人になってようやく購入できた思い出の品。1963年のモデルなのですが、機能がしっかりとデザインに落とし込まれていて美しいなと思います。あと、デンマークのブランド〈&tradition〉のグレーのランプもお気に入りです。ヴァーナー・パントンというデザイナーの作品で、我が家の雰囲気にしっくり馴染みます。

どんなインテリアショップが好きですか?

たくさん好きなお店はありますが、店主さんの個性が際立っているお店はやっぱり好きです。このお店にしかない、というユニークなセレクトに魅かれます。

部屋作りの参考にもなる、空間が素敵なインテリアショップはありますか?

青葉台にある、〈LICHT〉というショップ兼ギャラリーはとてもかっこいいです。北欧家具を中心に扱う中目黒の〈HIKE〉のオーナー須摩光央さんが営むお店で、内装は空間デザイナーの二俣公一さんが担当されています。空間も置いている家具も非常に素晴らしく、僕の憧れが詰まっています。

差し込む朝日で目覚める、気持ちのいいベッドルーム

自宅の中で、特に気に入っている場所を教えてください。

ベッドルームです。カーテンはあえて厚地のものをつけていないので、朝は窓から差し込む清々しい陽射しで気持ちよく起きることができます。また、ベッドルームの天井にはスピーカーを設置。寝転がったときに音が一番きれいに聴こえるので、リラックスタイムはベッドの上にいることも多いですね。

ベッドルームのリノベーションポイントを教えてください。

ベッドで横になったときに、周りの壁がコンクリートブロックだとなんだか落ち着かないので、ベッドルームだけ新しい壁を作りました。古いマンションで冬は冷気を感じやすいので、出窓を作り、寒さ対策もしています。また、小上がりの寝室は、当初やすりをかけてオイルをしみこませたシナ材を敷き詰めた天然木の床にしていましたが、新調したソファとラグを置くにあたって、床の色数が増えて圧迫感が出るなと思い、リビングと同じグレーのペンキで塗装しました。

出窓に置いているランプも可愛いですね!

〈MENU〉というブランドのもので、北欧インテリアを主に扱うオンラインストア〈ロイヤルデザイン〉で購入しました。ぼんやりとした明かりはベッドルームとの相性がよく落ち着きます。電圧が海外仕様だったので、変圧器を購入して使っています。

洋服はセルフDIYで収納力をばっちり確保!

洋服の収納はどのように工夫していますか?

洋服は押し入れに収納しているのですが、なかなかビシッとサイズの合う収納用品が見つからなかったので自作しました。上の段には自分で切断したハンガーポールを取り付けています。通常ハンガーポールは、押し入れの横幅に合わせて取り付けられていることが一般的ですが、縦3列に取り付けると収納力が上がることに気がつきました。下の段には自作の収納棚を設置。キャスターをつけた可動式で棚の後ろにも収納スペースを確保しています。もともと押し入れには襖がなかったので、ブラインドを取り付けて扉代わりに使っています。

家にはDIYしているものが多いですね! ものを作ることは好きですか?

好きですね。小さな頃から工作が好きで、その延長線上に家作りもある感覚です。家具は大好きなのでもちろん買いたい気持ちはあるのですが、懐事情だったり、コンパクトな物件だとサイズぴったりの収納家具を置かなければデッドスペースが生まれてしまうこともあって、自分で作ることは多いですね。棚や収納家具はDIYで費用を抑えて、密に身体が接する椅子などの家具にはお金をかけられるようにメリハリを意識しています。

ノンカラーが落ち着く、
ニュートラルでゆとりのある部屋作り

住まい作りのテーマを教えてください。

ずばり、「non color」です。我が家のインテリアは、落ち着ける白やベージュを中心に、経年変化した古い家具や自然物が生み出す、単一ではない、何色ともつかないノンカラーな色彩がベースです。妻と住み始めてからは、彼女の好きなゴールドもアクセントに取り入れるようになりました。また、国やブランド、年代に捉われないという意味でも「non color」でありたいと思っています。家具はヨーロッパの古いものが多いですが、リビングの奥には竹のようなヤシ科の観葉植物をセレクト。東洋的なイメージも取り入れて、シノワズリな要素もプラスしました。○○テイストと括られることのない、僕たちが心地いいと思える空間を作っていければと思っています。

特にお気に入りの家具を教えてください。

粗削りでラフな造りが気に入っている、フランスの古いダイニングテーブルです。海外のアンティークものだと、奥行きが90~100cmぐらいあるものが一般的ですが、このテーブルは奥行きが68cmととても珍しいサイズ感なのです。人が対面して座っても近すぎず、横幅があるので4人でも座れます。仕事でご一緒している家具のディーラーさんから運良く購入させてもらいました。造りを見る限り、ブランド家具ではなくお店の什器などとして作られたもので、だからこそ生まれた珍しいサイズ感なのだと思います。また、別で購入したダイニングチェアは、前足だけに装飾が付いていて、華美でないデザインがお気に入りです。地元札幌のアンティークショップ〈unplugged〉で購入したもので、このお店では家具表面の塗装を剥がして、無垢な状態に戻した家具を多く販売しています。

家具選びにルールはありますか?

我が家は広くないので、狭いなと感じてストレスがかからないように、特に家具のサイズ感にはこだわっています。なるべく奥行きのない家具を選ぶことで、動線をしっかり確保。また、夫婦揃ってインテリアが好きなので、お互いのこだわりをすり合わせることも大切にしています。必要な家具があれば、僕が3つぐらい候補を挙げて、妻も意見が合致するものを購入。小物を飾るときも、お互いが納得したものを厳選するようにしています。

古い家具を選ぶときに心がけていることはありますか?

できるだけラインの細いものを選んで、空間に圧迫感が出ないように心がけています。ダイニングチェアも背もたれの面が抜けているものを選ぶことで軽やかさを意識しました。

家具はどこで購入することが多いですか?

基本的には海外のサイトから個人輸入で購入することが多いです。その方が安く手に入るし、選択肢が増えます。探すのは大変ですが、それが楽しいと思える性分。僕は英語が堪能ではないので、翻訳サイトを駆使しながらやりとりしています。

「飾る」をめいっぱい楽しむための、
大胆なリビングアイディア

11畳ほどのコンパクトなリビングダイニングの中央に、あえて博物館や美術館で見かけるような「スタチュースタンド」を置くというのは思い切った発想ですね!

部屋全体で見たときに、ダイニングチェアの明るい木の色だけが浮いてしまうと思って、同じ質感の家具を探していたら、妻がこのスタチュースタンドに一目惚れ。ダイニングチェアと同じく〈unplugged〉で購入しました。これを置くことでソファは置けなくなってしまったのですが(笑)、部屋の家具に高低差が出て、空間全体のバランスが上手い具合に取れました。結果的に置いてよかったなと思っています。

スタチュースタンドの周りに飾っている壁がけの作品群も素敵ですね。

中央に飾っているのは、石膏を使って自作したアート作品。仕事で繋がりのあるガラス作家さんに石膏の扱い方を教えてもらって以来、ディスプレイ用什器などの制作でもよく石膏を使用しています。左のものは、近所の神社で定期的に開催する小さな骨董市で購入した和紙。右は、イスラエルのマーブリングペーパーを額装したもので、どちらも500~1,000円くらいの安価なものでしたが、とても気に入っています。

リビングは「飾る」が主役の空間ですね! ディスプレイでとっておきのアイディアはありますか?

チェコの古いグラスを6つ買ったのですが、使っていたら2つ割ってしまって……。どうにか割らずに愛でる方法はないかと考えた結果、グラスをガラスドームに見立てて、妻がコレクションしていた古い写真を飾ってみました。これは、田舎の暮らしを撮り下ろした海外の写真集を眺めていたときに偶然得たアイディアでした。ディスプレイは正解があるものではないので、自分が「好きだな」、「心地いいな」と思う感覚を大切にしながら自分なりに試行錯誤しています。アイディアは、ピンタレストを見たり、アート系の洋書などからヒントを得ることも多いです。

家事がもっと楽しくなる!
見た目のいいキッチンと使えなかった器の話

キッチンの家具や収納グッズはどのようなものを使っていますか?

ステンレスのスパイスを収納している小さなラックと冷蔵庫横の大きなラックは〈dinos〉、白い大きな棚は〈IKEA〉で購入したもの。キッチンのインテリアはリビングダイニングの家具に投資する分、少々控えめですが、妥協はせずにシンプルなデザインでキッチンらしいインダストリアルな雰囲気のものを厳選するようにしています。また、スパイスなどの調味料は瓶などに移し替えて使用。小さなことですが、キッチンの見た目が良いと料理も楽しくなるし、掃除も俄然やる気になれます。あと、僕はお酒を飲むのが大好きなのですが、ビンやカンのゴミが見えないように〈ALUTEC〉のアルミコンテナに入れて目隠ししているのもポイントです。

キッチンで気に入っているインテリアはありますか?

我が家のキッチンに合わせて妻が描いてくれた油絵です。17世紀の静物画をもとにアレンジして描いたもの。キッチンもリビングやダイニングと同じように部屋の一部として楽しめればと思っています。

食器もたくさんありますね!

器も夫婦揃って大好きで、日々集めています。以前は、いい食器を集めてもなかなか使う勇気が出なかったのですが、割りたくないからといって使わないでいると扱い方がわからず、結局割ってしまうことに気がついて……。今では、お気に入りの食器こそたくさん使うようになりました。やっぱり同じ料理でもいい器で食べた方がおいしいなと感じます。

器はどこで購入しますか?

洋食器は出張でパリに行ったときに、蚤の市で買ったものも多いです。和食器は、西荻窪の〈魯山〉という器屋さんが大好きだったのですが、つい先日閉店してしまいました。あとは、〈PASS THE BATON〉や〈CIBONE〉も好きで買いに行くことが多いですね。

玄関を家の中心に。
暮らしに彩りを添える、花のある暮らし

家作りのマイルールを教えてください。

色のある暮らしをすることです。北欧に住む人々は、冬の日照時間が短いので、家の中をとびきりカラフルにするのだと聞いたことがありました。日当たりの悪い我が家もたくさんの色を取り入れることで、気分の上がる空間作りを心がけています。

花のある暮らしを始めたきっかけを教えてください。

自粛期間中、スーパーへ買い出しに訪れた際、片隅にあった1束300円の小さなブーケが目に留まり、なんとなく買ってみたのがきっかけでした。部屋に飾ってみたところ空間に潤いが生まれ、癒されることを実感。それから毎週花を買うようになって、今では玄関、ベッドルーム、リビング、洗面所など、家のあらゆる場所に飾っています。

家の中で特に気に入っている場所はどこですか?

花をたっぷり生けている玄関です。この家に引っ越してきたとき、120cm幅の玄関をどう活かすか悩みました。玄関は毎日気持ちを切り替える、必ず目に留まる場所なので、大好きな花瓶とお花で毎週デコレーションを変えています。

たくさんの色の花や花瓶を並べるとき、上手にディスプレイをするコツはありますか?

感覚的なことなので言葉にすると難しいのですが、花同士、花瓶同士の色はグラデーションで並べたり、反対色や補色の関係になるようになんとなく意識しています。

お気に入りの花瓶を教えてください。

セラミックアーティストのMilan Pekar氏の花瓶は特にお気に入りです。釉薬が結晶化する方法で作られている作品で、その模様が本当に美しいです。どこかオリエンタルな雰囲気も気に入っています。

花を暮らしに取り入れたことで、ライフスタイルに変化はありましたか?

花のお手入れついでに、こまめに掃除をするようになりました。整った部屋にいると心も落ち着くのだと実感しています。また、今までは黒い服を着ることが多かったのですが、毎日色鮮やかな花を眺めている影響で、ピンクやブルーの服も着るようになりました。「この花みたいな色の服はないかな」と探したりしています。

今すぐ実践したくなる、
花の生け方や、長持ちするお手入れの話

Smithさん流の花の生け方を教えてください。

お気に入りの花瓶をたくさん使いながら、一輪や二輪で生けることが多いです。ヨーロッパだと1つの花瓶にブーケをドサッと飾るのが一般的ですが、少ない本数で生けるのは生け花のようで、日本的な感覚だなとも思います。花と花瓶の組み合わせは同系色や反対色、長さや形を意識しながら感覚的に生けています。

よく行く花屋さんはありますか?

松陰神社前にある〈duft〉のファンです。店に置いている花はどれを合わせても素敵で、ただ買ってきた状態の花束をバサッと花瓶に生けただけでも様になります。お店のディスプレイやInstagram、店主・若井ちえみさんが手がけるメディアのお仕事なども、家で花を生けるときの参考にしています。東京の花屋さんはブティックのような洗練された空間が多く、ピリッとした緊張感が心地いいです。花を選んで店を出る瞬間は、背筋がピンと伸びますね。

生ける花は玄関、リビング、寝室、洗面所など、空間によってどのように分けていますか?

それぞれの空間でインテリアに合う花瓶を置いて、花は気分で選んでいます。洗面所は我が家で一番自然光が入る場所なので、光が差し込むと綺麗に反射するガラスの花瓶をいつも置いています。

花のお手入れで心がけていることはありますか?

買ってきた花は長持ちするように水切りをして、花の栄養を補ってくれる鮮度保持剤を入れた水に生けています。また、花瓶や花ばさみを清潔に保つことや、2日に1度は水を変えてあげることも大切です。水を変えるタイミングで周りのインテリアも少し入れ替えることで、いつも新鮮な気分で家時間を楽しむことができます。少し弱ってきた花は「湯揚げ」をすることでさらに元気になりますよ! しっかりお手入れすることで、我が家では1ヵ月ぐらい持ってくれる花もあります。

ものが多くても、視界は良好。
プチ模様替えで飽きない寝室作り

ベッドルームの空間作りでこだわっていることはありますか?

シーズンごとに塗り替えている壁の色を軸にしながら、インテリアコーディネートを楽しんでいます。今は春らしい、グリーンの壁が主役。壁全体を塗ってしまうとエアコンの白が目立ってしまうので、ツートーンにしています。境目には黒のマスキングテープを使用。テープならばミスをしてもやり直せるのでおすすめです! また、週に一度は必ずベッドリネンを取り替えて、その度に周りの照明や花瓶も少しだけ変化をつけています。寝室の大きな面積を占めるベッドリネンは、変えるだけで模様替えをした気分になれます。最近は北欧のブランド〈TEKLA〉のベッドリネンがお気に入りです。

たくさんのものに囲まれていながら、すっきりとした印象がありますね! ディスプレイはどのように工夫していますか?

フォーカルポイント(※パッと目を引く場所、視線が集中する場所)を作ることは意識しています。我が家にはオブジェや花瓶などの小さな小物が多い分、インパクトのある家具や絵に視線を集めることで空間にメリハリをつけています。例えば寝室では、〈H.P.DECO〉で購入した丸い6つの鏡がフォーカルポイントに。あと、花を飾るときと同様、無秩序に色を多用するのではなく、空間ごとにある程度のカラースキームを守ることも心がけています。私は好きなものは常に視界に入れていたいタイプ。いつか手放すときが来るかもしれませんが、一つ一つに思い入れがあるので、見せたいものはとことん見せて、そうでないものはとことん収納しようと心がけています。例えば、寝室の本棚には漫画がたくさんあるのですが、すべて背表紙を奥にして収納することでインテリアを妨げないように工夫しています。

Smithさん宅には、鏡がたくさんありますね!

昔、Barnaba Fornasetti氏の素敵な自宅の写真を見て以来、我が家には鏡が増えました。空間に奥行きが出るのと、鏡はウォールデコレーションとしても可愛いものが多いので、ついつい集めてしまいます。

セルフリノベーションで叶えた、
置く家具を選ばない、フラットな住まい

この物件を選んだ理由を教えてください。

木目のシートやビニールクロスなど、床や壁、建具にフェイクの素材があしらわれていない、無機質でシンプルな内装が気に入りました。これから先、気分が変わって木の家具を置きたくなったとしても、フローリングの色を気にする必要がなく、置く家具を選ばないシンプルな内装であることは重要でした。また、窓が多く、夕暮れまでたっぷり自然光が入ることも決め手のひとつ。一日の中で光の移ろいを感じたり、光の色で季節を感じられるようになりました。

内装はどのような箇所をセルフリノベーションしましたか?

もともとここは建築事務所だった物件で、リノベーションは床に敷かれたタイルカーペットをすべて剥がし、グレーのペンキを塗るところから始めました。その他には、寝室に小上がりの床を作ったり、出窓を自作したりしました。リノベーション費用は、手伝ってくれた友人たちへのお礼も含めて、総額50万円ぐらい。大学では建築を学んでいたので、最低限の知識はあったのですが、リノベーションの腕は素人同然だったので、知り合いの建築事務所の方に話を聞いたり、YouTubeを見ながらどうにか形にできました。

部屋を作る上でテーマにしたことはありますか?

ギャラリーのような空間を目指しました。家具は長く使いたいと思いつつ、インテリアスタイリストという職業柄、いろんな家具を使ってみたいという思いも見越して、置く家具を選ばないフラットな空間にしたいと思いました。ベースとなる内装は無機質にして、家具や置物などをアクセントにしています。また、空間がストイックな分、グリーンも入れながら柔らかさをプラス。同系色でまとめている分、いろんな質感の素材を使うように心がけています。

リビングの収納スペースはどのように確保しているのでしょうか?

リビングの収納棚やキッチンが隠れる位置に、白いコットンを二重にした全長6.2mのレースカーテンを設置しています。カーテンをサッと引くだけで生活感をシャットアウトできるように工夫しました。

もの選びはとにかく悩んで、自分の“好き”を探求!

リビングルームの家具について教えてください。

グレーのアームチェアは白金にある〈BUILDING〉でリペイントして、座面も張り替えて販売されていた〈THONET〉のもの。クラシカルで美しい曲線美がたまらない名作です。ソファは中古で譲り受けた〈arflex〉の〈MARENCO〉。ユニット式で2人掛けから3人掛け、4人掛けへと自在に変形できるので、暮らしの変化に応じた使い方が可能です。また、ローテーブルは店舗什器用に販売されていた資材をネット注文して自作しました。テーブルの足組みとなるポールは長さをオーダーし、それに合わせてガラスの天板とジョイントパーツを購入。ガラスを使うことで、部屋が狭くても圧迫感が出ないように配慮しています。

自宅のインテリアはどのようなものを選んでいますか?

すべて純粋に自分が好きなもので、モダンかつコンテンポラリーなものを選ぶ傾向にあります。仕事柄、常時ものに囲まれているので、自宅では仕事を想起させない特徴のないものやあまりお店に置いていない珍しいものに魅かれます。アイテム単体の個性が主張しすぎず、我が家に合うかどうかを意識しながら馴染むものを選んでいます。

もの選びで大切にしていることはありますか?

中途半端なものは買わないこと。よく考えてから買うようにしています。僕はとても悩むタイプで、今もティーポットが欲しいのですが、まだ理想のものに出会えておらず、もう3年以上探しています(笑)。日用品ひとつにしても、デザインが気に入るか、使い心地は良いか、飽きがこないかを常に吟味。中古であっても良いものを買うことで、生活の質はぐんと上がるもの。気に入ったものなら、海外の通販サイトからも注文して手に入れます。

コンパクト物件ならではの、省スペースアイディア

コンパクトな物件で暮らす上での工夫を教えてください。

部屋に圧迫感が出ないように、収納スペースは扉をつけたりして雑多なものが目に入らぬよう、できるだけ目隠ししています。あとは、置く家具の高さを低めにしたり、色のトーンをまとめたり。また、バッグやコートを吊るすなど、床だけではなく、上の空間も利用しながらものを収めるのもポイントです。

玄関前のコート掛けはどのように作ったものですか?

ガス管用のパイプを天井からワイヤーで吊っただけの簡易なものです。ショップで見かけるインテリアを参考に作りました。シンプルな造りで場所を取ることもなく気に入っています。下の革靴を収納している真っ白な箱は〈楽天市場〉で注文したもので、靴箱も統一しています。

隠し扉をつけている洗濯機置き場もすばらしいアイディアですね!

部屋の隅にあった微妙な凹みに合わせて、木の角材と合板で扉を作りました。サイズぴったりの棚を探して、洗濯機のほか、掃除道具なども収納。扉には全身鏡もつけています。

家族のつながりを意識した、
キッチン横の書斎スペース

リビングダイニングは11畳とコンパクトな物件ですが、それに伴い工夫したことはありますか?

書斎スペースを拡張されたリビング空間=セカンドリビングとして設定しています。リビングと書斎で同じアクセントクロス(壁紙)を採用しているのは、ひと続きの空間として感じさせる工夫のひとつです。

確かにゆるやかなつながりを感じられますね! この書斎&セカンドリビングではどのような暮らしを想像しながらレイアウトを考えましたか?

このモデルルームは3人家族で住むことを想定した物件。キッチンというワークスペースの真横に、書斎のワークスペースをつなげることで、料理や仕事をしているときでも遊んでいる子どもの気配が感じられる、そんな家族のつながりを意識した空間に仕上げました。書棚は暮らしの変化に応じてアレンジ可能な、〈VITSOE〉のシェルフを選んでいます。書棚は自分が好きな本やオブジェを飾る、住み手の個性が特に現れるところ。玄関を入って廊下を通り、居室に入ったときに、まず最初に視界に入る場所に設えました。書棚をしっかりと使いこなすことで、住み手のオリジナリティが住まい全体ににじみ出てくるのではないかと思います。

自分らしいインテリアとは、どうすれば作れるものですか?

家具は道具であり、インテリアは背景です。大切なのはそこで自分がどんな時間を過ごしたいのかということ。そしてその時間を実現するための家具や雑貨類をイメージし、シーンを具体的に組み立てていく。その積み重ねの先に自分だけの豊かな生活のイメージが立ち上がっていくはずです。例えば洋服は、何回も何回も買い物をするなかで自分に似合うものや、好きなものがわかっていきますが、インテリアは買って試して、というトライアンドエラーを重ねることが簡単ではありません。限られた回数のなかで自分の欲しいインテリアを実現するのはとても難しいことだと思います。だからコンパクトな物件であっても、いきなり生活のすべてを満たそうとして家具を中途半端に買い揃えるのではなく、ひとつでいいから自分が心から満足できるものを選び、使うという体験が大切。ライフステージに合わせて将来的に広い家へ移っていくことも見越したとき、その体験をベースにしながら、より広い空間でも自分らしいインテリアを作り上げていくことができるのではないでしょうか。

部屋の“コーナー”にこだわることから、
居心地のいい自分らしい住まいを考える

ベッドルームはどのようなこだわりがありますか?

ベッドルームは眠る場所。リラックスさせて質の高い睡眠へ導くことができるように、あえて上からの照明はつけずに低い位置に灯りを置いています。赤で揃えた照明は、〈Kartell〉と〈FLOS〉のものをチョイス。ベッドルーム全体としては、モノトーンを基本にして色数を絞るかわりに、ゼブラ(ウッド)の壁紙やラグなど、柄の組み合わせで立体感を出しました。仕上げのクッションは、寝室ということで〈FORNASETTI〉の「お静かに」ポーズのもので遊んでいます。ベッドリネンは〈ZARA HOME〉。価格とデザインのバランスが良いので取り入れやすいと思います。

ベッドルームで特にポイントとなっている場所はどこですか?

部屋奥のコーナー部分です。コーナーをしっかりと設えると、部屋全体が活き活きとして見えてきます。また、コンパクトな部屋の場合、部屋の入り口から見た対角線上の一番遠いスペースに、照明やグリーン、アートなどポイントになるものを置くことで、空間を広く感じさせることができます。部屋作りは、空間全体と細部にバランスよく気を配ることがポイント。主要な家具を置いて終わりではなく、細部にも自分なりのこだわりを埋め込むことで、部屋の居心地は格段に良くなるものです。例えばコーナーの壁に飾っている写真は、私が旅先で撮った写真を白黒で印刷して、色鉛筆で少し色をつけたもの。これだけで自分だけのアートを楽しむことができますよ!

社会環境の変化に伴い、これからの住空間はどのように変化すると思いますか?

ここ1年ほどの間に、私たちは住む場所と働く場所が一気に曖昧になることを半強制的に経験しました。これまで無意識的に繰り返していた生活のルーティンが一旦崩されたことで、自分自身の生活について、自分らしい住空間のあり方について、あらためて深く考える機会を与えられたともいえます。そんな環境下で、これからはみんながそれぞれのオリジナリティに富んだインテリアに目を向けるのではないかと思います。それはある意味、インテリアへの向き合い方が成熟するということ。住まいのインテリアは、「~スタイル」や「~テイスト」とパターン化されがちですが、本来は自分が居心地良く過ごせるようにアレンジしていくことがインテリアの醍醐味だと思うのです。インテリア製品の選択肢についていえば、欧米では市場が大きくていろんなものを選べる環境がありますが、日本国内だけで選ぼうとすると、どうしても似通ったものになりがち。インテリアにかけられる予算がまだまだ小さいから、市場も小規模なんです。たくさんの人がオリジナルなものを探し始めれば規模が広がるし、これからもっとおもしろいインテリアが日本でも生まれるようになると思います。

オリジナルで造作した唯一無二のオブジェやアートをはじめ、ディテールまで思いを込めて作られたこのモデルルーム。コンパクトな空間でも自分らしく暮らしを楽しむためのヒントがそこかしこにちりばめられていて、すぐに実践できる実用性の高いアイディアも豊富に盛り込まれています。テイストの統一感を重視して生活感を排除した一般的なモデルルームとは異なり、さまざまなテイストが混ざり合い、すでに人が住んでいるかのような時間の積み重ねも感じることができるはずです。せわしない日々の何気ない時間に、ふと立ち止まって楽しさや心地良さを作り出す、そんな豊かな暮らしを当たり前に楽しむことができる魅力的な物件でした。

※本ページ掲載の物件の詳細は「Brillia目黒青葉台公式サイト(外部リンク)」へ

コンパクトなリビングダイニングを
社交の場として楽しむためのアイディア

どんな人が住むことを想定して、家作りをしましたか?

ここは共働きの夫婦DINKSを想定した物件。目黒区青葉台は、おいしい飲食店がたくさんあるエリアなので、友人とみんなで食事をした後、最後に家でもう一杯を楽しんだり、週末は家に友人を招いて食事をしたり、SNSで自分の暮らしを発信することが習慣化している人を住み手にイメージしました。なので、ゲストが入ってはいけない部屋を作らず、家を社交の場としても楽しむことのできる空間作りを心がけました。

家を社交の場とするために、ダイニングスペースで工夫したことはありますか?

ダイニングテーブルは、必ず丸いものを置こうと決めていました。空間が広く取れるので、座れる人数も増やせます。結局、家の中で人が集まる場所は、ソファかダイニングテーブル。コンパクトな部屋だと、空間に合わせて小さな家具を選びがちですが、あえて大きいものを選ぶことによって、そこに人がより集まれる。だからこそ、小さい部屋ならば、大きめの家具を置くことが実はおすすめです! コンパクトな空間に小さな家具が置いてあると、無意識に狭い部屋だと認識してしまうんですよね。

あえて小さな部屋に大きな家具を置くというのは、目から鱗のアイディアです! 他にこのモデルルームのようなコンパクトな物件でも、部屋を広く見せるコツはありますか?

家具の高さを低くすることや、無駄なスペースを作らないこと、色使いにも圧迫感が出ないように気を使うことがおすすめです。このモデルルームを作る際、スケッチブックに部屋の絵を描いて、「ここにこの色を使ったらどうなるだろう?」と何度も色を塗ってシミュレーションを重ねました。実際に部屋に入ってもらえば、間取り図で見るより広く感じてもらえるのではないかなと思います。

家具の配置はどのようなことを意識しましたか?

実際に生活することを考えて、無理のない動線を意識しながら、ミリ単位で調整しています。家具は配置を少し変えるだけでも、一気に部屋の居心地が良くなったり、新しい家具を買い足さずに印象をガラッと変えることができます。配置力を養うには、自分の家をいじることが一番の練習になりますよ。

存在感のある照明も、空間作りの大きなポイントになっていますね。

日本の家は海外の家と比べて天井高が低い。だから、シーリングにこだわる人が少ないのですが、灯りは空間の目的を明確に演出してくれるので、とても重要な要素です。ダイニングテーブルの上にあるシーリングランプは、フランスの〈MARKET SET〉というクリエイティブ集団が手がけたもので、アート性も高くて非常にお気に入り。日本での取引はこれが初めてだったそうです。

ゲストも自由に出入りできる、
ラグジュアリーなベッドルーム

ベッドルームのこだわりを教えてください。

寝室は人生で一番長く時間を過ごす場所。だから、一番ラグジュアリーにしたいと思って、高級感のあるベロア素材と優しいライトにこだわりました。ベッドルームの照明は〈FLOS〉のもの。ベッドルームの壁紙はダイニングと色違いの壁紙を貼っているのですが、壁一面にベタッと貼ってしまうと圧迫感が出て、視覚的に部屋が狭く感じられるので、モールディングでフレーミングして、さらに鏡を取り付けることで、奥行きを感じられるように工夫しています。

閉鎖的になりがちなベッドルームも、リビングダイニングとの一体感を感じられますね。

以前NYで生活していたとき、この物件よりももっと小さな家に住んでいました。アメリカでは人を呼ぶのが文化なのでホームパーティが頻繁に開催されるのですが、冬にコート置き場になる場所はどこの家もベッドの上。ベッドルームは人が出入りできる空間という感覚があって、そんな自由さがこの物件にも欲しいなと思ったんです。

インテリアの腕はどのようにして磨いてきましたか?

小さなときから自宅の家具を常に動かしていました。両親には「また模様替えしたの!?」とよく驚かれていましたね(笑)。空間を埋めることが大好きで、小学校では毎朝お道具箱の中身を全部机に出して、1から詰め替えて遊んでいました。そのような感じで小さい頃から空間把握の能力を自然と養ってきたんじゃないかなと思います。大人になってもずっとインテリアは好きで、今の家をSNSで発信してみたらたくさんの反響をもらえて、最近ではありがたいことに、レストランの内装の仕事などもいただけるようになりました。

3.8畳のオーディオルームやトイレまで
ゲストを迎えるホスピタリティが満載!

たった3.8畳の洋室はどのような空間に仕上げましたか?

この広さだと物置きにしてしまう方が多いと思うのですが、限られた空間を目一杯楽しむために、あえて部屋として機能させてみました。このご時世、リモートワークのスペースを作ることも考えたのですが、この地域に住む人なら、シェアオフィスを利用している人も多いはず。趣味の部屋を作るなら、住む人だけではなく、ゲストも一緒に楽しめるコンテンツにしようと、テーマは「音楽」と「お酒」にして、オーディオルームを作りました。

3.8畳とは思えないくらい、ゆったりとした空間ですよね。部屋を広く感じさせるために工夫したことはありますか?

大きなキャビネットの扉は、面を作ってしまうと閉塞感が出るので、あえてメッシュのような素材にして抜け感を意識。また、この部屋には窓がないので、窓代わりに景色の写真を飾ることで奥行きを出してみました。

好きな家具のブランドはありますか?

アメリカの〈CB2〉の家具は、今回の物件でも多く扱っています。ベッドルームのベッドと鏡、ベッドサイドテーブル、オーディオルームの家具はラグも込みですべて〈CB2〉。英語のメールを何通もやりとりして、やっとの思いで仕入れました。私たちが購入したすぐ後に日本語のサービスも始まったので、今ではとても買いやすくなったはず。

忘れがちなトイレもこの物件は見所ですね!

トイレには、「Wow!」と感動できる、「Wow! factor」の要素を入れてみました。トイレは、ゲストが一番凝視するスペースでもあります。トイレのピンクの壁紙は「マイアミ」という名前がついているのですが、実はリビングに敷いているモロッカンラグとリンクしているんです。去年まで旅をしていたモロッコは、赤土で練った建物が並ぶ、バラが有名な、まさにピンクの街。国境を越えて、色でつながりを持たせてみたのはポイントです。

社会環境の変化に伴って、満たされる住空間はどのように変化すると思いますか?

居住空間に求めるもの自体が、利便性や効率性ではなく、安らぎや自分らしさを求めることへと変わって、みんな一番好きな場所はわが家だと気付けるのではないかと思います。

「一番好きな場所はわが家」をコンセプトに、心地良さと親しみを追求したモデルルームを手がけてくれた、クリス-ウェブ佳子さん。家は想像力や潜在意識を満たす場所であるとともに、大切な人とのコミュニケーションを深める場であることも、自分らしい暮らしを楽しむ上で理想的。そんな家作りは、部屋の広さに関わらず、あらゆるおもてなしのアイディアを仕掛けることで、どんな家でも実現できるものなのだと教えてくれました。

※本ページ掲載の物件の詳細は「Brillia目黒青葉台公式サイト(外部リンク)」へ

広さよりも“充実感”で居心地の良さを考えた、
ゲストも快適なリビングダイニング

1から空間作りをする上で、まずはじめに考えたことはなんですか?

まず、住み手がこの家でどのような時間を過ごしたいかを考えました。「青葉台」という土地に住む人の趣味嗜好、生活スタイルを自分なりにリアルに想像しながら、生活の背景としての空間を組み立てていきました。グレンチェックやストライプなどの柄をスパイスに、周辺エリアとの親和性を意識した「TRAD」、住まう人の聡明さや合理性を想起させる「NOBLE」、インテリジェンスを感じさせつつ遊びの要素を加味した「ARTY」、この3つをキーワードにしています。私も同じ目黒区に住んでいるので、この場所での暮らしを想像しやすかったことが、表現に奥行きを与えることにも繋がったと思います。

リビングダイニングでは、どのようなことをポイントにしましたか?

ここに住む家族、また友人を家に招く人も多いエリアであることから、そのゲストも心地よく豊かな時間を過ごすには、どんな家具をどのように配置したらいいかを考えました。そうして導かれたのが、同じ部屋でも分断されることが多いダイニングとリビングを、あえてひとつのソファで繫げるというレイアウト。実際人がきて時間を過ごすときって、ダイニングに座る人もいれば、ソファに座る人もいる。だから、その空気を上手く一体化させる方法を考えました。また、一体的に作ることで、より部屋が広く感じられるのではないかと思います。ちなみに、今回取り入れたソファは、〈カッシーナ・イクスシー〉のもの。シートが固めなので、ダイニングのシーティングとしても機能的に使えます。

ダイニングテーブルはどのようなものを取り入れましたか?

ソファの座面の高さから逆算して、リビングテーブルはオリジナルで作りました。既製品のテーブルは、大体高さが70cm程度のものが多いですが、これは65cmで少し低めに設定しています。また、奥行きは80~90cm程度がベーシックであるのに対して、これは少し広めの1m10cm。奥行きを広く取ることで、面積に対してより広く感じられるはず。また、脚部を内側に入れることで、大勢でもテーブルが囲みやすいように設計し、天板の形状も丸みを持たせて動線に干渉しないよう意識しています。

コンパクトな部屋での家具選びは、どのようなことを意識するのが良いのでしょうか?

中途半端に全部を満たそうとしないことだと思います。例えば、コンパクトな部屋に、小さなダイニングセットと小さなソファセットを無理やり詰め込んでも、結局全部が中途半端なまま、どれを使っていても満足できません。自分が一番欲しい、妥協のない家具をひとつ置いてみてください。一点豪華主義的に、ひとつのものに集中するというのは空間を豊かにするアイディアのひとつだと思います。少なくともその家具を使っているとき、生活の質を上げることができます。広く見せるとか、狭く感じるという視点だけではなくて、いかに部屋を充実させるかというところも、居心地の良さに直結するもの。例えばソファの代わりに、お気に入りのラウンジチェアを置いてもリラックスできるだろうし、家で仕事をする人なら思い切ってワーキングデスクを置いてもいい。自分の暮らしのなかで優先順位をつけて、トップになるものからまずしっかり作り込むことが大切で、その経験が自分だけのインテリアを見つける第一歩になります。ある意味、コンパクトな部屋は、コックピットのようにすべてが手に届く場所にあるので、それはそれで居心地がよかったりします。だから、一概に狭い部屋が悪いとも限らないんですよね。

色や柄、素材のコントラストで、
遊び心のあるインテリジェンスを感じさせる空間

モデルルームを手がける上で、守さんらしさはどのように表現されていますか?

色や柄、素材の組み合わせ方でしょうか。単体での良し悪しではなく、何と何を組み合わせるとおもしろいのかという判断をより大切にします。新鮮で意外性のある組み合わせをいつも探したいですね。

具体的には、どのような色や柄、素材の組み合わせを意識しましたか?

トラディショナルでクラシカルなものと、アート性の高いものを組み合わせたり、工業的なメタルの質感と土っぽいものを組み合わせたり、イメージや質感のコントラストを意識して、遊び心のある空間を作りました。今日の服もそんなイメージ(笑)。ソファ周りが特に空間のキーとなっていて、紫のソファにトラディショナルなグレンチェックのクッションと、ヒョウ柄のクッションを組み合わせたのがポイント。派手な色と柄を組み合わせても意外と破綻しない、こういう組み合わせを考えるのがとても好きです。

たくさんの色や柄を使っていながら、部屋全体に一体感があるのが不思議です! どんなコツがあるのでしょうか?

家全体のなかで、同じ色や柄を拾ってあげることがポイントだと思います。例えば、照明のオレンジは、ソファのオレンジのクッションと、床に置いているキャンドルホルダーの色とリンクしているし、ソファのクッションのグレンチェックは、リビングのコーナーに貼った壁紙でも使っています。建築的な要素と小物など、それぞれ次元の異なるもの同士であえて色や柄を拾ってあげることで、全体にまとまりが出やすいはず。これはすぐに実践できるアイディアではないかと思います。逆にひとつの色を異質に見せたいときは、ほかでその色を使わないという方法もありますね。自分がどんな空間を作りたいかで、色や柄使いも変わってきます。

すっきりとしていながら、上から下までどこを見ても賑やかさがありますね!

家具は床に置くものがほとんど。部屋作りでは、床ばかりの密度が上がって、上がスカスカになりがちなので、目線の高さにくるものでインパクトを出すことも意識しました。ダイニングの照明はパッと目を引く〈TOM DIXON〉のものを入れたり、絵を壁に飾ったり、グリーンなども高さが出るものをしっかり入れてあげる。それだけで、インテリアがグッと充実すると思います。また、リビングのコーナーに飾っているオリジナルのミラーもポイント。ミラーは自分を映すものとして使うことが多いですが、部屋の隅に置くことで部屋がつながって見えて、広く感じられる効果もあります。

波線形状のラグと、
アート性の高いオブジェの関係

部屋作りをする上で、ラグ選びも悩むポイントのひとつかと思うのですが、守さんはどのように選んでいますか?

ひとつの空間のなかで一体感を出しつつ、それぞれのエリアをきちんと定義づけてあげることで、部屋にメリハリや奥行きが生まれます。そういう意味で、ラグというのはとても使い勝手のいいアイテム。たしかにラグの使い方は悩んでいる人が多くて、前職でカッシーナにいたときも、どんなサイズで選べばいいかわからないというお客様が多かったですね。ソファがあるリビングでいえば、ローテーブルの周りだけに小さく置く方法もありますが、ソファを覆うぐらい、もしくは前足がかかるくらいのサイズで置くのがおすすめです。面の大小でその空間が大きく見えたり、小さく見えたりするので、できるだけソファサロン全体を覆うようなサイズ感でラグを敷くと、その空間がきちんと定義されて広く感じられると思います。今回リビングに敷いたラグは、端を直線で切るのではなくて、あえて波線形状にカットすることでリビングとダイニングの境界にグラデーションをつけています。これは、デザインとしてアート感を取り入れたいという意図もあります。また、ラグをはじめいろいろな要素に曲線を用いて一体感を持たせています。

たしかに丸みのある、アート性の高い家具やオブジェがたくさんありますね!

この界隈はギャラリーが点在しているエリアということもあり、生活のなかにアートを取り込む空気がある街だと思います。なので、今回のモデルルームでも、アートはひとつのテーマに挙げました。私は手を動かすのが好きなので、小物は自分で造作したものもあります。サボテンの鉢バッグや、棚上に置いている照明のシェードやミラー、本の上にディスプレイしたオブジェもオリジナルです。

※本ページ掲載の物件の詳細は「Brillia目黒青葉台公式サイト(外部リンク)」へ

DIY家具に囲まれた、
インダストリアルテイストのダイニング

ダイニングではどのような家具を選んでいますか?

家の中でも特に過ごす時間の長いダイニングでは、DIYで作った家具をたくさん置いています。ダイニングテーブルは、〈IKEA〉で購入した天板と、好みの鉄の足を組み合わせて作ったオリジナルテーブル。天板はもともと塗装がされていない無垢な状態でしたが、表面をヴィンテージワックスで磨き上げることで味のある風合いに。イスとベンチは大好きなデザイナー、〈ピート・ヘイン・イーク〉と〈IKEA〉のコラボアイテムです。あと、ダイニングテーブルの後ろに置いている棚も自作。コンクリートブロックに、DIY界では定番のツーバイフォー(2×4)材という木の板をただ載せているだけの簡易施工で、総額3,000円程度で作れます。この棚にはDIY用の工具をしまったり、好きなアート本やオブジェをディスプレイして楽しんでいます。

インダストリアルテイストの空間作りでは、具体的にどのようなことを意識しましたか?

有機物と無機物のバランスを大切にしています。DIYだと加工が楽な木の素材を使いがちですが、部屋の家具をすべて木にしてしまうとほっこりしすぎてしまう。なので、DIYをする際も石や金属などの素材を要所で取り入れるように意識しています。

簡単で、費用もお手頃!
オリジナリティ満載の、イノウエさん流DIY術

部屋には、ご自身でDIYした素敵な家具がたくさんありますね! なかでもお気に入りを教えてください。

つい最近作ったコンクリートアイアンのリビングテーブル。正方形のテーブルを探していたのですが、なかなかイメージに合うものがないので作ってみました。天板は道路でよく見かけるコンクリートの棚板で、水を吸わないように透明のニスでコーティングしています。足は建材などに使うL字鋼をホームセンターでカットして、家で穴を開けてボルトで留めています。天板は足にただ載せているだけ。約60kgの重量があるので動くことはありません。これで、材料費3,500円程度で簡単に作れちゃいます。また、ダイニングにある自作のペンダントライトもお気に入り。通販で購入した真鍮のソケットと白色のコードに、工事現場で使われるような頑丈なワイヤーのシェードを合わせたもの。ワイヤーの先の部分は開いたり閉じたりするので電球の交換も簡単にできます。

DIYで家具を作る利点を教えてください。

DIYであれば、ぴったりのサイズで作れるので無駄なスペースが生まれないし、予算がなくても自分好みの素材を選べます。しっかりとした無垢材の家具が欲しいけど、既製品は高価だし、安価な家具は素材の強度が弱く、見た目もあまり好きではありません。わが家はインダストリアルを意識しているので、DIYでやや粗い仕上がりでも良しとしています。自分で作っているから、簡単に取り外したり直したりできるのも嬉しいポイント。家具は大きい買い物で、飽きても気軽に取り替えることができないイメージですが、自分で作れば違う家具同士のパーツをバラして、また新しい家具も気軽に作ることができるんです。自分で作った家具は愛着が湧くし、何より工作なので楽しいですよ!

普段DIYの作業はどこでしていますか?

自宅ですることがほとんどです。材料の調達は、家から10分くらいのところにある〈コーナン〉が行きつけ。私は車がないので、家具材は台車でせっせと運んでいます。

DIYの知識やアイディアについて、なにか参考にしているものはありますか?

DIYは基本自己流です。大学は美術系で彫刻を専攻していたので、工具や素材の扱いには慣れていることもあり、DIYのハードルは比較的低いのかもしれません。鉄も石も木も、どれくらい磨いたらどれくらいの質感になるかなどは、何度もやって身につけていきました。

しっかり遊べて、しっかりリラックス!
人を招くために工夫していること

休日はどのように過ごしていますか?

アートが好きなので、近所のギャラリーや美術館に出かけたり、最近はあまりできませんが、友人を呼んでホームパーティを開くことも多いです。

人を呼ぶための空間作りとして、工夫をしていることはありますか?

しっかり遊べて、なおかつくつろげる空間にできるように心がけています。リビングもダイニングもベッドルームもオープンな空間なので、広々リラックスしてもらえれば。特に友人に好評なのが、100インチのプロジェクター。みんなで映画を見たり、ゲームをしたりします。スピーカーはAmazonで購入した、〈Echo Studio〉。コンパクトながら音質も申し分なく、立体音響なのでどの位置に座っていてもしっかり音が届きます。あと、大きなソファは横になって寝ることもできるので、急に友人が泊まりたいとなっても安心です。

家は住む人そのもの。こだわればこだわるほど、ライフスタイルは豊かになるもので、“家を作ること”を暮らしの一部として楽しむイノウエさんの生き方は、まさに誰しもが憧れる理想の姿。ハードルが高いと思われがちなDIYも自分流にアレンジして、もっと身近に楽しめるものなのだと気付かせてくれる、素敵なお住まいでした。

ナチュラルなリビングは、
『色』で空間にメリハリをつける

リビングではどのような空間作りにこだわっていますか?

絵のフレームや照明、時計、アイアンのラダーなど黒を要所に取り入れることで、ベースはナチュラルだけど、可愛くなりすぎない空間を意識しています。ものが多いわが家では、『色』がインテリアのポイントになっていますね。

色使いのセンスはどのようにして磨いていますか?

ファッション誌を眺めているときに、『この服のコーディネート可愛い!』と思ったら、自宅のインテリアに取り入れてみたり。好きな色は洋服とリンクすることが多くて、そのときどきで自分のなかにブームがあります。最近だとミントグリーンが気になりますね。

自宅のディスプレイはどのようなタイミングで変更しますか?

季節によって、洋服の衣替えのようにアートやクッションを入れ替えたり。あとは、新しいものを購入したタイミングで『色』や『形』を意識しながら、まわりのインテリアも入れ替えます。

リビングのお気に入りの家具を教えてください。

家具を作るときに廃材になってしまう丸太の端を使って作られた、デザインユニット〈Bouillon(ブイヨン)〉の棚は、見た目も可愛くて気に入っています。棚の下段に置いている本は背表紙の色で厳選して、インテリアとしても楽しんでいます。

デスクを愛でるための書斎スペースで、
仲良し夫婦の秘訣を発見

25㎡の限られたLDKに、あえて広さ2畳ほどの書斎スペースを作ったのはなぜですか?

わが家の部屋作りはまず持っている家具から、どのような間取りにするかを考えました。なかでも配置に悩んだのが、13年愛用している〈イデー〉で購入したデスク。年々インテリアの好みが変わって、今わが家にはナチュラルな家具が多くなり、昔好きだった北欧テイストのこのデスクが他の家具と合わなくなってしまいました。でも思い入れがあるし、手放したくない。そこで、リビングダイニングというひとつの部屋でも、ガラスで空間を仕切ることでデスクの行き場を作りました。なので、もともと書斎が欲しかったわけではないのですが、結果的にテレワークの時代がきて、今では非常に重宝しています。

家具のテイストしかり、飾っているオブジェや雑貨もひと味違いますね。

書斎スペースには、夫のお気に入りのものが主に飾られています。器屋で働いている夫は、土っぽい渋いテイストのものが好みなんです。

ご夫婦で居心地よく暮らす上で、工夫していることを教えてください。

お互い仕事で忙しいときは無理をしないように、普段からついでに何かをするようにして溜め込まないようにしています。もともと私がひとりで住んでいた家に、2年ぐらい経ってから夫が引っ越してきました。部屋のベースが自分好みになっているので、自分にとってだけではなく、夫にとっても居心地がいい家であってほしいので、夫と好きなものが違うときは飾る場所を替えたり、それぞれが楽しめる空間作りを心がけています。

自分で手を動かして、費用を節約!
こだわったリノベーションの裏話

ベッドルームのこだわりを教えてください。

ベッドルームは、自分で塗ったやわらかいグリーンの壁に合わせて、原色を入れずに目にやさしい色で統一しています。お気に入りは〈krank〉で購入した、ラッパのスピーカー。小さい箱にiPhoneを入れて音楽を流すだけで蓄音機から音が流れているように聞こえるんです。照明は〈イデー〉のもの。温かみのあるフェルト越しの黄色い灯りでリラックスできます。

どの部屋も素敵なリノベーションが施されていますね! リフォーム会社はどのような基準で選びましたか?

住み手の価値観やライフスタイルを大切に、住み手自身もリフォーム工事に参加できる会社を選びました。自分で手を動かした方が愛着も湧くし、リノベーション費用も大幅に節約できます。私の場合、空間作りの知識はある程度身についていたので、私が詳細に考えた住まいのイラストをリフォーム会社さんの方で図面におこしてもらい、リノベーションに使う床材や壁材、照明などは自分で調達しました。VMDという仕事柄、ペンキを使うことにも慣れているので、扉やキッチン、寝室などはすべて自らの手で塗装。リノベーションにかけられる期間が3ヵ月しかなかったので、毎日本当に大変でしたが、それ以上に楽しい日々でした。また、家づくりには挑戦したいですね!

コロナ渦での自粛期間もまったく苦ではなかったと振り返る、小林さん。お気に入りの器で食事をしたり、休日には居心地のいいリビングで映画や海外ドラマを楽しんだり、掃除だって大好きなオブジェを可愛く見せるためならがんばれる! 好きなもの、大事なものに囲まれているだけで、一瞬一瞬が楽しく、暮らしはより丁寧になったと教えてくれました。

大きな家具と悠々自適に暮らす、
アレンジ可能なワンルーム

この物件を選んだ決め手を教えてください。

敷地面積40㎡以上の築浅物件で、大きなワンルームがあるというのが決め手でした。日本の一般的な住宅では海外のいい家具を揃えても、空間作りに限界があると感じていたので、内装のおしゃれなデザイナーズ物件であったこともここを選んだ理由のひとつ。まったく収納がない、まるでギャラリーのようなこのワンルームをはじめて見たとき、ゼロから部屋を作れることにとてもワクワクしたのを覚えています。

ワンルームの利点を教えてください。

壁がない分空間が広々使えて、自由度が高いのが大きな魅力です。同じレイアウトの部屋で長く暮らしていると、なんだか暮らしにメリハリがなくなってしまうので、わが家は頻繁に模様替えをしています。ワンルームはそんな飽き性な僕にぴったりな間取り。自分で一から空間を作っていると、「ここはこうしたい!」というアイディアもわきやすいし、様々なレイアウトにも挑戦しやすい。また、リビング、ダイニング、ベッドルームがひとつの空間にあるので、住まい全体の統一感も作りやすいですね。

家全体としては、どのようなテイストのインテリアを選んでいますか?

コンクリートの壁とリノリウムのグレーの床に合わせて、インダストリアル調のものを多く取り入れています。石や鉄など無骨な空間に、ポイントで無垢な木素材を合わせることで、無機質になりすぎないようにバランスを取っています。棚や家具はDIYしているものが多く、自由に動かしやすいように作っています。

家具はどのようなものを置いていますか?

低めの窓の高さに合わせて、家具は低いものを置くように心がけています。部屋は6畳や8畳のワンルームが大きくなったイメージでレイアウト。広々とした空間に大きな家具をどかっと置く、そんな欧米スタイルの住まいが憧れでした。お気に入りは、リビングに置いている〈IKEA〉で購入したKIVIKシリーズの大きなソファ。ここでゆったりお酒を飲みながら、テレビを見るのが至福の時間。ベッドもダブルサイズが置けるスペースを確保しました。

イノウエさん宅には照明がたくさんありますね。

今は自宅でテレワークをすることも多いので、照明でオンオフの切り替えができるようにしています。仕事中は天井についている白くて明るいライトを使い、オフの時間はオレンジの間接照明でリラックスできる空間に。ベッドルームの間接照明は〈IKEA〉で購入した1,800円くらいのもの。照明カバーを外して電球をむき出しにしたライトをあえて壁にぶつけることで、やわらかな光を演出しています。大きなワンルームは部屋が分断されていない分、間接照明は数が必要。わが家では、照明のオンオフが苦にならないように、電気のスマート化も進めていて、スマホで操作できるようにしています。

収納はウォークインクロゼットを自作。
快適な部屋作りに、無理は禁物!

備え付けの収納スペースがまったくないこの物件。収納はどのように確保していますか?

部屋の中央に置いている、〈イーグルスチールラック〉という業務用のラックを使ってウォークインクロゼットを自作しました。洋服や雑貨、普段はあまり読まない漫画類などの本も収納。ラックの背面に木の壁を作ることで、部屋のインテリアとも馴染むように見た目よくデザインしています。最近はその壁に板を取り付けて、テレワーク用の仕事スペースも増設しました。

収納グッズでお気に入りはありますか?

〈無印良品〉の衣装ケースやワイヤーバスケットはよく使っています。シンプルなデザインで、すぐに買い足すことができるのも愛用している理由。特に無印良品のステンレス商品は無垢な素材感が気に入っています。

この部屋で暮らす上でのこだわりやマイルールを教えてください。

とにかく住みやすい家にすることを心がけています。暮らしに無理が生じないように収納しすぎず、ある程度生活感があるものもデザイン的に気にならなければ表に出しています。例えば、靴は表に出していますが、バッグが積み重なっているのはあまり美しくないのでウォークインクロゼットにしまったり、収納ボックスも取り出しやすいように、8割程度の量を守って収納しています。家具や雑貨のレイアウトに関しても、無理が出ないように動線を確保することを意識。ものそれぞれがあるべき場所をしっかりと見抜いて、定位置を作れば部屋が散らかることもありません。仕事で無理をしたら体を壊してしまうのと同じように、部屋作りでも無理をすれば住みやすさは崩れていくもの。なので、背伸びしすぎず、無理をしないことを心がけています。

壁に穴を開けずにできる!
コンクリート壁面の棚作り

ついついコレクションしてしまうものはありますか?

靴は大好きでたくさん持っています。靴箱ももともとない物件だったので、自分で作りました。お店のディスプレイのように見せながら収納しています。はじめはひとつしかなかったのですが、最近足りなくなったので増設しました。

靴置き場をはじめ、壁を利用した棚はどのように作っていますか?

ここは賃貸物件なので、新たに壁に穴を空けることはしていません。コンクリートを型枠に流し込む際にできた、通称Pコンと呼ばれる穴を利用しています。靴箱は、穴から出ているネジのようなものにボルトを入れてセパレーターという棒を通し、その突っ張りに板を渡しているだけの超簡易棚。簡単に取り外しもできるので重宝しています。

世の中にもっと浸透していくように、
エシカル活動を進めていきたい

坂口さんはこれからどんな活動をされていくのですか?

毎週土曜にラジオの番組を持つようになったので、サスティナブルなニュースをたくさん提供できると思います。ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベトナム、ニュージーランドなどに海外特派員がいて、毎週世界のサスティナブルな情報を届けてもらおうと思っています。上海やタイなどアジアにも広げていく予定です。今回の合同展示会「rooms41」でも高校生と環境省のトークセッションがあって、高校生が鋭い質問をぶつけてくれました。今の高校生たちはよく勉強していて、環境問題について専門家みたいになっています(笑)。今年から小学生の教科書にSDGsが入り始めましたし、7~8年前からエシカルという言葉が高校の家庭科の教科書に入っています。エシカルネイティブの人たちが出てきていて、みんな鋭いツッコミをしますね。危機感を感じているZ世代、世界を変えていくのは彼らだと思っているので、積極的にコミュニケーションはとっていきたいですね。

坂口さんがディレクターを務めるエシカルコンビニとは?

みなさんが手に取りやすい、おしゃれでエシカルなアイテムの販売やエシカル活動を陳列したポップアップイベントです。有機のもので作ったフードや、使い捨てプラスチック製品の代替になるようなアイテムなど、ユニークでクオリティの高いものをラインナップしています。他にもマイボトル用の給水サーバーを設置したりしているので、プラスチックごみ問題など、解決すべき問題と向き合うきっかけを与えてくれるのが特徴です。

エシカルコンビニの今後は?

一番大事なのは事業者さんが育っていく、事業者さんがビジネスを続けていけるようにしていくことなので、「rooms」のような展示会は引き続きやっていきたいですね。百貨店さんなどからすごく好評なので、いろいろやっていきたいです。一般向けだとポップアップショップ。今は、どうやって実施していくのかを話し合っている段階です。

国内で、今注目しているブランドは?

たくさんありますけど、『CLOUDY』というブランドが渋谷の『MIYASHITA PARK』に常設店舗をオープンしました。アフリカの教育支援や女性支援につながるためにやっているブランドで、今4年目くらい。すでにアフリカに学校を3校作っていて、工場もあって、女性と障がい者を400人くらい雇用しているすごいブランドです。最近、5年前くらいから出てきた新世代のエシカルブランドが育ってきているっていうのはありますね。

エシカルコンビニでも手に入る、
坂口さんが心を込めておすすめするアイテムとは

坂口さんが愛用されているおすすめのエシカルアイテムを教えてください!

『ル・シェンヌ・エ・ル・ロゾー』のベジタブルスポンジ(3個入り) ¥550

再生木材から作られたセルロースを主原料としている家庭用スポンジ。環境にもやさしいだけではなく、吸水性と耐久性に優れ、食器もやさしく洗い上げます。「安価な市販スポンジは簡単にボロボロと崩れ、それがマイクロプラスチックとして川や海へ流れてしまいます。このベジタブルスポンジは、再生木材から作られているので、エコロジカル。なおかつワイングラスのような繊細な食器もきれいに洗い上げてくれます」。

『スタッシャー』のシリコンバッグ (右から)Sサイズ ¥1,320、Mサイズ ¥1,650、Lサイズ ¥2,530

食品用品質として認められている100%ピュアプラチナシリコーンを使用した容器。蒸す、解凍する&温める、焼く、保存するなど使い方はバリエーション豊か。さらに食洗機でも洗えるのがメリット。「洗えば何回でもリユースできるので、ラップや使い捨てプラスチック製保存袋の代替品に。医療用器具や乳幼児用の製品などに使用されているピュアプラチナシリコーン100%で作られているので、安心安全。カラフルな色とサイズ展開の豊富さも魅力です」。

『LOVEG』のソイミート(ブロックタイプ 120g)¥1,078

東京のプランツベースレストラン『ORGANIC TABLE BY LAPAZ』で大人気の商品、ソイミート。ブロックタイプは使いやすさが特徴。唐揚げやカレー、シチューなどいろんなレシピに使えます。「ソイミートは、おいしさだけでなく“美容と健康の主菜”として注目され、健康サポートにも心強い食材です。栄養面では、お肉類より高タンパクでさらに低脂肪。植物性ならではの食物繊維も豊富に含まれており、鉄分、カルシウムまでカバーしてくれます」。

『アリサン』の有機ピーナッツバター スムース ¥1,458

ピーナッツをローストして皮をむき、クランチして作り上げたピーナッツバター。朝のトーストに塗ると満腹感が保たれ、間食もしなくなるほど。炒め物やソースの風味付けにも。「乳化剤や安定剤を一切していないオーガニックのピーナッツバター。パンはもちろん、フルーツにつけてもいいし、そのままでも! もしくは牛乳ともマッチングはいいですよ。砂糖も油も塩も何も使っていなくて、有機ピーナッツしか使ってない、それでおいしいんです。今までのみなさんのピーナッツバターの概念を覆すと思います」。

『DAYLILY』の暖活薑棗飲 ¥3,024

黒糖と乾燥させた生姜をベースに、桂枝など8種類の和漢植物から生まれた漢方「薑棗飲」。ひと口飲むだけで、体の芯からポカポカしてきます。体が温まり、辛いことがあってもさらさらと流してくれるような、気分を前向きにさせてくれるドリンクです。「『DAYLILY』は台湾で漢方薬局を営む父を持つ女性が、日本人パートナーと立ち上げたブランドです。漢方ベースの薑棗飲は、お湯や炭酸で割るとおいしく飲めます。漢方というライフスタイルによって、女性の体温と気分を上げていきたい、そんな思いを感じます」。

エシカルな視点を持つことで、自分の世界が広がるのを感じます。そのものにどんな背景があるのかを考えるだけで、エシカルに参加できるのだと思うととっても身近。おしゃれで便利、そして環境保護にも貢献してくれるような、エシカルコンビニで扱うアイテムを選ぶことも第一歩。ぜひ視野を広げて、自分らしくエシカルを楽しんでみてください。

リラックスできるベッドルームには、
お気に入りのマテリアルを取り入れて

ベッドルームの空間作りで心がけていることを教えてください。

リビングやダイニングと比べて、ベッドルームはナチュラルなイメージを心がけました。抜け感を作ることを大切に、壁はもので埋めすぎないようにしています。ベッドルームで唯一飾っているのが、友人のアーティスト〈E-WAX〉の作品。これは去年、〈YOSHIMI NAGAO by STYLE & EDIT〉と〈CITY SHOP〉のコラボTシャツを作るときに使わせてもらった思い出の写真で、自分への誕生日プレゼントに購入させてもらいました。

ベッドリネンはどのようなものを選んでいますか?

〈H&M HOME〉で購入したシーツと掛け布団カバーに、ヴィンテージショップで見つけた藍染めの布をかけています。〈H&M HOME〉のリネンファブリックはお手頃な値段で、充分可愛いものが揃っています。日本に実店舗はありませんが、オンラインで気軽に注文できますよ。

ついつい好きで集めがちなインテリアはありますか?

私は生粋のマテリアル好き。ベッドに置いている〈A.P.C.〉の大きなキルトクッションや、リビングに置いている〈TORO Vintage Clothing〉の〈MissoniHome〉のクッションのような、おもしろい生地のアイテムはついつい手に取ってしまいがち。服も家具もマテリアルから手に取って、好きだったら使える方向をどうにか考えます。

自分だけのヴィンテージを取り入れて、
お気に入りを長く愛せる、素敵な大人に

ベッドルームのアクセントになっているラタンラックは、どこで購入したものですか?

リビングテーブルと同様、大阪に店舗がある〈Want Antique life store〉で購入しました。引っ越すタイミングがちょうど自粛期間中だったので、家具はほとんどオンラインで購入。〈Want Antique life store〉はメンテナンスも行き届いていて、オンラインショップでも写真を細かく載せてくださっているのでおすすめです。

ジュエリーやデニムなど、見せる収納術も素敵です。

時間のない朝でもパッと身につけられるように、よく身につけるデニムやジュエリーは今の気分のものを厳選してラフに置いています。あまり使わないものは、蓋つきのケースや引き出しに入れて収納。ジュエリーコーナーに置いている鏡は、ひとり暮らしをはじめた18歳の頃から使っているもので、札幌のインテリア家具屋で購入しました。少しずつヴィンテージのような風合いに育ってきています。

ジュエリーはどのようなものを身につけていますか?

友人のブランドや旅先、ヴィンテージショップで出会ったものが多いです。ジュエリーで増やすものといえばピアスぐらいで、その他のものはあまりコロコロ変えないタイプ。肌の一部になるくらい、ずっと同じものを身につけている人ってかっこいいなと思うんです。ファッションもインテリアも、名作は好きですが、それだけだとつまらない。高い安いじゃなくて、そのときの思い出も含めて長く愛せるものを選んでいます。

ファッションとインテリア、長尾さんならではの共通するスタイルはありますか?

年代やブランドに関係なく、マテリアルのミックス感を楽しむのは、私のスタイルのひとつかもしれません。「~系」、「~テイスト」と括られるのはなんだか嫌いで……。仕事柄、海外のクリエイターさんたちのご自宅へお伺いできる機会もあるのですが、みなさん本当に好きなものに囲まれていて、暮らす人それぞれの心地いいと思うリズムが部屋にしっかりと宿っていることを肌で感じました。道端で拾ってきたガラクタのようなものでも、その人が好きだと思えばそれがとても素敵だったりする。そんな生きていく暮らしのセンスみたいなものに憧れます。

生活を豊かにしてくれるアートや植物は、
いつでもそばに

部屋のどの空間にも植物を飾っていますが、取り入れる上でマイルールはありますか?

花は生花を飾るようにしています。ドライフラワーは捨て時がわからず、知らぬ間にカビの胞子がついてしまったり、ズボラな私には向いてないと思って(笑)。また、観葉植物も欠かせない存在。最近迎え入れたのは、〈THE LITTLE BAR OF FLOWERS〉でひと目惚れした、カラテアオルナータカンデリアーナという植物。夜は葉が閉じて、朝になるとまた開く。生きている感じがとても気に入っています。

玄関まわりはどのようなインテリアにこだわりましたか。

ひとり暮らしにしては大きめの玄関。玄関ドアの正面にある棚はできるだけすっきりとディスプレイしたいので、ひとつでもインパクトのあるアートを飾っています。中央に置いたのは、ルーマニアの彫刻家・ブランクーシの『The Kiss』という作品のリプロです。

ご自宅にはアートも多いですね。

純粋にアートは好きで、ものを見る力を養うためにも普段からミュージアムへ出かけたりすることも多いです。特に思い入れがあるのは、もともと持っていたステラ・マッカートニーの母、リンダ・マッカートニーのポストカードを大江戸骨董市で買った額に入れて、私のパートナーにメッセージを書いてもらった創作アート。スペイン語で『人生は急がなくていい』、そんな意味の言葉をもらいました。

長尾さんにとって自宅とは、『自分の素になれる場所』。だからこそ、いつもそばには家族のように愛せるものを。それは1点もののヴィンテージオブジェだったり、海外に出かけたときに出会ったアートだったり、名作と呼ばれる家具だったり……。時代も年代も問わない様々な背景を持ったものたちが、長尾さん自身の思い出によって心地よい一体感を生み出していく。自分が好きなものをミックスすることではじめてスタイルは生まれ、自分の目でものを選ぶことは純粋に楽しいことなのだと気づかせてくれる、そんな素敵なご自宅でした。

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