オンとオフを住み分けて、50㎡でもゆったり2人暮らし【MOJIKAさんのコンパクトライフ 前編】

暮らしが健やかに整った、
日当たりの良い部屋

この物件を選んだ理由を教えてください。

開放感のある吹き抜けと南向きの日当たりの良さ、希望していたルーフバルコニー付き、コンクリート打ちっぱなしの壁とモノトーンの内装デザインに強く惹かれました。実は、当初夫と決めていた家賃の予算を若干オーバーしていたため、夫にプレゼン(のような説得)を行ったという裏話も(笑)。また、内見しながら、実際に住んだらダイニングはここで、リビングはここがいいかなと、リアルな生活がイメージしやすかったのも決め手になりました。

今の家に引っ越してよかったなと思うことは何ですか?

以前ひとり暮らしをしていた物件はあまり日が差し込まず、天気の悪い日は日中でも電気をつけていたのですが、日当たりの良い今の家に越してきて、朝気持ちよく目が覚めるようになったり、育てている植物たちも元気に成長したりしていることがうれしく、日当たりの大切さを実感しています。

動線次第でアップする
暮らしの満足度

暮らしのマイルールを教えてください。

動線を意識すると格段に生活がしやすくなるので、我が家では1階を『動く−ONの場所』、2階を『休む−OFFの場所』と決めてインテリアを配置しました。身支度を整えたり、料理をしたり、洗濯物を片付けたりと、動きの要素が多い1階には高さのある家具を配置。立ったまま作業ができる高めのシェルフを置くなど工夫しています。一方、2階はリラックスして過ごす場所にしたかったので、ローソファやローベッドなど高さの低い家具を選び、大きめの植物を取り入れて開放的な空間を意識しました。

2階は寝室を通ってリビングに行く動線が新鮮ですね!

もともとはリビングを通ってベッドルームの配置でしたが、ちょうど引っ越してから1年ほど経ったタイミングで気分を変えようと模様替えしてみました。リビングのテレビ裏は配線が気になったので、〈DRAW A LINE〉の突っ張り棒を設置し、シースルーの布を吊るして目隠ししています。

前までベッドルームは寝るときしか使っていなかったのですが、今の動線だとベッドをソファのようにして気軽に横たわったり、ちょっと腰掛けて本を読んだり、リビングの延長のように使えて気に入っています。

自宅の中で特に気に入っている場所を教えてください。

ダイニングです。6畳程度の広さしかないのですが、吹き抜けのおかげで圧迫感なく過ごせて、南向きに面している壁一面の窓から日がたっぷりと入ってくるので、窓を開けて風を感じながら日向ぼっこすることも。ダイニングは夫婦で一番会話をする場所なので、木目調の家具や小物を置いて温かみのある雰囲気となるように意識しました。デザインに一目惚れした「トリニダードチェア」もヴィンテージショップで見つけたもので、直線と曲線が組み合わさったデザインと座り心地の良さがお気に入りです。

私も夫も出社ベースの仕事なので、平日は特に忙しなくなりがち。だからこそ、向かい合って食事や晩酌をしながらその日にあった出来事や、たわいもない話をするリフレッシュ時間を大切にしています。

また、ダイニングの一角、デッドスペースになりやすい階段下にはドレッサーも配置。大きな鏡を置くことで、部屋を広々感じられるように工夫しています。

収納の少ないデザイナーズ物件の、
おしゃれ収納アイディア

ふたり暮らしで50㎡のコンパクトライフ。収納はどんなことを心がけていますか?

デザイナーズ物件あるあるで収納スペースが極端に少ない我が家ですが、見せる収納と隠す収納に分けて工夫しています。食器、本、洋服、夫の趣味のフィギュア、花瓶、香水などは、店舗にディスプレイするような感覚で、オープンシェルフやガラスケースを使って見せる収納に。見えると生活感を感じてしまうようなものは、〈HAY〉のコンテナボックスや〈無印良品〉のバスケットなどに保管したり、扉付きの家具に収納したり、〈IKEA〉のワゴンを活用するなど、隠しつつもおしゃれで機能的に収納できるように工夫しています。あとスペースが少ない分、過剰に物を持ちすぎないように気を付けるようになりました。

洋服の収納について、詳しく教えてください。

6畳の洋室を思い切ってウォークインクローゼットとして使用しています。衣類は〈IKEA〉のカラックス(写真:白い棚)と〈楽天〉で購入した突っ張りタイプのハンガーラックを使って、色やカテゴリーごとに分けて収納しています。カラックスは別売りの引き出しや扉をカスタムすることができて、見せたくないインナー類などはうまく隠しつつ使い勝手よく収納できて助かっています。この部屋で衣類除湿器を回して洗濯物を干し、乾いたらそのまま同じ部屋で畳んで収納するところまで完結できるところも気に入っています。

キッチンの収納についても詳しく教えてください。

キッチンの収納も最小限しかないので、食器などはダイニングエリアに置いています。〈無印良品〉のステンレスユニットシェルフはデザイン性と機能性が高く、棚の高さを自由に変えられたり、別パーツのラックを取り付けられたりするなど、オーダーメイドのような使い勝手の良さがあります。

一見難易度が高そうな奥行きのある縦長の住まいでも、生活動線をうまく考えながら1階と2階でメリハリのある暮らしを楽しんでいたMOJIKAさん。後編の記事では、インテリアの好みやお気に入りの家具の話、いつものお家時間についてなど、詳しくご紹介します。ぜひお楽しみに!

猫と暮らすために設計された、
賃貸マンションへお引っ越し

今の物件に引っ越した経緯を教えてください。

2年ほど前、猫を飼い始めたことをきっかけに家探しを始めました。街の不動産屋さんで猫の飼育がOKで、かつ日当たりと風通しのいい家を探してもらったところ、猫と暮らすために設計されたこのマンションに出会いました。

具体的にどんなポイントが猫のために設計されていますか?

まず、インテリアとしても優秀な壁付けのキャットウォークがあります。猫たちはリビングの大きな窓が大好きでよく登って外を眺めています。一部のステップはガラスになっていて、下から猫のかわいい肉球を眺めながらお酒を飲む時間は至福のひとときです(笑)。

そのほかにも、人間のトイレ内に猫トイレが置けるスペースも確保されていたり、リビングの壁にトイレへ行き来できるペットドアも備わっていたりします。

初めての猫との暮らしで、
わかったことや、変わったこと

猫と暮らし始めたきっかけを教えてください。

実はどちらかといえば犬派だったぐらい、もともと猫にはそこまで興味がなかったんです。でも、SNSで初めてエキゾチックショートヘアを見たとき、顔のパーツがすべて中心に寄っていて、鼻ぺちゃな感じがかわいすぎて(笑)。それからブリーダーさんとのご縁ができて、UNIをはじめに迎えて、その1年後ぐらいにUNIの弟と一緒に暮らしていたTARAも迎え入れました。

UNIとTARA、それぞれどんな性格ですか?

動物って、家に帰ってきたらすぐ迎えに来てくれるような、懐っこいイメージがあったのですが、UNIはクールで普段から一人行動多め。意外な感じでした(笑)。でも、TARAは甘えん坊ですぐ迎えにきますし、家にいるときはずっとくっついてきます。猫でも性格は全然違うんだなと驚きでしたね。

猫の魅力ってなんだと思いますか?

もう全てですね(笑)。仕事柄、常になにかを考えている状態で、人と接している時間も長く、つい気疲れしてしまいがちなのですが、自由気ままで奔放なUNIとTARAと暮らしていると、自分自身も気ままに生きようと思えるようになりました。本当に猫って尊くて。しゃべるし、表情豊かだし、感情もあるし。UNIとTARAはペットというより、“友達”という方がしっくりきます。

猫と暮らす上で日々心掛けていることを教えてください。

我が家の猫たちは、棚に置いているものを落とすこともないし、植物も食べないので特に制限していることはないのですが、キャットウォークに登りやすい家具の配置を考えるなど、過ごしやすい動線は猫目線で考えるようにしています。あと、猫は水飲み場が遠いと動くのが面倒で水分補給を怠ってしまうと聞いてから、水は普段猫たちがよく歩いたり、通ったりする3スポットぐらいに分けて配置するようにしています。

愛猫の健やかな暮らしを支える、
使ってみてよかった猫用品

猫用品を買うとき、よくチェックするお店はありますか?

オンラインのセレクトショップ〈pawpawmall〉と 〈sorbet〉はデザイン性の高いアイテムが入荷するので、日頃からチェックしています。猫を飼っている素敵なお家を紹介しているsorbetのInstagramもとってもおしゃれで必見です!

イチオシの猫用品を教えてください。

スティックおもちゃ
〈sorbet〉で見つけた、紐のねこじゃらし。これを出すとUNIもTARAも大興奮です。スティックの持ち手部分にバネがあって、猫の狩猟本能をくすぐる自然に近い動きを演出できます。

爪研ぎ
インテリアとしてもかわいいモナリザが描かれた爪研ぎ。こちらは〈pawpawmall〉で購入しました。素材はダンボールと同じように猫が大好きなサイザル麻。爪研ぎ後の屑が出ないのもありがたい上に丈夫です。

ケアアイテム
爪切りは刃が薄く、ハサミ型で扱いやすい〈猫壱〉のものを愛用。肉球の周りの毛が長いと滑りやすくなるので小さなバリカンも一緒に使ってケアしています。あとは、エキゾチックショートヘアは平面顔で涙が出やすい猫種。1日2回ぐらいは〈アイリッドラッシュ〉というジェル状クリームをつけて目の周りの汚れや分泌物を拭き取りつつ保湿ケアをしています。

あと、猫のトイレの下に「Catlog Board」という排せつ量や回数、体重を調べられる機械を敷いています。おしっこの頻度が多いとか、病気の可能性があるなど、連動のアプリを日々チェックして体調管理を行っています。

空気清浄機
猫の困りごとを一挙に解決してくれたのが、〈LG〉のサーキュレーター機能付きの空気清浄機「LG PuriCare™ Pet」。これを使い始めてから部屋の獣臭がすっかりなくなりました。さらに、空気中に舞う猫の毛も吸い取ってくれる優れものです。

猫と暮らすようになってから家にいる時間が長くなり、家への愛着もだんだんと深まってきたというMAIさん。後編では、いつも猫とまったりしているリビングづくりのアイディアや家具や雑貨の好み、起業家としても活躍するMAIさんのワークスペースについてなど、インテリアにまつわることを詳しく教えてもらいます。ぜひお楽しみに!

ファッショナブルな5.5畳の寝室

寝具はどんなものを愛用していますか?

シーツや掛け布団カバー、毛布など我が家の寝具はすべてデンマークのテキスタイルブランド〈TEKLA〉のものです。100%オーガニックコットンでやわらかな肌触り。細部のデザインもかっこいいです。

寝る前にはホームリネンブランド〈ÉCHAPPER〉のリネンスプレーをシュッと振りかけます。シーダーウッドやサイプレス、サンダルウッドを合わせた爽やかな香りで、一瞬で眠りにつけますよ。

洋服のディスプレイも素敵です。

ものはできるだけ減らして暮らそうと心がけている我が家ですが、洋服だけは夫婦揃って大好きで、たくさんクローゼットに詰め込んでいます。トルソーやラックにディスプレイしている服はそのときどきのシーズンで特によく着るお気に入りのものです。

メガネもファッションに合わせて集めていて、さまざまなブランドのものを愛用しています。最近購入したお気に入りは、〈ayame〉や 〈YUICHI TOYAMA〉のもの。休みの日の朝はランニングをするのが日課なのですが、ランニング用のメガネもいくつか持っています。

寝室のシンプルな照明はどちらのものですか?

神宮前にあるセレクトショップ〈MAIDENS SHOP〉で購入したフランスの〈ラファブライト〉の電球部分。もともとリビングで使うために購入しましたが、専用のプラグがないとつけられなくて、今は一時的に大きなシェードを外して寝室の照明として使っています。タコ糸で編まれたシェード部分は床に置いてオブジェのようにして楽しんでいます。

生活感の出やすいキッチンも、
ホテルライクに整える

普段、家で食事をすることは多いですか?

夜は早く帰って、家で夕飯を食べることがほとんどです。パートナーが料理をしてくれて、僕が食器洗い担当です。

ダイニングテーブルセットについて教えてください。

大理石のダイニングテーブルは、ミッドセンチュリー家具の代表作ともいえる、ニューヨークのファニチャーブランド〈Knoll〉のサーリネンコレクションのラウンドテーブル。椅子は、マルト・スタムがデザインしたカンティレバーアームチェアと、ハンス・J・ウェグナーのYチェア、〈Vitra〉のベルヴィルチェアを合わせています。Vitraの椅子は千駄木にあるインテリアショップ〈FUNagain〉で購入。いい家具が驚くほどリーズナブルな価格で手に入るお店です。

生活感を感じさせないキッチン。どんなことを心がけていますか?

できるだけ生活感の出る食材や調味料は戸付きの棚にしまって、家電もリビングダイニングと馴染むように、モノトーンカラーでシンプルなデザインの家電を選ぶようにしています。〈バルミューダ〉のケトルは沸くまでの時間が短く、注ぎ口が細いので、コーヒーをドリップするときにも重宝しています。

また、〈HUROM〉のジューサーも買ってよかった家電のひとつ。我が家では朝フレッシュジュースを飲むのが日課なのですが、皮つきのまま大きめにカットしたフルーツでもそのままかけられて、繊維量の少ないサラッとしたジュースが仕上がります。

ダストボックスも素敵ですね。

ブラックの方は〈Vitra〉、シルバーの方は新宿のコンランショップで購入した、〈シンプルヒューマン〉のものです。小さいゴミ箱だとこまめにマンションのゴミ捨て場に出しに行くようになるので、家をいつも快適に保てます。

日々の健康をつくる、
毎日の朝時間

今の家に引っ越してから、ライフスタイルに変化はありましたか?

窓が広くて光が気持ちいいので、朝早起きになりました。大体、朝は5時に起きて9時に家を出て仕事をして、夜は20時前には帰ってきて、22時ぐらいには寝ます。以前は仕事から帰ってきて夕飯を食べたら、SNSを見てダラダラして、気づいたら0時を過ぎているような夜型生活を送っていましたが、朝型になってからは、風邪も滅多に引かなくなったし、ストレスも全然たまりません。

朝のルーティンを教えてください。

朝起きたら、まずコーヒーを淹れて、Instagramの更新などデスクワークを開始。6時ぐらいになると部屋の中に朝日が入ってくるので、好きな音楽かけながら、外をぼーっと眺めたり、床に寝てストレッチや筋トレをします。階段下あたりに寝転ぶと、開放感ある吹き抜け空間が目の前に広がって、とても気持ちがいいんです。
そうこうしているうちにパートナーが起きてくるので、一緒に朝ごはんを食べて、支度をして出かけるという流れですね。朝は何をするにしても捗りますね。

コーヒーはどんなものを飲みますか?

旅先のコーヒー屋さんで見つけた、ドリップバッグを飲むのが日課です。写真は、この前行った屋久島の〈ISSOU COFFEE ROASTERY〉のコーヒー豆。お気に入りのマグカップは、スウェーデンのヨーテボリを拠点に活動する〈a.i.gut〉のものです。

休みの日はどのように過ごしていますか?

家にいるよりも外に出かけていることが多いです。毎月どこかしら旅行していて、1泊2日の短い休みでも沖縄や韓国へ行ったりします。深夜便に乗って早朝に着いて、1日中遊んで、次の日の夜便で帰る。旅行は休みと言いつつ、非常にハードです(笑)。日頃から走ったり、トレーニングをしているのは、休みの日に遊べる体力をつけるためでもあります。

白が基調の部屋を舞台に、ものを持たないシンプルな暮らしにチャレンジしたり、朝日に誘われて朝型生活を始めてみたり、心身ともに健康的な暮らし方が印象的だった、タカキリョウさんのコンパクトライフ。今住んでいる家にはどんな特徴があるのか。そう振り返ってみることで、新たな暮らし方が見えてくるかもしれません。

前編では、この家に引っ越してきた経緯や家づくりのテーマ、コンパクトライフのメリットや、タカキさんの好きなインテリアについてご紹介しています。ぜひ前後編あわせてお楽しみください!

スタイリッシュな白黒インテリアに、
“ちょい足しウッド”がちょうどいい

今の物件に住み始めた経緯を教えてください。

ここは、デザイナーズマンションを扱う管理会社〈タカギプランニング〉のInstagramで見つけた物件。次はコンクリートの部屋に住んでみたいと仕事場近くで探していたら、1年前、新築だったここがヒットしました。

ホテルのような上質感のある空間ですよね。

前住んでいた家は、アメリカンミッドセンチュリーの木がベースの空間でした。ですが、仕事場も同じテイストで、仕事とプライベートをうまく切り替えるためにも、今の家では白と黒を基調としたシンプルな住まいづくりに挑戦。昔持っていた家具はほぼすべて売り払って、また一からインテリアを揃え直しました。

住んでから1年半ほど経った今、もともと好きだった木の素材感も少し取り入れながら空間をさらに再編集しています。最近購入した木製のアームチェアは、代官山の〈ザ・コンランショップ〉で見つけた、福井県の家具ブランド〈NIWATORI Works〉のもの。鉄を合材で挟みこんだスタイリッシュでナチュラルなフレームは、置く場所を選ばずうまく空間に溶け込みました。

床はもともと木のフローリングでしたが、白い大理石調のタイルを貼ってよりすっきりとした空間に。白い床にするとゴミがとても目立つので、毎日掃除機をかけるのが日課になりましたね。タイルを敷くのはけっこう大変で丸3日間ぐらいはかかりました。

ものを持たないコンパクトライフで、
ストレスフリーな日常を手に入れる

タカキさん宅は2人暮らしとは思えないほど、ものが少ないですよね!

この家に住み始めたとき、「物を増やさない」というルールを作ったんです。この家に住む前は、細々とした雑貨など、出会ったらとりあえず迎え入れることが多かったのですが、今は目当てのものを買いに行くなど買い物の仕方もより慎重になったと思います。

“ものを増やさない暮らし”をしようと思ったのは、どんな思いからでしたか?

前の家ではとにかくものが多くて、“探すこと”にとても時間を費やしていました。管理するものが少ないと、探す手間も省ける。そう思って、ものを持たない暮らしを始めたんです。今の我が家は、明日突然引っ越すことになっても対応できるぐらい、“身軽さ”を心がけています。

タカキさんが考える、コンパクトライフのメリットは何ですか?

掃除が短時間で済むことと、必然的にものを増やさなくなることでしょうか。断捨離の本を読むと、『持ち物は少ない方がストレスも減る』とよく書いてありますが、まさにその通りだなと実感しています。我が家では、物を増やさないことに加え、使う色のまとまりも意識。視界から入ってくる情報が少ないと、思考もシンプルになるように感じています。

長く使えるデザイナーズ家具と、
思い出の詰まったインテリア

家具を選ぶ際の基準を教えてください。

良いものを長く使うというのが、根本的な考えです。すぐ壊れてしまう家具は愛着が湧かないので買いません。一方で、好みが変わることも見据えて、我が家には手放しても次の使い手が見つかりやすいデザイナーズ家具が多いです。

家具はどのような手段で手放しますか?

売るときは〈ジモティ〉を使うことが多いです。ジモティは現金払いで家まで取りに来てくれるので、梱包したり、発送する手間もなく、非常に便利。貰い手も比較的すぐ見つかるので、引っ越し前で時間がないときでも重宝しています。あと、南青山のインテリアショップ〈NICK WHITE〉では、同店で購入した家具を持っていけば、委託販売もしてくれるんです。リビングのマリオ・ボッタがデザインしたクインタチェアはそこで購入。今のところは飽きずにまだまだ使い続けたいと思っています。

特に思い入れのある家具を教えてください。

アフリカのセヌフォ族が暮らしのなかで使っていたヴィンテージのスツールです。アメリカ旅行に行った際、フリマでこのスツールを見つけたのですが、どうしても持ち帰ることができなくて…。アメリカに住んでいる友人が日本に来たとき、結婚のお祝いにとわざわざアメリカから持ってきてくれました。

さらに、オブジェのように飾っているワカモレを作る石臼も同じ友人からのプレゼント。これもアメリカ旅行の際にロサンゼルスの雑貨屋さんで見つけたものの、帰りの空港で機内持ち込みできず、泣く泣く処分したもの。隣にディスプレイしているブックスタンドも同じお店で購入しました。

よく行くインテリアショップはありますか?

〈ザ・コンランショップ〉はよく行きます。あと、小さな雑貨は古着屋さんや旅行先で買ったものも多くあります。窓辺に置いている人形はよく行く代々木上原の古着屋〈Swallow Equipments Vintage〉のオーナーに「タカキくんに似てる!」と言われて思わず購入したお気に入り。もともとアフリカの通行証として使われていたものらしいです。

まるでギャラリーのようなフラットな空間にお気に入りの家具を厳選して、シンプルに暮らしを楽しむタカキリョウさん。後編では、寝室やキッチン、ダイニングの空間づくりのポイントや、1日の中で一番好きだという朝の過ごし方についてもご紹介します。ぜひお楽しみに!

家具にのめり込むきっかけは、
名作チェアだった

田中さんの家には、いろんな場所に椅子が置いてありますね。

これでも減らした方なのですが(笑)、2人暮らしの我が家には10脚の椅子があります。椅子なので、ギアはギアなのですが、僕は空間のインテリア性を高めてくれるありがたい存在だと捉えています。

特にお気に入りの椅子をいくつか教えてください。

思い入れとしてはピエール・ガーリッシュの「チューリップチェア」が一番でしょうか。若い頃は今より稼ぎが少なく、家具は好きでしたが、なかなか手を出せずにいました…。そんな当時、給料1ヶ月分をつぎ込んで思い切って手に入れたのが、このチューリップチェア。家具にのめり込む入り口になったアイテムなので、今でも思い入れは強いです。

あとは、ポストモダン期のデザイナー、フィリップ・スタルクのハイスツールと、〈COMME des GARÇONS〉と〈アアルト〉のコラボベンチもお気に入り。家具というよりはアートを手に入れたような感覚です。

はじめての名作家具、田中さんならどんなものをおすすめしますか?

コンパクトライフを楽しむ方であれば、ソファの代わりに、良いラウンジチェアを1脚買ってみることをおすすめします。まさに我が家にあるハリー・ベルトイアの「ダイヤモンドチェア」のような。ソファは、部屋をなるべく広く使いたいコンパクトな住まいにはあまり向かないと思いますし、良いものを買おうとするとどうしても値が張るので、結局妥協したものを選んでしまいがち。ですが、ラウンジチェアであれば、同じ予算でも良いものが手に入るだろうし、正しい知識でデザイナー・年代を抑えておけば、必ずこれから価値も上がります。

良い家具は迎え入れてみることで、わかる良さがたくさんあると思います。やっぱり造形が美しいものが家のなかにひとつあるだけで、目が癒されるし、家の中がグッと締まりますよ。

わからないことばかりだから面白い
ミーアキャットとの暮らし

休日はどのように過ごすことが多いですか?

休日は基本的に家にいることが多く、ミーアキャットのお世話をしていたら1日があっという間に終わります。一緒にソファで昼寝をする時間は何にも変え難い幸せな時間です。仕事中もちょこんと膝の上にいたり、ときには近くの公園を一緒に散歩することもあります。

ミーアキャットを飼うことに決めた理由は?

僕の実家では犬、猫、鳥など、動物と一緒に暮らすことが当たり前でした。どうせなら飼ったことがない動物と暮らしてみたいという気持ちがあって、妻といろいろ調べた結果、ミーアキャットが面白そうだとなりました。

育てるのは難しいですか?

ペット化されている動物ではないので、飼育はとても難しいです(笑)。でも、その分発見だらけで面白い。一般的にはキャットフードを食べると言われていますが、我が家の2匹はあまり好きではなく、野菜やお肉、魚、エビ、ホタテなども食べています。僕より食費がかかっているかもしれません(笑)。あと、トイレを覚えられないのはなかなか大変で、頻繁にシャワーに入れています。

ミーアキャットはどんな性格ですか?

ミーアキャットは、もともと群れで生きる生き物。そのため、一緒にいることが当たり前という感覚で、いつも僕と妻にべったりです。2匹飼っているのですが、それぞれ性格は違います。タウ(1才・メス)は人が好きで温厚。環境の変化にも柔軟なタイプ。一方、マルム(2才・オス)は家族以外の人は触れることが難しく、神経質なタイプ。より野生の血が濃い気がします。でも、マルムの方が断然甘えん坊なんですよ。

ケージはどんなものを使っていますか?

もともと大型犬用に販売されていたものをリサイズして使っています。普段は放し飼いですが、やむを得ずケージに入れなきゃいけないシーンでも快適に過ごせるように大きめです。

隠すものはとことん隠して、
好きなものをより楽しめる空間に

どこを見てもすっきり整っている田中さん宅。生活感を感じないのですが、なにか心がけていることはありますか?

ものは極力増やさないことと、生活用品はすべて収納扉の中にしまうことを徹底しています。家具を特に楽しみたいリビングダイニングには、できるだけ収納家具や収納容器を置かないことも意識。『家』という空間の象徴でもある収納用品をなくすことで、ギャラリーとまではいきませんが、生活感が薄れると思います。とは言いつつも、リビングにはひとつだけ収納家具があって。テレビ台でもある「USMハラー」。機能的で、かつデザイン性も高く、これは非常にお気に入りです。

あと、リビングダイニングの一部の窓は、カーテンレールを取り外しているのも、家らしくないひと工夫かもしれません。カーテンやブラインドの代わりにすりガラスのシートを貼っています。

夫婦ともにファッション関係のお仕事をされていますよね。服などの収納はどのように工夫していますか?

服をはじめ、ファッションアイテムは妻も僕もどうしても多いので、丸々1部屋衣装部屋にしています。我が家は玄関に靴箱がないので、靴も一緒の部屋に収納。クローゼットのなかはシャツとパンツ、衣装ケースにはインナー類をしまっています。服は基本的に色ごとに並べることを意識。見た目も整いますし、選ぶときもストレスなくコーディネートを考えられます。

次住む家は天井・壁・床、すべて真っ白やコンクリートなど、よりインテリアが映える空間で、さらに自前の家具の可能性を探ってみたいと教えてくれた田中遥さん。名作家具はアートと同じように、暮らしに新たな気づきや豊かさを与えてくれる存在。まだ迎えたことがないという方は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

前編では、この住まいを選んだ決め手や徹底された家づくりのテーマ、偏愛する家具の話についてなどお伺いしています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

雄大な自然を
住まいに取り入れる

ライフスタイルが変化したことで、家づくりにも変化はありましたか?

動物や自然を興味の対象にすると、インテリアやデザインなど、人為的なものへの興味は薄れていくというか、自然の産物の無垢さやスケールには敵わない気がして。好きなものや環境に囲まれている現状だけで今は十分満足で、スタイルやデザインのこだわりは昔に比べたらなくなりました。デッドスペースに作った部屋の奥の作業エリアには、好きなものを厳選して並べています。

今はどんなものが増えましたか?

好きな作家さんの作品や写真、拾った石、枝葉などが増えていきます。山を歩くことが増えて、そこで出会う自然の造形や模様の美しさに改めて気付いてからは、これを超えるものなんて人間には作れるのだろうかと感じるようになりました。とはいえ、“自然への敬意”、“畏怖の念”が感じられる作品にはやはり興味がありますね。

ダイニングの上に吊るしているモビールはYURI MIYATAさんの「森の落としもの」という作品です。森の中で浮かんで揺れている枝葉をモチーフにしています。

〈HOW TO WRAP_〉や〈Shizu Designs〉の石をモチーフにした作品もお気に入りです。

〈MOEBE〉のフレームに入れて飾っているのは、鈴木優香さんが手掛ける「MOUNTAIN COLLECTOR」のハンカチ。これは彼女が2018年にネパールのエベレスト街道を歩いたときに撮影した写真から仕立たてたもの。標高5,400mのゴーキョピークの景色を楽しめます。

猫も人も暮らしやすい家づくり

愛猫・あおくんとの出会いを教えてください。

6年前、同じマンションに住む友人が、寒い夜に近所の公園で保護したのが、生後3ヶ月だったあお。帰ろうと思ったらついてきちゃって、でも友人は先住猫がいるから飼えなくて。これも何かの縁だろうと引き取ることにしました。

あおくん、もふもふでかわいいですね!

あおはとにかく食いしん坊。自動給餌器からご飯が出てくる前、わずかに聞こえる準備の動作音に反応して、すぐ駆けつけてきます。特に食欲が増す冬場は、機械にアタックしてコロッと出てくるラッキーカリカリを狙っているので、椅子と本で倒れないようにガードしています(笑)。

猫のいる家におすすめな家具はありますか?

〈MOEBE〉のストレージボックスです。我が家では、猫のトイレシートやごはんなど、猫の日用品の収納に使っています。スタッキングもできて、縦置きすれば簡易テーブルとしても使える優れもの。上に座布団を敷いて、猫のくつろぎスペースにするのも良いですね。猫専用の家具は、いざ家に置いてみたら猫が使わないこともあるので、我が家では極力猫も人間も一緒に使えるものを選ぶようにしています。

これから、あおくんとの暮らしで挑戦したいことはありますか?

Instagramを見ていたら、飼い主と山を散歩している猫を見て、うちもいつか一緒に行けたらいいなと夢見ています。あおはなかなか臆病な性格なので難しそうですが(笑)。なにか災害などがあったときのためにもハーネスをつける練習はしているものの、なかなかつけさせてくれません…。

アウトドアの山と、
インドアの猫をつなげる

休日はどのように過ごしていますか?

趣味の山歩きに出かけることが多いです。今年7月にはスイスの山へ出かけたのですが最高でした。マッターホルンの半分ぐらいまで登って、その近辺を散策したり、アイガーにいったり、良い思い出になりました。

山歩きはどんなきっかけで始めたのですか?

2020年、コロナ禍を機に始めました。もともと友人と富士山に登ろうと計画していたのですが、それが台風で中止になってしまい、そのままコロナ禍に突入。せっかく道具は揃っているのだからと、まずは高尾山にソロで登ってみたところ、それがとても楽しくて。朝6時半から登り始めて、頂上で朝ごはんを食べて、温泉に入って。家に帰ってきても、まだ昼12時ぐらい。その日がとても良い1日だったんです。それから、山登りが好きになって、毎週のようにどこかへ出かけるようになりました。

家で過ごす好きな時間はいつ、どんなときですか?

朝、あおが布団に入ってきて一緒に寝ているときです。ただ、トイレに行きたいときなど、起きないといけないときに限って、腕の中にきて気持ちよさそうに寝てるんですよね(笑)。猫はこちらの都合には合わせてはくれないので、いつも翻弄されています。

滝沢さんの暮らしの中心には、「山」と「猫」がありますね。

そうですね。2021年には〈山と猫〉というブランドを立ち上げました。アウトドアとインドア、2つの異なる要素をライフスタイルのテーマの一つとして提案できないか、“山にいながら愛猫を想う、家にいながら山を想う”、そんなきっかけになるものを提案したいと始めました。「山と猫」では、猫が使うものや山の本気道具を扱うのではなく、山や猫が好きな人たちが作るプロダクトや作品を扱っています。山に登る人も、登らない人も。猫を飼っている人も、そうじゃない人も。生活の中に山と猫の存在を身近に感じてもらえたらと思います。

家づくりはプロダクトやスタイルよりも、“暮らし方”にフォーカスしたいと教えてくれた滝沢さん。今の自分が心地いい暮らしとはなにか、そう突き詰めることで自分の理想の働き方や生き方など、大切にしたい芯の部分が見えてくるはずです。

前編では、この家に引っ越した経緯やリノベーションの話、リビングダイニング・キッチン・洗面所の空間づくりについてなど、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

2年半前、アメリカンライフを提案する
デザイナーズ物件へ

今の住まいの決め手は何でしたか?

ある程度の広さと内装の完成度が決め手になりました。ここはアメリカの都市近郊の家をイメージして設計された集合住宅で、植栽は〈SOLSO FARM〉が担当。建具や照明のスイッチなど、内装の細部にまでこだわりがあって、植栽は単なるデコレーションではなく、最低限守るべき距離感などの機能面も考慮されています。

改めて、今の家に引っ越して良かったなと思うことは何ですか?

静かでゆったりとした時間が流れること。都心から離れたことで、自然と夜飲みに行くことも減って、家族との時間をより大切に過ごせるようになりました。『都心に住まなければならない』という固定概念もなくなり、これからの物件選びの選択肢を広げられたのも良かったです。

空間づくりは日本人と相性のいい、
フレンチミッドセンチュリーをベースに

空間づくりのテーマを教えてください。

フレンチミッドセンチュリーをベースに、デザイナーズやヴィンテージ家具をすっきりと配置する、ミニマルなレイアウトを意識しています。我が家のLDKは縦に長い空間。これまでいろいろ試した結果、今はペットものびのび走り回れる、家具を壁付けするレイアウトに落ち着きました。

アメリカのミッドセンチュリーと比較して、フレンチミッドセンチュリーとはどのような特徴があるのでしょうか。

フランスのミッドセンチュリーは、アメリカとはまた違った独特のモダニズム文化があります。昔のフランス人はアメリカ人に比べると華奢で背が低かったこともあり、線が細く重心の低い家具が一般的。また、色の彩度も全体的に落ち着いていて、ポップさも抑えめなものが多い印象。個人的にはフレンチミッドセンチュリーの方が日本人や日本の住宅に合うのではと思っています。

自宅の中で、特に気に入っている場所はどこですか?

ダイニングスペースです。妻と食事をしたり、リモートで仕事をしたり、ライフスタイルの中で特に大事な場所。キッチンとダイニングは隔てる壁がないので、〈イームズ〉のパーテーションで仕切っています。流線的な動きが出せるのが使いやすいです。

ダイニングテーブルは、〈Cassina〉のLC10。ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが共同デザインしたものです。ダイニングチェアはダイニングテーブルのデザイナーのひとり、シャルロット・ペリアンがフランスのスキーリゾート「レ・ザルク」の開発に携わったとき、彼が気に入ってセレクトしたと言われる「レザルクチェア」。引っ越す前にたまたま〈トーキョーリサイクル インプション〉に行ったとき、2脚搬入されたばかりのものを発見。このブラックレザーのタイプは個体数が少ないですし、そもそもヴィンテージチェアで2脚揃って見つかること自体あまりないので、これは運命だと思い即決。引っ越してからもリビングダイニングのアイコン的存在です。

ダイニングのペンダントライトも素敵ですね。

これはブラジルのデザイナーであり、写真家のマウリシオ・クラビン氏によってデザインされた「エクリプスフロアランプ」。複数のプラスチックバンドが蛇腹状に組み合わさった独特の構造で、形や傾きを変えることで、光の形や向きを変化させられます。足をつければ置いて使うこともできる優れもの。日本での取り扱いも最近始まりました。

家具探しは、
趣味というより日課

インテリアはどのようなものが好きですか?

基本的には雑食です。アメリカとフランスのミッドセンチュリーから好きになって、その後はポストモダンやイタリア、今はオランダのダッチヴィンテージが気になります。オランダのモダンデザインは、いろんな文化が混じり合って、ユニークな変化を遂げているんです。日本ではまだあまり知られていないジャンルかもしれません。

家具を選ぶ基準を教えてください。

家具はモダンで造形美が感じられるものに惹かれます。安くはない買い物なので、本当に気に入ったものを選ぶことはマストですし、さらに自宅へ置いた状態で高揚感が生まれるかどうかも大事だと思います。

加えて、我が家の場合はペットのミーアキャットに破壊されないかどうかも選ぶ基準のひとつ。ファブリックは基本的に破られたり、シミがついてしまうので我が家の家具はレザーが多め。チェアやテーブルの足はスチールなど、傷がつきにくい素材を選んでいます。どうしても汚れてしまうソファは頻繁に買い替えていて、今はレザーテープを貼りながら騙し騙し使っています(笑)。色は汚されても目立たない黒一択です。

リビングの角に置いているコーナーシェルフも存在感がありますね。

フランスのミッドセンチュリー期を代表するデザインユニット〈Antoine Philippon & Jacqueline Lecoq〉が手がけたものです。中の仕切りは欠損していたのですが、部屋のアクセントに良いなと思い、置くことに。大理石のブックエンドを合わせて楽しんでいます。

家具はどこで購入することが多いですか?

まず、オンラインで各ヴィンテージショップの新着情報をチェックしています。日本国内のヴィンテージショップはすべてブックマークしていて、1日3時間はリサーチしています(笑)。それぐらいしないと、ほしい家具はなかなか手に入らないんですよね。

一方で実店舗に行くこともあって、ダイニングチェアを見つけた〈東京リサイクル〉で掘り出し物を探すこともありますし、清澄白河の〈stoop〉というヴィンテージショップにもよく伺います。

無駄な装飾は無しに、偏愛する名作家具を楽しむことに、とことんこだわった田中遥さんの洗練された住まい。後編では、コレクションしている名作チェアや溺愛しているペットのミーアキャット、夫妻で大好きなファッションアイテムについてなど、田中さんの好きなものとの暮らしを紐解きます。ぜひお楽しみに!

メンタルケアにもつながる、
花との暮らし

大矢さんが花のある暮らしに目覚めたきっかけを教えてください。

バーに勤めていた6年ほど前、太陽を浴びない昼夜逆転の暮らしにどっと疲れてしまって。そのタイミングで何気なしに1輪の花を家に飾ってみたら、心がホッと癒されて、それから花を飾ることが習慣になりました。

大矢さんの花屋「doigt(ドワ)」について、教えてください。

店舗を持たずに活動する花屋です。他の花屋さんではなかなか出会えないような、ワクワクできる花や、自宅で楽しみやすい花をたくさんご用意しています。普段はイベント出店での活動が主。花屋ってなぜか緊張してしまうという人も、リラックスしながらゆっくり選んでもらえるお店づくりをしています。今年は自分でイベントを主催して、好きな人たちとお花を通したコミュニケーションを楽しみたいです。

大矢さん自身は自宅に飾る花を買うとき、どんなことを意識していますか?

僕はお店で花をじっくり選ぶ時間が大好き。買うときは、純粋にいいなと思う花をいくつか買って、家に持ち帰ってからどこに飾るか、どの花瓶に生けるかを考えます。服をコーディネートするときと同じような感覚かもしれません。これとこれを重ね着したらかわいいよね、という感じで花の組み合わせを考える時間も楽しいです。

花を生けるとき、どんなことを心がけていますか?

まず、水の量は花の種類によって変えています。茎がやわらかいガーベラやチューリップなどは茎が腐りやすいので水は少なめで、枝物やバラなど、茎が硬めのたくさん水を吸い上げる植物は多めに。また、こまめに水を替えて、その都度花が水を吸いやすいように茎の先端を1cmほど切ってあげることも大切です。ハサミの切れ味が悪いと導管が潰れてしまい、花がうまく水を吸えなくなるので要注意。僕がいつも使っているハサミは〈Amazon〉で3,000円ほどで購入したもの。バタバタと忙しい仕事中はすぐものをなくすので、高いハサミを買うのが怖くて(笑)。手頃なものでもしっかり研いで切れ味良く保っています。

一輪挿しなど、洗いにくい形状のフラワーベースは、どのようにメンテナンスするのが良いでしょう?

100円均一などで細長いブラシを買って洗うのもありですが、わざわざそれ用に買うのも…という方は、まとめて漂白剤で洗ってしまうのもいいかと思います。

家で飾るお花はどこで買いますか?

一輪、二輪ほしいなというときは、友人や知り合いの花屋へ行くことが多いです。渋谷のスクランブルスクエアにある大きな〈青山フラワーマーケット〉には、お世話になった方が働いているので定期的に訪ねていたり、あと最近は去年オープンした千歳船橋の〈FRAM〉という友人のお店にも行きたいです。

ワンルームのコンパクトキッチンでも、
快適さをあきらめない!

自宅の中で、特に気に入っている場所はどこですか?

陶器のシンクがあるキッチンです。キッチンは原宿の〈LABOUR AND WAIT〉で購入した黒いフライパンを軸に空間づくりをしていきました。ここで料理をして、ブログ用の写真を撮影するのが趣味のひとつ。キッチンの天板は抗菌効果が高く、汚れが染み込みにくいリノリウム。見た目もよく気に入っています。できるだけ広々使えるように、よく使うキッチンツールはマグネット式収納で省スペースにするなど、ところどころ工夫しています。

キッチンはどうしても生活感が出やすい空間ですが、リビングダイニングやベッドスペースと違和感なく馴染んでいますね。

存在感がある冷蔵庫はDIYで木の囲いを作ることでインテリア性を重視。囲いの上は蒸篭やお酒を飲むときに使うグラスなど、最近出番の多いものの収納場所としても機能しています。また、見た目の気になる調味料類は透明のビンに移し替えて使っています。調味料やお酒を収納しているシルバーの作業台は〈IKEA〉で購入したものです。

キッチン台の下に置いている白い箱型の家電はなんですか?

据え置きタイプの食洗機です。水道につながずに使えるので、大きな工事も必要なく、賃貸でも気軽に取り入れられます。また、場所を取らないので、コンパクトなキッチンでもおすすめです。

ひと手間かける、料理とお酒

家ではどんな料理を作るのが好きですか?

僕は毎日お酒を飲むので、お酒に合う料理を作ることが多いです。あまりおしゃれなものは作らないですが(笑)、最近は回鍋肉や青椒肉絲など中華にハマっています。あと冬は、蒸し料理もよく作ります。メンテナンスは少々手間ですが、蒸篭で作るとおいしいです。

家では普段どんなお酒を飲みますか?

お酒はなんでも飲みますが、特に気に入ってストックしているのが〈HOLON〉のクラフトジン。ジンは蒸留酒なので度数は高めですが、HOLONのジンはそれを感じさせないぐらいフレーバーの心地よさ、味わいがあって、ストレートでも飲めてしまうぐらいおいしいです。春夏秋冬で限定フレーバーを出していて、金木犀を基調とした秋のジンはおかわりで2本購入しました。お茶で割ったあと、最後にドライのキンモクセイの花びらを散らすことで、さらに香り豊かに楽しんでいます。

いつもの部屋にまずは一輪、好きな花を飾ってみたり、毎日の晩酌もお酒づくりにひと手間かけてみたり。ほんの少しのことで、毎日はもっと捗るはず。自分がごきげんになることを見つけて、暮らしに小さな革命を起こしてみてはいかがでしょうか?

前編では、今の住まいを選んだ理由や家づくりのテーマ、コンパクト物件でも自分らしくインテリアを楽しむ工夫についてなど、詳しくお聞きしています。ぜひ前後編合わせて、お楽しみください!

憧れのヴィンテージマンションを、
快適にアップデート

今の物件に行き着いた経緯を教えてください。

ずっと古くて雰囲気のある物件を探していました。もともとこのマンションは友人が住んでいて、いいなと思っていて。空きが出たらすぐに内見できるように、近くのマンションに住んでチャンスを伺っていました。どの住戸も同じ造りで、横に長く、窓が多く、開口部が広い。角部屋ではない限り、あまり出会えない個性的な造りに可能性を感じていました。また、収納部が外にせり出しているので、その分居住スペースを広く使えることも理想的だったり、緑豊かな中庭の景色が高台にあって見晴らしが良いことも決め手に。実はこのマンション内でも3、4軒内見していて(笑)その中でもリフォームがされていなかった今の物件を購入しました。

リノベーションはどのような業者に依頼しましたか?

ワークショップ形式で住まい手も家づくりに参加できる〈ハンディハウスプロジェクト〉に依頼しました。間取りのプランニングから素材やパーツ選びをはじめ、床を張ったり、壁を塗ったりする作業も含め、とても楽しかったです。

家づくりはどのように進めていきましたか?

薄暗かったので、壁は真っ白に塗り、窓からの光が全体に回るように2LDK の間取りを1LDKにリノベーションしました。あまりセオリーに捉われすぎずにアイディアを出していきましたね。例えば、当時はまだ当たり前ではなかった寝室の内窓は「ここに窓があったらきっと明るくなるだろう」と自由に発想したもの。寝室なので下半分は磨りガラスにしています。あと、我が家には巾木がなかったり、窓枠は黒で塗っていたり、内装の装飾は極力シンプルになるよう工夫しました。

寝室のドア、重厚感があって素敵ですね。

これは1920年代のイギリスのアンティーク。番号が書いてあるイギリスの玄関ドアが好きで、長い間探していました。家に入れてみたら、想像以上に大きかったです(笑)。ガラスの部分はもともと入っていたステンドグラスを取り外して、隣の窓と同じ鉄線入りのガラスへ入れ替えています。

機能的で美しい、暮らしの道具

家の中で一番長く時間を過ごすのはどこですか?

リビングダイニングですね。ダイニングテーブルに座っていると、テーブルの上か足元か、猫が大体近くにいるので、一緒にゆっくりしています。ダイニングテーブルは大好きなデザイナー、ジャン・プルーヴェがデザインしたヴィトラ社のテーブルで、この家に引っ越したときからの愛用品。天板のスペアもあるのでまだまだ使い続ける予定です。

テーブル上のライトは、シェードを好きな角度に調整できる猿山修さんデザインの「自在照明」。椅子はイームズチェアを合わせています。

家具など、暮らしの道具はどんなものが好きですか?

装飾的にデザインされたものよりも、機能的に作られていて、それが美しいというのが理想的だと思っています。例えば、〈Russell Pinch〉の木製スツール。折り畳んで壁にかけることもできるデザインで、アーツアンドクラフトがルーツにある、イギリスらしいクラフトマンシップを感じます。用の美を感じる佇まいが良いなと思います。

薄暗かった水回りも
明るく清潔感ある空間に

リノベーション前、特に印象が暗かったキッチンと洗面所。今はどんな空間ですか?

キッチン
キッチンは光がたっぷり差し込むように窓辺に移動し、〈IKEA〉で購入したキッチン台を導入。コンロ上に取り付けた〈MOEBE〉のセラミックペンダントランプは、シェードがコードに固定されていないため、光を落とす向きを調整できるという優れもの。また、食器類を収納している〈Tse&Tse associees〉のインディアンキッチンラックは、見た目もよく、使いやすくてお気に入りです。

洗面所
白とシルバーで統一することで、明るく、清潔感のある印象に。〈IKEA〉のシンクをベースに、タイルを貼ったり、工業用の取手を取りつけるなどして工夫しました。メガネや香水を置いている白いウォールシェルフも〈IKEA〉。鏡はフレームのないシンプルなデザインが気に入った〈MOEBE〉のものを取り入れました。

シンプルだけど味わい深い、滝沢さんの住まいづくり。後編では、滝沢さんが今思うインテリアの考え方や好きなもの、愛猫・あおくんとの暮らしや休日の過ごし方、2021年に立ち上げた自身のブランド〈山と猫〉についてもご紹介します。ぜひお楽しみに!

朝日が気持ちいい、
屋根裏部屋のような物件

今の物件に住み始めた経緯を教えてください。

もともとは、同じマンションの下の階の部屋を内見しに来て。ちょうど最上階も空いたからと見せてもらったのが、このちょっと変わった物件でした。キッチンのシンクが賃貸では珍しい陶器だったり、角部屋で三面採光なこと、ヘンテコな斜めの壁も気に入りました。

改めて、今の家に引っ越してよかったなと思うことは何ですか?

朝、とても日当たりが良くて、朝日と共に目覚めるようになりました。以前はバーで働いていたこともあって夜型の生活でしたが、今は完全朝型に。最近取り入れた〈TOSO〉のバーチカルブラインドは、ほんのり光を取り込める透け感のあるタイプ。縦の空間を意識できるようになり、天井を高く感じられ、部屋全体がシャープな印象になったと思います。

ポップな花と意外性のあるインテリアで、
心躍る空間づくり

自宅づくりのテーマを教えてください。

好きな色を自由に使ったり、アクセントクロスで空間に奥行きを持たせるなど、パリのアパルトマンのように、コンパクトな住まいを自分らしく楽しむことはひとつのテーマです。さらに、花が引き立つようなインテリアコーディネートも意識。大きな家具や床、壁の色は、白、グレー、ベージュをベースにすることで、花の色が引き立つようにして、花と相性のいい緑は多めに取り入れています。家具は気軽に変えられないものですが、お花は気軽に変えられる要素。そのときどきの気分に合わせた花を取り入れています。

アクセントクロスを貼ったベッドスペースについて、詳しく教えてください。

賃貸でも使える、剥がせるアクセントクロスは、壁紙専門店の〈WALPA〉の実店舗で実際に色を見て購入しました。テラコッタに似た色で植物との相性も良く、飽きが来ないだろうと選びました。

ベッド上にかけている写真をモチーフとしたブランケットは、韓国のインテリアブランド〈SLEEPTIGHT OBJECT〉のもの。チェジュ島の大自然と、そこに佇む馬の群れが素敵。ぬいぐるみなどで使う生地で作られているので、手触りが良いのもうれしいポイントです。

インテリアはどのようなものが好きですか?

ポストモダンや無機質だけど温かみがあったり、意外性のあるインテリアに魅かれます。

例えば、床置きしているくねくねした形の照明は、〈IKEA〉と立体アーティスト〈GELCHOP〉のコラボアイテム。期間限定で販売していました。六角レンチをモチーフにした奇抜なデザインがかわいいですよね。

部屋づくりを考えるにあたり、軸となったインテリアアイテムはありますか?

ガラスウェアブランド〈TOUMEI〉のペンダントライトは、我が家のアイコニック的存在。“ポップ”という言葉だけでは片付かない魅力があるなと、銀座の〈シボネ〉で一目惚れ。明かりをつけていないときもアートとして楽しめます。また、我が家にはTOUMEIのデザイナー・アーティストの髙橋漠さんが手がけたガラスオブジェの写真も飾っています。

また、TOUMEIのプロダクトを愛用していることをInstagramで投稿したら、なんと〈ほぼ日〉の方が見つけてくださって、TOUMEIとのコラボが実現!一緒にフラワーベースを作ることになり、ちょうど最近完成しました。

TOUMEIさんとほぼ日さんと約半年ほどじっくり相談しながら製作しました。口径が狭すぎると洗いづらいし、広すぎるとお花があばれて生けにくい。日常的に自宅で使ってみることで微調整を繰り返し、サンプルづくり3度目にしてようやく理想的なフラワーベースが完成。僕もTOUMEIさんもインテリアが好きなので、お花を生けなくても楽しめる花瓶に仕上がりました。

18㎡・ワンルームで、
上手に暮らすアイデア

ダイニング兼デスクスペースについて、教えてください。

ダイニングテーブルも兼ねているデスクは〈IKEA〉のMICKE。鉄脚はホワイトにしたかったのでマスキングテープで加工しています。椅子はオランダのヴィンテージ。個性的だけど温かみのあるチェアを探していたら〈Yahoo!オークション〉で見つけました。デスクの上に置いている、プリンターのような家電は〈Aladdin〉のオーディオ内蔵型プロジェクター。壁から最低24cm離せば100インチの大画面が楽しめる超単焦点モデルでコンパクトライフにおすすめです。

他にもコンパクトライフにおすすめなアイテムを教えてください。

takayo katayamaさんの籐のモビール
温かみのある籐で洗練された曲線美を描いた作品。ずっと欲しかったのですが今まで欠品続きで、最近ようやく手に入れることができました。大きくて存在感はあるけれどシンプルで圧迫感が出ないので、コンパクトな部屋でも高い位置の空間を上手に飾れます。

オーディオテクニカの「Sound Burger」
コンパクトでどこでも手軽にレコードが楽しめるレコードプレイヤー。スピーカーはBluetoothにつなげて使えたり、充電式だったり、レトロな見た目ながら現代人にマッチした性能を備えています。

Kartellの「コンポニビリ」
ベッド横に置いているのは、イタリアのインテリアブランド〈Kartell〉の収納家具。Kartellはプラスチック加工技術を活かした、モダンなデザインの家具が魅力的なブランド。我が家では、ベッドサイドテーブルとしても活躍しています。

コンパクトな住まいでもすっきり暮らすためにどんな工夫をしていますか?

収納については、ベッド下のスペースをフル活用。オフシーズンの服や使用頻度の低い掃除用品、本などをしまっています。ベッドは〈IKEA〉のものですが、しまうものが多すぎたので、もともとついていた引き出しは取り外し、ローラー付きの衣装ケースをそのまましまえるように改造しました。

あとは、意識的にモノの住所を決めること。コンパクトな住まいだと少しでも散らかると気になるので、モノの定位置を考えるのは大切だなと思います。僕はそのときどきのライフスタイルに合わせて模様替えをこまめに行うタイプ。そのため、その都度住所変更しています。さらに、必要以上にモノを持たないことも大事。1個買ったら1個手放すことを意識して、1年使わなかったものは処分するようにしています。

8畳・ワンルームというコンパクトな住まいのなか、様々な工夫で部屋を広く使いながら、色とりどりの花と好きなインテリアを目一杯楽しんでいた大矢さん。後編では、大矢さんの暮らしでは欠かすことのできない花の話や、コンパクトでも快適なキッチンづくりの工夫、気分転換にもなっているという料理やお酒について詳しくお聞きしています。ぜひお楽しみに!

実生活にポジティブな影響を与えてくれる、
『メタバース』とは?

メタバースとは何ですか?

北さん:我々の捉え方では、デジタルファーストの生活圏が3DCG技術で構築された空間と考えています。もう少し説明すると、アバター(仮想的な分身)を使って、ユーザーが3DCG技術で構築された世界で様々な活動ができたり、他の人と交流したりできる空間になります。ゲームができたり、Tokyo Meta Livingでいうと部屋のシミュレーションができるなど、サービスごとにできることは様々です。

池田:メタバースと聞くと完全に独立したデジタル上の世界で、そこでの生活は現実世界と切り離されたものとイメージしがちですが、実際には現実生活と影響し合えるサービスも多くあるんですよね。

北さん:そうですね。社会生活の一部をバーチャルで楽しむ感覚でしょうか。メタバースの中で社会生活を完結するというよりは、今のリアルな生活があって、リアルでできないことをバーチャルで体験するなど、バーチャル空間での経験が現実社会の生活の一部になるイメージかと思っています。

例えば、学校を例に説明すると、いろんなタイプの学校がある中で、その選択肢のひとつにメタバース上で学べる「MEキャンパス」というものがあります。メタバース空間のアバターで学校生活を送りながら、メタバースを構築・運営するクリエイターのスキルを課題制作が中心となっているカリキュラムで実践的に学べる学校です。社会活動の選択のひとつに、メタバース上の選択肢があるということです。

『Tokyo Meta Living』を開発したきっかけを教えてください。

池田:住まいを提供するデベロッパーとして、“住まうこと”をもっと楽しく、豊かにするために私たちは何が提供できるのか、日々模索してきました。これまでBrilliaから生まれた住まいと暮らしの共創プロジェクト「bloomoi」や、自分らしさを大切に暮らす人々を紹介する「Tokyo Compact Life」の取り組みを通じて、多様な人々の声を聞き、共創の幅を拡げ、より自分らしさを表現しやすい商品・サービスの創造に取り組んできました。最近ではスマートフォンの普及により、見やすい、イメージしやすい、操作しやすい等、ユーザビリティ重視の最適なコンテンツをより強く意識し、最新技術を活かしたコンテンツ制作にも積極的にチャレンジしています。人々が住まいについて自分らしく自由に想いを描けるように、また、住まいについての情報交換を気軽に行える場を作れるように、私たちはメタバース領域での住まい開発に挑戦することを決めました。

自由度の高いカスタム空間で、
自分らしさに出会える

Tokyo Meta Livingでは、具体的にどんなことを楽しめますか?

北さん: ユーザーが「マイルーム」内で自分らしい生活空間をシミュレーションできたり、それを他のユーザーと共有できるところが特徴です。また、展示やイベントなどを楽しめる「ロビー」空間もご用意しています。

マイルームでは、どんなカスタムを楽しめますか?

北さん:3タイプの中から好きな部屋を選んで、家具や家電、壁紙や床材、BGMなどを自由にコーディネートできます。リリースのタイミングでは、家具や家電のバリエーションは多くは無いのですが、今後さらにラインナップを増やしていく予定です。木の家具は木目をリアルに再現するなど、クオリティにもこだわっています。

池田:現実世界では試すことが難しい、部屋の印象を大きく左右する壁・床のコーディネートや、キッチンのレイアウトなども固定概念に縛られずに試すことができます。また、選べる家具等については、今後アイテムを増やしていきたいと思っています。

マイルームを他の人と共有できるシステムも面白いですね。

池田:マイルームのリンクを友人やパートナーに送って実際に入室してもらうこともできます。さらに、マイルーム画面はキャプチャすることも可能で、それを投稿し共有できるSNSのようなサービスも実装しています。たくさんの人に見てもらい、周りからの共感・評価を得られることは部屋づくりのモチベーションにもつながりますし、評価の高い投稿は部屋づくりの参考にもなりますよね。将来的にはプロの空間デザイナーや、インテリアスタイリストの方が作った部屋を紹介したり、定期的にコンテストやイベントも実施することで、より盛り上げていきたいと思っています。

Tokyo Meta Livingはどのような方に、どんな目的で楽しんでもらいたいですか?

池田:分譲でも賃貸でも、住まいを検討する際には、間取りだけでなく、家具やレイアウトについても考えるもの。植栽やオブジェなどを追加で置いてみることで、こんなレイアウトもありだなと発見してもらうこともできると思います。また、一人住まいではない場合、家づくりはパートナーと意見を出し合いながら進めることが一般的ですが、イメージの共有が難しいですよね。Tokyo Meta Livingでは、“私らしい”コーディネートをシミュレーションできますし、ときにはパートナーをメタバース上の部屋に招待し、「こういう雰囲気の部屋にしたいけどどう思う?」とイメージの共有をスムーズにしてくれるのではないかと考えています。

お二人は自分の暮らしで、Tokyo Meta Livingをどのように役立ててみたいですか?

池田:なにか家具を買う前に活用してみたいです。家具は大きな買い物ですが、買う前に自分の部屋に置いてみて、他の家具や小物、壁、床との相性を確認することは現実的に難しいですよね。そこで、自宅の雰囲気に合わせてコーディネートしたマイルームに、欲しい家具に近いものを配置し、今持っている家具との相性や色の組み合わせ、置くとどれぐらいのスペースを占めるかなど、簡単なシミュレーションをすることで「家に置いてみたら違った」という失敗も未然に防げるのではと思っています。

また一方で、いつか住みたい理想のマイルームも作ってみたいです。今住んでいる家はコンパクトなので、広いスペースに大きな家具を豪快に置いて、一人称視点で部屋を見渡したときに、どんな感覚を楽しめるのか。“こういう空間に住みたい”というイメージを膨らませたいです。

北さん:私には中学2年生の娘がいるのですが、物が多いタイプで。最初に今あるものをマイルームに全部置いてみて、ものを減らして整理すると視界がこれだけすっきりするというのを見せてあげたいですね(笑)。

住まいの可能性を広げていく、
これからのTokyo Meta Living

Tokyo Meta Livingの今後の構想について教えてください。

池田:Tokyo Meta Livingでは、住まいのコーディネートを楽しめるマイルームのほか、展示スペースや大きなモニターが実装された、広い「ロビー」も設けています。ここでは、アートや家具の展示や、インテリアのプロをゲストに招いたセミナーなど、住まいづくりの手助けとなる催しも計画中。また、マイルームの家具・家電のアイテム数や機能はさらにアップデートしていく予定。まずはマイホームを検討しているかどうか関係なく、楽しいと思ってもらえるコンテンツづくりに尽力します。

Tokyo Meta Livingに今後搭載したい技術があれば教えてください。

北さん:今、弊社で開発中の生成AIを活用したAIアバターに期待しています。チャットボットにアバターがくっついたような機能で、ゲームでいうプレイヤーのいないキャラクターのような存在。住まいや暮らしにまつわるプロの知識を集約したアバターができれば、24時間365日いつでもプロの意見も交えながら住まいづくりに取り組むことができます。一人で空間を作っていくのも面白いですが、専門家と相談しながら空間づくりを楽しむことができるのではないかと。Tokyo Meta Livingで生まれたアイディアを実際の住まいや暮らしに活用するところまでしっかりつなげられるように、ひとつひとつ課題を解決していきたいと思っています。

自由に思いを描くことのできるメタバース上で、本当の自分らしさに向き合いながら住まいを模索できるTokyo Meta Living。メタバースサービスと聞くと、一見難しそうに感じるかもしれませんが、操作はゲーム感覚で楽しめて、普段ご使用のスマートフォンやPCのWebブラウザから気軽にアクセスできます。ぜひTokyo Meta Livingで自分らしい生活空間を体験してみてくださいね。

憧れの名作椅子コレクション

部屋には椅子がたくさんありますね!

椅子はフォルムが好きで、ついつい集めてしまいます。素材や形、どこで使われていたものかなど、そのものの背景を知るのが楽しくて。我が家は色物も多いので、基本的に椅子の足はアイアンやシルバーのものをチョイス。80年代チェアのPhilippe Starckがデザインしたバースツールや、〈MarioBotta〉のPrimaをはじめ、ただ置いているだけでオブジェのように楽しめる、個性的なデザインのものが多いです。

リビングの窓際

特にお気に入りの椅子をいくつか教えてください。

Philippe StarckデザインのDr. Sonderbar Chair

計算され尽くされた抜けのあるフォルムにパンチングシートだけというミニマルな形だけど大きさもあって存在感のあるラウンジチェア。先ほどのバースツールと同じPhilippe Starckの作品で、遊び心のあるデザインが素敵。一脚あると空間にデザイン性が生まれる気がします。サイドテーブルは、女性建築家の草分け的存在であるアイリーン・グレイのが手がけたE1027。天板がガラスでフレームがシルバーなので圧迫感もなく気に入っています。

ピアノスツール

作者不明の1930年代のピアノスツール。座面は張り替えてありますが、もう90年以上前に作られた椅子なのに、座り心地も良いんです。当時はアールデコ建築が主流で、そのテイストが全面的に表現されているデザインが魅力的。

ミニチュアの椅子コレクションもかわいいですね。

これは〈Vitra〉から出ている名作チェアのミニチュア模型。1/6スケールに縮小しつつ、ネジやパーツなどの細かなところまで職人さんによって作られており、かなり再現性の高いシリーズで建築学校の授業でも取り入れられているみたいです。欲しいけど手に入らない椅子はこれで満足しています(笑)。

お気に入りのポップな雑貨と、
ディスプレイテクニック

ものを飾る上でどんなことを心がけていますか?

我が家のインテリアはとにかく色が多め。何も意識せずに置くとただ散らかっているように見えてしまうので、素材か色でまとめることが多いですね。

リビングの一角
ディスプレイ棚

部屋のアクセントになっている、青い置物は何のコレクションですか?

〈BITOSSI〉というイタリアのブランドで、アルド・ロンディが手掛けたRIMINI BLUシリーズです。「リミニブルー」というカラーは緑と青が混ざったような深みのある色。見る角度によってさまざまな表情を見せてくれるのが面白いです。オブジェを飾るときは本で高さを出して飾ってみたり、少し動きが出るように工夫しています。

リビングの一角

緑のゾーンもかわいいですね。

きのこのようにニョキッと生えている緑のランプは、スウェーデンの女性2人によるデザインユニット〈フロント〉が手がけたライト「CURVE」。インテリアに目覚めるきっかけとなったアイテムで一目惚れでした。左はルーマニアの民芸のお皿。パリのセレクトショップ〈Merci〉で購入した作家もので、右のスツールはMartino Gamperがデザインした、Arnold Circus Stool。内部は空洞になっているので、洗濯カゴや傘立てとして使っている方もいるみたいです。

身につけるものも
その日の気分でコーディネート

香水がたくさんありますね。

香水は好きですね。ウッディやベチバー、柑橘系が多いです。特に気に入っているのは、韓国で見つけた〈KINFOLK〉の香水。ほどよくミントっぽい爽やかな香りで、ハンドソープなどもまとめて購入しました。

いつもどのように使い分けていますか?

朝の出勤前や夜外食しに行くときなど、出かけるときはウッディ系など深みのある香りをつけることが多いです。自分は家でも香水をつけるタイプで寝る前にもつけるのですが、寝る前は香りが軽めのフルーティなものやベルガモット系をつけることが多いです。

アクセサリーはどんなものが好きですか?

ヴィンテージものが多いですね。デコラティブなデザインのものに魅かれる傾向があって、昔の〈HERMES〉や〈GIVENCHY〉のものも大切に使っています。さまざまな洋服に合わせやすいように、ゴールドとシルバーどちらも使われているデザインを多く揃えています。

ファッションはどのようなスタイルが好きですか?

僕はどんなジャンルも着るタイプ。トラッド、ミリタリーやワーク、スポーティーも好きだし、いろんなジャンルをミックスして着るのを楽しんでいます。

インテリアとファッション、リンクするところはありますか?

インテリアもファッションも正解がないですよね。どちらもトライアンドエラーを繰り返しながら、自分の“好き”を表現していくものだと思っています。

洋服もインテリアも、そのもの独自の背景を知ることが面白いと教えてくれた今関さん。背景も含めて好きだと思えるものに囲まれた彼の住まいは、クリエイティビティに溢れた、アイデアの源泉というべき空間でした。

前編では、この物件を選んだ理由や、家づくりのテーマ、インテリアの好みやお気に入りの家具について、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

スタジオ使いもできる、
海外アトリエをイメージした空間づくり

この物件に決めた理由を教えてください。

仕事柄、家でも頻繁に撮影するので自然光が入りやすい空間であることは決め手になりました。また、リビングの一角が丸みを帯びている面白い間取りだったり、キッチンとリビングが完全にセパレートしているところも、生活感が抑えられて気に入っています。

リビングの窓際

家づくりのテーマはありますか?

海外のデザイナーさんや職人さんのアトリエを参考にしながら空間づくりをしています。空間のイメージをガラッと変えてくれたのが白の床。もともと一般的なフローリングだったのですが、賃貸でも使用可能なタイルの床材を敷き詰めることで、フラットで無機質な印象を演出できたかなと思います。リビングは、ソファやローテーブルが置いてあるエリアをくつろぐエリア、大きな鏡のある広々としたエリアを撮影ができるスタジオエリアとして分けて過ごしています。

リビング全景

どこを切り取っても画になる空間ですね!生活感を抑えるアイデアはありますか?

コード類を目隠しするのに役立っているのが、ファッション界を拠点に活動する〈BLESS〉の延長コード。インテリアとしても楽しめて、実用性もしっかり兼ね備えています。

あと、文房具など細々したものの収納に役立っているのが、壁掛けできる収納ラック「ウーテンシロⅡ」のヴィンテージ。もともとは真っ白だったと思うのですが、いい感じに日焼けして、味のあるクリーム色になっているのがお気に入りです。

ミッドセンチュリーベースの、
ジャンルレスインテリア

インテリアはどんなものが好きですか?

洋服も古着が好きなように、家具もひとつ一つ表情が異なる古いものや、昔誰かが使っていたストーリーを感じられるものが特に好きです。最初はミッドセンチュリーモダンにはまって、スペースエイジやポストモダンも気になり出し、最近では現代のアーティストさんの作品も増えてきて、それを“全部のせ”にしたのが我が家です(笑)。服もテイストをミックスして着ることが好きで、インテリアも同じ感覚で、年代や国籍、ジャンル問わず集めています。

特にスペースエイジの家具は取り入れるのが難しいイメージがありましたが、うまくミックスされていますね!

床を白くしたり、家具の足をできるだけシルバーで揃えるのも、空間に馴染みやすい理由かもしれません。スペースエイジの家具は特に高価なものが多く、なかなか見つからないのが悩ましいところ。壁のVerner Pantonのファブリックパネルや、趣味で集めているスターウォーズグッズ、リビングの宇宙船のような〈Petite Friture-Vertigo〉のペンダントライトからもスペースエイジ感が滲み出てるかもしれません。

リビングのくつろぎスペース
リビングのスタジオスペース

名作家具がもたらした、
ミニマリストマインド

インテリアが好きになったきっかけを教えてください。

ブランドを始めて、ハウススタジオへ行ったり、いい内装に触れる機会が増えたことは影響している気がします。もともとインテリア自体興味はあったのですが、家具ってやっぱり高価だからなかなか手が出せなくて…。でも、20代後半になって、少しずつ自分のお金でほしいものが買えるようになりました。デザインすることが仕事なので、インスピレーションにもなる、いいデザインには常に触れていたいという気持ちがあります。

お気に入りの家具をいくつか教えてください。

E&Yのローテーブル

〈E&Y〉という日本のブランドのもので、二俣公一さんがデザインを手がけています。天板の下にはハンモックのような大きなカゴが浮かんでいて、今は〈青山フラワーマーケット〉でみつけた流木のような植物などを飾っています。

C&B ITALIAのソファ

一番最近買った家具です。名古屋のヴィンテージの家具屋さんに行ったら、ちょうどその日が大型コンテナの到着日で。オンラインショップに出る前にこのソファを見つけました。でも、ちょうど僕の前にひとり悩んでいるお客さまがいたみたいで、しばらく待つことに。買えるのかわかるまでは毎日が気が気じゃなかったです(笑)このソファは、〈B&B ITALIA〉の前身となる〈C&B ITALIA〉時代のプロダクトで70年代のもの。マリオ・ベリーニの初期の作品であるアマンタシリーズのひとつです。背面のプラスチックとファブリックのコーデュロイの対比が面白く、ブラウンの色味がラウンジチェアと同色でバランスもいいなと思い即決でした。

USMハラーのキャビネット

オーディオ機器をディスプレイしているのは、ずっと憧れだった〈USMハラー〉のキャビネット。引っ越す前と引っ越した後でひとつずつオーダーで注文しました。

好きなインテリアショップはありますか?

いろんなところに行きますが、なかでも清澄白河にあるギャラリー〈stoop〉さんは好きです。セレクトが良いのと、店主さんがものの背景を教えてくれるので勉強になります。

もの選びの際に心がけていることはありますか?

古着もそうですが、買い逃したら同じものは買えないので、良いと思ったものはなるべく早く決断します。最近はミニマリストになろうと、選ぶものはより厳選するようになりました。

ミニマリストに興味が湧いたきっかけは?

妥協せず、良い家具を身の回りに置くようになってから、自然と物欲が無くなってきたのだと思います。どんどん上を求めるのではなく、それよりも今持っている家具を大切に、良いものを長く使い続けたいというマインドに変わってきました。ミニマリストというのも、その延長線にあって。持っているものを手放してみると、『これ失敗したな〜』と勉強することもたくさんありました。“大切なものをより大切にする”、そのミニマリストマインドはものに限らず、時間の使い方などにおいても好きだなと思います。

名作家具とポップな雑貨がセンスよくミックスされた、アパレルディレクター・今関龍介さんの住まい。後編では、個性豊かな椅子のコレクションやお気に入りの雑貨、香水、アクセサリーなど身につけているものまで、今関さんの偏愛コレクションを深掘りします。ぜひお楽しみに!

感性を刺激する、
家を小さなギャラリーに

家のあちらこちらにアートが飾られていますね。

家づくりをするにあたり、“感性を刺激する空間“はひとつテーマにしました。夫婦ともにアートが好きなので、部屋の各所にアートを飾っています。

ワークスペースの絵

どんなアートが好きですか?

明確にはないですが、抽象画は好きかもしれません。いろんな解釈ができるし、インテリアにも馴染みやすい気がします。玄関に飾っている高屋永遠さんの作品は初めてアーティストさんから直接買わせてもらった思い出深いアート。前職時代、会社で行われていた若手アーティストの作品を集めたイベントで購入しました。『A woman』というタイトルで、遠くから見ると女性像を表しているのがわかります。アートは旅先や知り合いから購入することが多く、出会いも楽しみたいなと思っています。

玄関の絵

ワークスペースに飾っているアート作品もお気に入りです。こちらはスペインに暮らしている日本人アーティストの作品。黄色はアジア人、白は白人、黒は黒人、茶色はラテン系を表していて、人種は違えど皆同じ赤い血が流れているというメッセージが込められています。見た目もポップで家の雰囲気にすんなり馴染みました。

ワークスペースの絵

アートを飾るとき、心がけていることはありますか?

アートは実際に購入しているのですが、気分としては“大切な作品をお預かりしているような感覚”。なので、なるべく直射日光が当たらない場所に飾るようにしています。今まで美術館やギャラリーで観ていたアートを家で楽しめるというのは、また違った感じ方があります。

旅で鍛えられた、
カラフルな色彩感覚

海外のインテリアも上手に取り入れている印象ですが、どうやってその感覚を養っていますか?

Pinterestで海外のインテリアを見たり、たまに行く海外旅行も良いインスピレーションを得る機会になっています。旅行中は荷物を増やしたくないので、買い物は小物程度ですが、ホテルの内装や街並みから、『こういうアイディアがあるんだ!』と刺激を受けることも多いです。

なにかご自宅で実践しているアイディアはありますか?

今、本棚があるスペースは、もともとクローゼットにする案も出ていたのですが、海外のようにカラフルでインパクトのある本棚にしたら良いアクセントになるかもと思い、実践してみました。我が家は洋書も和書もどちらも読むのですが、洋書の方が圧倒的にカラフル。そのため、目線の高さにくる上の段は洋書、下の段には和書と分けてしまうことにしました。

寝室の一角にある本棚

たくさんの色が使われていながら、どこかすっきりとした印象のあるMiwakoさん宅。色使いで心がけていることはありますか?

かっちり決めているわけではないですが、ポイントカラーは意識するようにしています。例えば、リビングはアクセントチェア、花瓶、クッション、雑誌などをオレンジの色味でリンクさせています。

自室とベッドルームはピンクをポイントに。フォトグラファーの友人から譲ってもらった写真作品と、高屋永遠さんの桜の情景を描いた作品がたまたまピンクだったので、このエリアはアートを軸にポイントカラーを決めました。ピンクは眺めているだけで癒されるカラーで、結果的にプライベートな空間にぴったりでした。また、ベッドの奥のアクセントウォールはピンクと相性のいいグリーンをチョイス。飽きがきたら、そのときは塗り替えようと気軽な気持ちで今の色を楽しんでいます。

自室から見た寝室

大人になってから始めた趣味

趣味はありますか?

大人になってからピアノを始めました。もともとピアノは聞くのが好きでいつか弾けるようになりたいなと思い、今習い始めて7年目になります。週1回ほど先生が来て教えてくださっています。

インテリアとしても素敵なピアノですね。

ヤフオクで見つけた70年代の古いピアノ。販売していた埼玉のピアノ店までわざわざ行って現物を見てから購入を決めた思い出の品です。家族経営のお店で、古いものを大切にリサイクルして販売している姿勢に心を打たれました。また、ピアノとマンションが同じ70年代生まれなので、そのあたりの親和性も気に入っているところ。古いピアノですが、サイレント機能をつけたので、電子ピアノとして使うこともでき、夜でもヘッドホンをつけて弾くことができます。

ダイニングの一角にあるピアノ

ピアノの隣にあるエリアは?

小さなバーエリアです。バーテーブルはアメリカのアウトレット通販サイトで見つけて個人輸入しました。お酒は主に夫の趣味。ジンは小規模生産でラベルまで凝っているものも多く、国内外問わずご当地ものを集めて楽しんでいます。

ピアノの隣の小さなバーエリア

「自分の家は完璧さを求めるよりも、偶然の出会いが積み重なった空間にしたい」、そう教えてくれたMiwakoさん。住む人の生き様や趣味趣向が図らずも滲み出る、そんな住まいにこそ、真の意味での豊かな暮らしは存在するもの。さまざまなスタイルをミックスして自分らしく楽しむ、それこそが自宅インテリアの醍醐味とも言えるでしょう。

前編では、物件探しのエピソードやリノベーションのこだわり、インテリアの好みやお気に入りの家具について、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

管理が行き届いた、
築約50年の中古マンションを購入

賃貸から分譲へ引っ越そうと思ったのはなぜですか?

もともとインテリアは好きで、賃貸の頃から貼ってはがせる壁紙を活用するなど、いろいろ工夫しながら暮らしていたのですが、やはりできることに限界があって。『いつかは自分たちで1から考えたインテリアに囲まれて暮らしたい』、『リノベーションを経験してみたい』そんな思いで中古マンションの購入を決めました。

物件探しで今の家に決めた理由を教えてください。

一番は環境の良さ。駅からアクセスが良い上に、緑もあって眺望の抜けもある。そして、地盤が強い高台なので水害や地震でもリスクが抑えられると思いました。また、リノベーションすることが最大の目的だったので、リノベーションがしやすい物件であることも重要視したポイント。お風呂やトイレの位置を変更したかったので、配管の位置なども事前にチェックしました

築年数は約50年。今まで古くて困ったことはありましたか?

実は、たまたまこのマンションの別の部屋に賃貸で4年ほど住んでいたことがあり、生活上問題なく暮らせることはわかっていたので特に不安を感じることはありませんでした。古い物件ですが、水道や電気などライフラインに関する設備はしっかり大規模修繕されていて、この部屋もスケルトンにして水道管やガス管などすべて古いものは取り替えたので、特に不便を感じたことはありません。

古いものと新しいものが共存する、
『パリのアパルトマン』をイメージして

リノベーションのテーマを教えてください。

『パリのアパルトマン』をリノベーションのイメージとしました。パリはこれまで出張やプライベートで何度も訪れたことがあり、旅先の中でも好きな都市。古いものを大事にしながら、新しいものを取り入れる、そんな文化が根付いています。我が家も築約50年のマンションなので、無理に若作りをするのではなく、古いものと新しいものが自然と共存する空間を作りたいと思いました。

リノベーションで特にこだわったポイントを教えてください。

床と窓周り

理想のイメージに近づけるために、床と窓周りは特にこだわりました。面積が広い分、ごまかしが効かない、かつ賃貸では変更が難しい箇所なので、この部分の工夫は、中古マンションのリノベーションの醍醐味だと感じました。リビングの床はヘリンボーン、廊下はパーケットなど、ヨーロッパの古い家でよく見られるフローリングを参考にしています。

ダイニング

リビングダイニングの窓周りは、窓から見える緑の景色を生かしつつ、窓のアルミサッシを隠すために、ウッドシャッターを取り入れました。ウッドシャッターは横にサッとスライドするだけで窓の開閉ができるので、ブラインドよりも扱いやすいなという印象です。

ダイニングの窓

ベッドルームは、中途半端な窓のサイズをカバーするためにあえて天井に近い位置からカーテンを取り付けるように工夫しました。

寝室の窓

廊下の照明

廊下の照明はデザイナーさんにお任せだったのですが、明るさを適度に抑えたスポットライトのような照明で、部屋の雰囲気がぐっと洗練されました。光の陰影をつけると、空間に奥行きが生まれるのだと学びました。

廊下

ベッドルームの壁

アール壁のアクセントやモールディングをあしらった壁など、日本の賃貸マンションでは実現するのが難しい要素を随所に取り入れています。

寝室

バスルーム

我が家の大きなリノベーションポイントのひとつが、もともとキッチンだったスペースにバスルームを作ったこと。バスタブとシャワーブースが別にある、海外のホテルのようなデザインにしました。『掃除はしやすいの?』とよく聞かれるのですが、床は石なのでガシガシブラシで洗えるし、バスタブもシンプルな形状なので掃除がしやすく、むしろユニットバスよりもカビが発生しにくい印象です。また窓があるおかげで風通しが良いことも、カビが発生しにくい理由かなと思います。

バスルーム

偶然の出会いも受け入れる、
おおらかで自由なミックススタイル

インテリアはどんなものが好きですか?

シンプルすぎない、レトロモダン&コンテンポラリーなデザインに魅かれます。「古いものと新しいものの融合」は家作りのテーマにもなっていて、例えば年代物のピアノや箪笥、椅子などを置く一方で、若手作家のアートを飾ったり、コンテンポラリーの家具を置いたり。たまたま旅で見つけたものを持って帰ってきても調和するぐらい“余裕”がある家で気楽に住みたいと、ミックススタイルに行き着きました。

思い入れのある、気に入っている家具を教えてください。

桐箪笥

富山でアップサイクル家具をつくっている〈YES〉のもの。嫁入り道具として約50年前に作られた家具に、モダンなデザインを施して現代に再生させているというコンセプト、ストーリーに共感しました。

自室

自室は桐箪笥を軸に、和のテイストを取り入れて禅を感じる空間に。和紙のライトは〈イサム・ノグチ〉のakariシリーズの初期モデル。この夏、ニューヨークのノグチ美術館へ行った際に購入しました。クローゼットは扉ではなくカーテンにすることで、部屋全体がやわらかな雰囲気になるようにしています。

自室のクローゼット

リビングのコーヒーテーブルとアクセントチェア

なかなか気に入る家具が日本にないのが最大の悩みで、家の中の家具はいくつか、海外から個人輸入しています。その中でも、リビングに置いている〈CB2〉のコーヒーテーブルと〈ALLMODERN〉のアクセントチェアがお気に入りです。このアクセントチェアは、日本だとあまり聞き馴染みのない『バレルチェア』と呼ばれる形状のものです。

リビング

家具を選ぶ基準はありますか?

家具を選ぶ基準は、「デザインそのものが好きか」、「部屋に調和しているか」、「価格に納得できるか」この3つを軸に考えます。

家具の配置で心がけていることはありますか?

『ここでどんな時間を過ごしたいか』、それが家具の配置にも表れるように思います。例えば、ワークデスクは壁付けするのではなく、あえて外の景色が見える位置に配置。パソコン画面に疲れたら、目を窓の外に移してリラックスできるように考えました。

リビングの一角にあるワークスペース

家具はどんなところで買うことが多いですか?

外国にしかないデザインで欲しいものがあったら、個人輸入で買うことも多いです。なかなか気に入るものが見つからないときは、ひとまず〈IKEA〉の家具をリメイクして使ったりもします。DIY文化が根付いているアメリカにはIKEA家具のリメイクパーツが売っているお店があるんです。ワークスペースのサイドボードも、ベースはIKEAで、パーツ売りされていたものを組み合わせてアレンジしています。

理想を詰め込んだ中古マンションで、国籍、年代、ジャンル問わず、好きなものを自由にミックスしながら自分らしく暮らしを楽しむ、Miwakoさんのコンパクトライフ。後編では、自分らしく暮らしを楽しむMiwakoさんの趣味や好きなものについて、詳しく掘り下げます。ぜひお楽しみに!

植物に溢れた、
自然光が気持ちよく差し込む寝室

寝室は植物がたくさんある気持ちのいい空間ですね。

家のなかで一番日差しの入る部屋でお気に入りの場所です。植物はどんどん増えていき、家全体だと30鉢ほどでしょうか。できるだけ日光浴させたくて、日当たりのいい寝室にたくさん置いています。ベッド横の出窓に置いている植物はちょうどベッドで横になったとき、外の視線の干渉を防げてちょうどいいです。

寝室に飾っている大きなアート作品について教えてください。

イギリスのアーティスト、デイヴィッド・ホックニーのポスターです。我が家では、寝室のほか、ダイニング、玄関にもホックニーの作品を飾っています。アートは夫任せなのですが私もお気に入り。なかなか手に入らないみたいで、ネットでやっとの思いで手に入れたものみたいです。

寝室のシンボルにもなっている、サークルラックについて教えてください。

〈JOURNAL STANDARD FURNITURE〉のもので、我が家の家具のなかでは一番の古株。後々知ったのですが、偶然にも夫の友人が企画した商品で、ヴィンテージのサークルラックから型を取って再現されたものらしいです。かかっているのはほとんど夫の服で、アメリカンのヴィンテージをもとに作られた服も多く、しっくり溶け込みます。

クローゼットの扉も部屋の統一感を引き立たせていますね。

海外の家でよくみる、ルーバー扉を造作で作ってもらいました。海外のホラー映画で子どもが隠れて隙間を覗く、あの扉です(笑)。

大人数でも快適に過ごせる、
キッチンダイニング

キッチン作りで心がけたことを教えてください。

キッチンはシンプルなオールステンレスのキッチン台を入れて、その周りを腰壁で造作してもらいました。木の色味は他の家具と合わせて深めの色をチョイス。吊り戸棚も造作で作ってもらったもので、取っ手は寝室のクローゼットともリンク。私自身、料理は苦手なのですが、家に人を呼ぶのは好きで(笑)。友人がこのキッチンで手料理を振る舞ってくれることもよくあります。オープンキッチンのため、料理をしている人が孤立することなく話に入りやすいのもうれしいポイントです。

ダイニングテーブルはどんなものを選びましたか?

私たち夫妻は共通の友人が多く、家に人を呼ぶときは大体大人数。それでずっと8人掛けできるテーブルを探していたのですが、なかなか見つからなくて…。前まで来客時は4人掛けのダイニングテーブルに、予備で持っていた4人掛けのテーブルをつなげて8人掛けにしていたのですが、天板の素材も違うし、高さもズレていて、チグハグな感じがずっと気になっていました。

そしてやっと出会ったこのダイニングテーブルは、なんとMAX10人掛け。拡張したときに2mを超えるものだと、どうしても天板は外して別保管するようなデザインが多いなか、これは2枚の天板を格納できる仕組み。2人暮らしなので、通常時は4人掛けでコンパクトに使えるところも気に入っています。

すっきり整えることが難しいキッチン。もの選びで工夫していることはありますか?

1軍だけを残す、そもそもあまり物を増やさないように気をつけています。買うとしても、出しておいても気にならないステンレスや木の素材のものをなるべく買うようにしています。

一方で、海外映画に出てくる子供部屋みたいに、散らかっていてもなんだか可愛く見える、そんな空間も好きで。海外パッケージのおもちゃやポスターは、なんだかゴチャゴチャしていても可愛いですよね。我が家の冷蔵庫は、まさにそんなイメージ。チラシは新婚旅行でアメリカに行ったときにスーパーでもらったもので、マグネットは下北沢にある〈Sounds Good〉というアンティークのおもちゃ屋さんで見つけたものが多いです。

とことんインドア派の家時間

今の家に引っ越してきてから、ライフスタイルとして変わったことを教えてください。

愛犬のフレッドを家族に迎え入れたこと。大きな公園が近くにあったり、犬を飼っている人やペット同伴可能な店も周りに多く、犬を飼うのに適した街だなと日々感じています。私は生粋のインドア派なのですが、散歩で朝と夜それぞれ1時間は外に出るようになって、少し健康的になりましたね(笑)。

犬を飼い始めてから、家のインテリアに変化はありましたか?

家具の取っ手がかじられていたり、引っ掻いた爪跡が壁に残っていたり、細かいことはいろいろありますが、可愛さにかまけて許してしまいます(笑)。あとは、植物が植わっている土を掘り起こすのが好きみたいで、手が届かないように鉢の置く位置を少し高くするなどの工夫はしています。

日々の暮らしの中で、どんな時間が好きですか?

フレッドとダラダラしながら、アニメを観たり、漫画を読んだり、ゲームをして過ごす時間が好きです。あとは、友達を呼んでボードゲームをしたり、何気ない毎日の暮らしを身近な友人たちと楽しんでいます。夏は例年家に引きこもりがちなので、趣味の編み物を再開し、冬に向けて大作を作ってみようかなと計画中です。

仲の良い友人たちと遊ぶとき、誰かの家を選ぶ最大のメリットは、気張らずくつろげること。どこか懐かしさを感じるミッドセンチュリーインテリアと、たくさんの植物、shimadaさん夫妻の好きなものが詰まったこの家は、ホストにとってだけではなく、ゲストにとっても居心地のいい、心落ち着く空間でした。

前編では、若くして家を買おうと決めた理由や、リノベーションのポイント、家づくりのテーマ、インテリアの好みやこだわりについて、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください!

思い出の詰まった家具と過ごす、
いつものまったりタイム

日々の暮らしの中で特に好きな時間を教えてください。

コーヒーを淹れて、外の景色を眺めながらまったりする時間です。カフェを巡るのが好きで、おいしい豆を見つけたらテイクアウトして、家で挽きたてを淹れて飲むのが最近の楽しみ。マグカップも気分が上がるものをチョイスします。

あとは、リビングのソファで横になりながら、ごろごろテレビを観る時間も好きです。ソファはいろんな家具メーカーが集まって開催する合同セールで見つけたもの。もともと肘置きはついていなかったのですが、〈無印良品〉の椅子で別売りされていたパーツをセルフで取り付けてみました。サイズもジャストフィットで、さらに愛着が沸きましたね。

ダイニングテーブルはちょっと変わったデザインですね。

友人を家に招くことも多いので、人数が増えても座りやすい丸いテーブルを探していて、みつけたのがこの〈ハーマンミラー〉のヴィンテージのダイニングテーブルでした。天板はまんまるではなく、直線も取り入れたデザインで壁付けしやすく、キャスターがついているのもうれしいポイント。この家に引っ越す前に見つけて、取り置きができなかったので、一旦前の家へ届けてもらったのですが、サイズが大きすぎて搬入できず…。その後、今の家でも入らなくて、結局解体して搬入したという苦労の思い出があります(笑)

10年越しのパートナー、
愛猫・チョキとの暮らし

愛猫・チョキちゃんとの思い出を教えてください。

チョキとは大学生の頃から一緒に住み始めて、もう11年の仲。特に思い出に残っているのは、手術のとき。術後、まだ麻酔が残っていて上手に歩けない状態でも、必死で足を引きずりながら僕のもとへ寄り添いにくる姿をみて、チョキにとっても僕はかけがえのない家族なのだと改めて実感。今は11歳のおばあちゃん猫ですが、家にいるときはいつも隣に。僕の大切なパートナーです。

家づくりの際、猫が快適に暮らせるように工夫したことはありますか?

リビングの壁に取り付けた白い棚は、ドアを閉め切っていてもチョキがリビングと寝室を行き来できるように作った階段。通路として作ったのですが、キャットタワーとしても楽しんでくれています。

コンパクトなお家だと確保するのが難しい、猫用のトイレやごはんスペース。どこに設けていますか?

キッチンの小さなパントリー棚の一番下に、猫のトイレと自動給餌器を置いています。パントリー棚は戸をつけなかったので、ロールカーテンで目隠ししているのですが、ちょうど短めなので上部の収納部分は隠しつつ、下部の猫エリアは猫が通れる高さを確保できました。奥まった場所に置いているので、インテリアを邪魔することもありません。また、トイレと食事スペースが隣り合わせにならないよう、置き場所は少し配慮しています。

服好き必見!
ファッションプレスならではの収納事情

コンパクト物件で暮らす上でのスペースづくりの工夫を教えてください。

仕事柄どうしても増えてしまう雑誌類はテレビ台の下に積み上げたり、その隣にある〈BEAMS〉のトランクにはDIY道具を収納したり。我が家は備え付けの収納が少ないので、見せても様になる収納方法や収納道具を考えるようにしています。

あと、コンパクトな洗面所で活躍しているのが、収納も兼ね備える〈DULTON〉のミラーキャビネット。上に設置しているライトは〈IKEA〉のものでちょうどぴったりサイズでした。

ファッションブランドのプレスをしているKevinさん。たくさんある服はどのように収納していますか?

我が家では、寝室の一部を〈IKEA〉のブラインドで仕切って、ウォークインクローゼットとして活用しています。アパレルショップのストックルームのように、収納するものに合わせて棚の高さを変えられる棚柱と棚板だけのシンプルな造りです。

入り切らないTシャツ類は、寝室のベッドサイドに。アパレルショップのディスプレイのように積み重ねて収納しています。見える場所なので、できるだけきれいに畳むように意識。ちなみに棚は上京した頃から使っている〈ニトリ〉のものです。

普段玄関に置いているというハンカチとアクセサリーの収納容器もかわいいですね!

夏場は特に必須なハンカチ。忘れないように玄関に置くようにしています。ハンカチをしまっている青い容器は〈MoMA Design Store〉で見つけた〈omar〉というブランドのボウル。アクセサリーを収納している小物入れはイタリアのデザインブランド〈REXITE〉のもの。このオレンジカラーは、パリの〈ポンピドゥー・センター〉の限定カラーです。

ファッションとインテリアの好みに共通点はありますか?

ファッションでもインテリアでも、統一感を極めるよりは、どこか一個外してみたり。ファッションでいえば、全身ブランドもので固めるのではなく、ワンアイテムだけポイントで古着を取り入れたり、そんなスタイルが好きです。インテリアショップもアパレルショップも行きつけのお店はあまりなくて、そのときどきの出会いを楽しみたいと思っています。

いろんな文化や人と触れ合うことが好きというKevinさんの住まいは、ジャンルレスでのびのびとしていて、飾らずどこか自然体。コンパクトながらどんなものをも受け入れる、懐の深さが居心地の良さにつながっている、そんな素敵な住まいでした。

前編では、部屋探しの基準や家を購入した理由、家づくりのテーマ、インテリアやアートの好みについても詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

見えない努力も惜しまない、
用地仕入れの仕事とは?

土地を仕入れるために、まず何から始めますか?

山地:さまざまなネットワークを駆使して、用地の情報を収集します。用地はひとつとして同じものがないため、良い土地が出ればそのほとんどが争奪戦に。買い手はなんとかして売っていただく立場なのです。土地を持っている地権者様や、不動産仲介会社、法人のお客様を抱える信託銀行などへ足繁く通い、関係性を深めていく。そして、『この人になら任せられる』と信頼してもらい、はじめて売却の可能性がある土地の情報を教えてもらえます。毎年何千もの情報が集まりますが、最終的に土地を取得するまでに至るのはわずか1%ほど。それでも、土地の情報が出たときは、真っ先に自分たちのことを思い出してもらえるように、営業活動を続ける。なかなか泥臭い、足で稼ぐ仕事です。良い土地情報をいち早く入手できるかどうかは、取引先との信頼関係次第といっても過言ではありません。

土地の情報を取得するだけでも、なかなか根気がいりますね。情報を仕入れた後は、どのような流れで進めていくのでしょうか?

磯田:実際に現地へ訪ねて周辺環境を調査し、時には他部署のメンバーと協議をしながらその土地の最適な用途を検討します。決定したら、設計会社と協力して敷地内にどのような建物が建てられるか、商品性を意識しながらプランを作成します。その後、建築費の見積やマーケット調査を行い、どれだけの利益が上げられるかを算出します。結果、土地情報を取得してから早ければ1週間、遅くとも3週間〜1ヶ月ほどで、ようやく土地代が提示できます。最終的に地権者様の合意が得ることができれば土地取得完了です。

山地:用地の仕入れは億単位の金額が動くため、じっくり時間をかけて検討したいところですが、当然良い土地は何十社とほかの不動産業者も狙っている場合が多く、悩んでいる間に他の会社で決まってしまうことも往々にしてあります。また、お断りする場合も早くかつ丁寧に返答しなければ、取引先との信用問題に関わってきます。用地取得は急ぎの決断を迫られる場面が多く、常にプレッシャーとの戦い。普段から同業者同士でマンションの販売状況について情報交換をしたり、建築費の動向を調べたり、金融機関の方から今後の経済情勢等についてヒアリングしたりすることで情報の精度を高め、より円滑に土地取得の意思決定ができるようにしています。

Brilliaの土地を仕入れるまでの
ドラマチックなストーリー

Brillia用地の仕入れにおいて、思い出深いエピソードを教えてください。

Brillia Tower 池袋 West

山地:Brillia Tower 池袋 Westは近年池袋エリアにて開発実績がある、当社を含めた3社による共同事業で、初めて情報を取得してから約2年かけて土地を取得しました。取得した土地上には稼働中のオフィスビルが建っており、まだテナントが入っている状態での引き渡しだったので、新入社員時代に培った経験を活かし、旧所有者様の協力のもと、テナント退去までの期間、テナントとの退去打ち合わせ等のビルの運営管理を自ら担当。また、解体直前には地元の皆様向けに建物を開放し、感謝とお別れを告げる「棟下ろし式」も開催。築40年近いレンガ調の建物で、地元の人に長く愛されてきたシンボリックな場所でした。旧所有者様にもお声がけし建物のプレートや、装飾品などを展示。旧所有者様や参加してくださった地元の方々は、当日展示していた建物の歴史を記した書籍や写真を眺めながらお酒を飲んで思い出話に花を咲かせたり、解体前の壁にビルへのメッセージを書いたり。最後には、地元の住職さんに祈祷を捧げてもらい、みんなで解体を見守りました。棟下ろし式は当社としても初めての試みでしたが、『私たちも必ず良いものを作ろう』という気持ちが高まりました。

Brillia 亀戸

山地:『自分の敷地だけではなく、周辺の土地を巻き込んでの再開発を東京建物に先導してほしい。過去何度か試みたものの実現できず、所有者たちは徐々に高齢化しており、これが最後のチャンスだと思っている』、そう地権者様からの熱い思いをお聞きし、力になりたいと共に走り出したのがBrillia 亀戸。周辺は古い建物が多く、建て替えは防災や街の景観、資産性から見ても必要。ですが、マンションを建設するにしては各々の土地が小さく、さらに権利関係が複雑であったため、誰か旗振り役がいないとなかなか共同での建て替えができない、そんな状況でした。地権者様のご協力のもと、周辺の土地を持つ他の地権者様たちと何度も面談し、各々のご要望をお伺いの上、売買条件をご提示。通常今回のような権利調整の案件については、専門の提携先に依頼するケースが多いのですが、ご依頼いただいた地権者様の熱意に感銘を受け、上司に直談判し私自らで取り組むことに。お話をいただいてから約2年半かけて全5件の地権者様から共同事業への合意をいただきました。建物完成後、等価交換方式(売買代金で完成後の住宅を取得する方式)にて住宅を取得いただいた地権者様から「この案件は君がいなければ出来なかった。まさかこのような形でBrilliaに住めるとは思わなかったよ。ありがとう。」と言葉をかけていただきました。用地取得に携わってきて本当に良かったと思えた瞬間でした。

Brillia 大島 Parkside

中村(グループリーダー):地権者様はもともと工場を営んでいましたが、工場の閉鎖に伴い等価交換方式によるマンションへの建替えを決意。元従業員の方が所有していた隣接地も含めて、事業化を希望されていました。競合他社は奥まっていて活用しづらい隣接地は不要との見解でしたが、当社はうまくプランニングできたため、一体での事業化を提案し事業パートナーに選定。その後、別の隣地所有者様も紹介してもらい、さらに用地を拡大できました。敷地内には、地権者様も思い入れのあった美しい桜の木が植わっていたのですが、プランニングの関係上どうしても伐採しなければならず…。どうにか生かせないかと検討して、マンションの共有ラウンジに伐採した桜の木で作ったオブジェを飾ることに。マンションが完成してオブジェをご覧になった地権者様は、大変喜んでくださいました。

たくさんの人との出会いが、
いい仕事に繋がる

業務内容が幅広く、苦労も多い用地取得の仕事。どんなところにやりがいを感じていますか?

磯田:ゼロからイチを創り出せるところです。デベロッパーの事業は長期にわたるものが多く、様々な部署、関係者が関わって創り上げていきます。用地取得はその根幹部分であり、1担当としてスケールの大きな事業の始まりを感じられるところは特に面白みを感じますね。またこの仕事は人と人との出会いも大きな醍醐味と感じます。取引先の方とはプライベート込みで仲良くさせてもらうことが多く、自分は今年の1月に子供が産まれたのですが、親しくさせてもらっている取引先の方からお祝いをいただいたり、育休中も子育てのアドバイスをしてくださったり。仕事以外のところでも気にかけてくださるのが、本当にうれしかったです。

山地:困難を乗り越えて買わせてもらった土地にBrilliaが建ち、そこにいくつもの明かりが灯り、幸せな生活を送っている方々が存在することは、この上ない幸せです。また、個性的で経験豊富な取引先の方々と日々巡り合うことができるのも大きな楽しみ。もちろん“土地を買う”という醍醐味はあるのですが、それと同じぐらい取引先の皆様から人生勉強をさせてもらっていて。『この人に信頼してもらえるためには、何を頑張ればよいだろうか』と、そこに興味が湧いたり。信頼できる人と一つのものを成し遂げること、それ自体が楽しい仕事だなと思います。尊敬する先輩がよく、「土地を追うな、人を追え」と仰ってましたが、長く用地取得に携わる中で、この言葉の意味が理解できるようになってきました。ちなみにBrillia Tower池袋 Westの土地情報をくださったのは、日頃から師と仰ぐほどお世話になっている仲介会社の方で、出会って5年目にして初めての取引でした。一生忘れることのない案件になりました。

Brilliaを拠点に、
街をブラッシュアップしていきたい。

用地取得の仕事を通して、今後どんなことに挑戦してみたいですか?

磯田:私は昨年の1月に異動してきたばかりで、まだまだ成し遂げられていないことがたくさんあります。ひとつ大きな目標にしているのは、Brillia Tower池袋 Westのような大規模な用地を自らのルートで仕入れること。相当難しいとは思うのですが、達成感が得られる仕事にどんどんチャレンジしていきたいです。そのためにも、権利関係が複雑で他社が手を出さないような土地にもあえてチャレンジするなど、自分の力を養える仕事にも積極的に取り組みたいです。

山地:新たに誕生する建物が、その街や街に住む方々にとって良い変化へのきっかけとなるようなプロジェクトに携わりたいです。そして、より多くの成功体験を会社の若い社員に伝えていきたいです。用地取得は、なかなか結果に結びつきにくい地道な仕事ですが、当社が事業を継続していくためにはなくてはならないはじめの第一歩。東京建物が創立してから120年超、先輩たちが大切に育んできた取引先様との関係性やノウハウがあるからこそ、自分たちも今恵まれた環境で土地取得ができている。その先輩から受け継いだタスキを私たちの代で途切れさせてはならない。Brilliaブランドの更なる発展のためにも、社内の若い人に『こういう仕事がしたい!』と夢を持ってもらうためにも、様々な人達と関係を深め、より良い土地を追い求めていきたいです。

ただ売られている土地を買うのではなく、ここぞという良い土地を探し仕入れてきた、Brilliaの用地取得。今Brilliaマンションがあるのは、紛れもなく汗水流して地道に信頼を築き上げてきた、住宅情報開発部の苦労があったから。次はどの街にBrilliaが建ち、どんな新しい風を吹き込んでくれるのか、楽しみになる取材でした!

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