INTERVIEW

好きが息づく、余白のある暮らし
【春日彩衣子さんのコンパクトライフ 後編】

部屋の一角を小さなギャラリーにしてみる。お気に入りの器や道具で、料理や食事を楽しむ。音楽や映像と過ごす時間に、さりげなく心を傾ける。雑誌編集者・春日彩衣子さんの暮らしには、好きなものがいつもそっと寄り添っています。後編では、ものを飾る楽しみ、使うものを選ぶ視点、そして休日の過ごし方から見えてくる、暮らしとの向き合い方をたどります。

最近の“とっておき”を見立てて遊ぶ

自宅の中で、特に気に入っている場所を教えてください。

階段の踊り場と、リビングの一角にあるギャラリースペースは、私たちらしくて特に好きな場所です。どちらもギャラリーというにはささやかですが、好きな作家さんの作品を飾って愛でています。そのときどきの“一軍”を厳選して飾っていますが、限られたスペースゆえ、日々なにを飾るか苦悩しています…。

現在、それぞれのギャラリースペースにはどんなものを飾っていますか?

階段の踊り場
玄関を入ってすぐ、目の前にあるのが、この踊り場です。壁には、写真家・吉松伸太郎さんの作品を飾っています。〈PACIFIC FURNITURE SERVICE〉のフレームに合わせてプリントしてもらい、タペストリーのように吊るしています。

この作品を照らしているのが、〈インゴ・マウラー〉の照明。赤いコードにチューブのような蛍光灯という、わけがわからないデザインが大好きです(笑)。〈studioNOI〉という販売店向けのショールームまで現物を見に行き、「これだ!」と即決。この家に住み始めて1年ぐらい経ってからの出会いでしたが、玄関からのファーストビューにふさわしい一点になりました。

そしてここには、最近のイチ推し、伊勢崎陽太郎さんの作品も飾っています。多治見の陶磁器意匠研究所の卒業制作展で出会いました。備前焼の人間国宝である祖父や父をもち、貴重な作品に囲まれて育ったという背景を持ちながらも、多治見へ移り、現代的なアプローチで作陶をされている作家さんです。

そんな彼が幼少期に初めてご自身で手に入れた器は、一番くじで偶然当たったアニメのマグカップで、それに特別な愛着を持っていたというお話がとても印象的で。その記憶をもとに、AIで生成したアニメ画像を転写して焼き上げたというのが、今、我が家に飾っているこの一作。作品の背景を知ってから、より深く惹かれるようになりました。

リビングのギャラリースペース
リノベーション前はもともと押し入れだったリビングスペースの一角をギャラリースペースとして楽しんでいます。なかでも〈FEST Amsterdam〉のミラーテーブルの上は特別なステージです。

今は最近仲間入りした故金あかりさんの壺と、野口寛斉さんの花器、スリップウェアのような模様を木で表現した石黒雄大さんの器を飾っています。

料理を日々のエンタメに

日々の暮らしの中で、夫妻の好きな時間はいつですか?

夫妻で一緒にご飯を作る時間が好きです。L字のコンパクトなキッチンで、効率よく作業していると、夫妻の息が合ってきているのを実感できます(笑)。

キッチンづくりのポイントを教えてください。

あまりスペースを取りすぎず、キッチンらしさを抑えたすっきりしたデザインにしたいとリクエストしました。そこで、設計士さんが提案してくれたのは、“面を広く取ること”。換気扇の出っ張りがなかったり、収納扉の取っ手をなくし面を広く取ることで、キッチン感を抑え、リビング・ダイニングとの一体感が出るように造作してもらいました。

キッチングッズも、素敵なものが多くて気になります。

我が家のキッチンはかなりコンパクトで、収納スペースも限られています。だからこそ、キッチン道具を選ぶときは“表に出して置けるデザインかどうか”が大きな基準になっています。

例えば、緑の水切りカゴは〈Magis〉のもの。海外製なので大きめですが、たっぷり置けて便利なんです。やかんはマイケル・グレイブスがアメリカの大手小売チェーン〈Target〉とのコラボでデザインしたもので、こちらもお気に入りです。

器のお気に入りも教えてください。

黒い器は、京都の〈Community Store TO SEE〉で購入した大澤哲哉さんの作品。白い器は、代々木上原の〈AELU〉で出会った、芳賀龍一さんの茶碗です。どちらも日々の食事を少し特別にしてくれる存在。盛りつけたい器が増えることで、料理が“やらなければいけない家事”から、“ちょっとしたエンタメ”に近づいてきました。

また、器のいくつかは飾っても楽しんでいて、なかでも髙仲健一さんの遊び心ある絵柄の作品はお気に入りです。

きちんと、ぐうたら。
どちらも大事

この家に引っ越してから、ライフスタイルにはどんな変化がありましたか?

家事や食事など、日々の暮らしを“きちんとしよう”という気持ちが自然と生まれました。朝にお茶を飲んでゆっくり過ごす時間が習慣になったのも、この家に住み始めてからです。家事をするにも空間に余裕が生まれて、さらに自分の好きなもので囲まれていることで、気持ちよく取り組めるようになりました。

……とは言っても、夫のほうが圧倒的に家事が得意できちんとしているので、甘えてしまっている部分も大きいです…。

お家での休日は、どのように過ごすのが好きですか?

エンタメが大好きなので、〈MARENCO〉にどかっと座って、大きなテレビでハロプロのライブ映像や恋愛リアリティショー、YouTubeなどを観る時間が至福です。また、寝室側にもテレビがあり、カーペットに寝転んでぐぅたら過ごす時間も気に入っています。
そして、もうひとつのお気に入りが日曜の午前中。ラジカセで小川紗良さんのラジオ「ACROSS THE SKY」を流しながら掃除をしたり、ごはんを食べたりするのが、なんとも心地よくて。『平和だな〜』としみじみ思える時間です。

飾るものは、そのときどきの気分で選ぶ。お気に入りの器や道具と過ごす日常を、ささやかに楽しむ。春日彩衣子さんの暮らしには、決めすぎずに生活を楽しむ、しなやかさがありました。
部屋にはあえて余白が多く残され、そこに“今”の気分を投げかけることで、空間は少しずつ変化していく。完成を目指すのではなく、変わっていける余地を残すこと。その姿勢にこそ、自分たちらしい住まいを長く楽しむヒントがあるのかもしれません。

前編では、物件選びの背景や間取りの工夫、家具のセレクトについてもご紹介しています。ぜひ前後編あわせてご覧ください。

抽象的な家具が光る、余白×彩りの住まい【春日彩衣子さんのコンパクトライフ 前編】

※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。

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