旅先での出会いと、心地いい家づくり
【細沼ちえさんのコンパクトライフ 後編】

人の手が通った、
大切に育てたいもの

インテリアはどんなものが好きですか?

気づけば、新品よりも歴史を刻んでいるものの方が圧倒的に多いです。我が家には人から譲り受けて使っているものもあります。

部屋全体

キッチンカウンター

例えば、キッチンの器を収納している作業台は、フリマサイトで手に入れたもの。前の持ち主さんはたしかデザイナーさんで、紙を保管するのに使っていたみたいです。

器のラインナップも個性豊かですね。

旅先のベトナムやモロッコで見つけた器や、日本の陶芸家・青木良太さんの作品、以前住んでいたマンションのエントランスにあった“ご自由にどうぞコーナー”でいただいたもの、実家から持ってきたものなど、来歴は本当に様々です。

旅の思い出を、
暮らしの一部に

部屋を見渡すと異国情緒溢れる雑貨が多いですね。

我が家には旅の思い出もたくさんあります。自分の感覚で選んでいるので、国はさまざまですが、私らしい物が集まってきます。今まで15カ国以上旅をしましたが、いつも誰かに誘われて行くことが多くて、未知の土地で、未知のものと出会う。それが楽しいんですよね。旅先で友達と買い物をしていると『これ買うの!?』とびっくりされることがよくあります(笑)。

旅で出会ったお気に入りを教えてください。

ラクダの水差し

乗り継ぎで立ち寄ったドバイの空港の、ザ・お土産ショップで見つけたもの。たくさん同じ商品が並んでいたのですが、1点1点しっかり吟味して、好みの子を持ち帰りました。

アクセサリートレー

フランスのニースで古着屋さんへ訪ねたとき、そこの店員さんにリコメンドしてもらったお店で買いました。片言の英語しか喋れない私に、地図を書いて説明してくれて、とっても親切にしてもらった思い出があります。

卵型のアロマウッド

奈良の奥地・天川村で出会ったもの。本来はアロマオイルを垂らして使うそうですが、我が家では素の木の香りのまま楽しんでいます。

とうもろこしの写真

アフリカのシエラレオネへ行ったときに撮った、大量の干しとうもろこしの写真。現地ではみんなガシガシ食べていて。私も挑戦しようとかじってみたのですが、歯が欠けるかと思うほど硬かったです(笑)。

2拠点生活が生んだ、
暮らしの変化

東京と香川の2拠点生活。始めてみていかがですか?

とっても悩みましたが、人生1度きり。思い切って始めてみました。いろんなことが当たり前ではなく、毎日が新鮮。日々小さな発見があるのが楽しいです。

キッチン

出汁がおいしい地域なので、削り節は香川の〈丸一倉庫〉という専門店で、削りたてを贅沢に購入させてもらっています。いりこ出汁を取ったあと、うるめと宗田かつおを1:2で入れると良い出汁が出るよ!と教えてもらって、東京の家でも出汁ライフを楽しんでいます。

家を空けている間、植物たちのお世話はどうしていますか?

水を薄く張った浴槽に置いておいたり、自動給水器で水をセットして出かけるようにしています。我が家にいるのは比較的、生命力の強い植物。帰ってくると新芽を出していることもあって、むしろ過保護になり過ぎず、ちょうどいい距離感なのかもしれません(笑)。

旅先で見つけたものや人から譲り受けたものなど、偶然の出会いを楽しむ細沼さん。ネットで簡単にものが手に入る時代に、何と出会えるかわからないワクワクする気持ちを忘れない。ものと出会ったときの体験は、いつか大切な思い出になるはずです。

前編では、この物件を選んだ理由やコンパクト物件でのレイアウトのポイント、DIYアイディアや休みの日の過ごし方について詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

窓と無垢の床が気持ちいい。
低重心のリラックス空間

今の物件に決めた理由を教えてください。

窓と無垢の床が気に入って、ここに決めました。部屋探しでは直感も大事だなと思っていて、はじめて家に入ったとき、心地いいと感じるかどうかも重視しました。家を探すときはエリアを決めず、物件重視で探すことが多いですね。

コンパクトな空間での部屋づくりで、心がけたポイントを教えてください。

部屋の主役を決めること。この家は窓が主役で、窓を楽しむために周りには景色を遮るものを置かないように心がけました。最初は、窓の前にダイニングテーブルを置こうかとも悩んだのですが、せっかくの窓が隠れてしまってはもったいないと、ローテーブルのみを置くことに。主役がたくさんありすぎると窮屈な印象になってしまうので、ほどよい余白は大切だなと思います。

リビング

たしかに天井が高く、空間が広々感じられますね。

我が家には、背の高い家具が一切ないんです。ベッドもマットレスを直置きだし、ソファやダイニングセットもありません。特別天井の高い家ではないのですが、すべてのインテリアの重心を下げることで広々感じられるのだと思います。地面に近い分、すぐごろごろしちゃうのは、無垢の床だからできること。畳と同じような感覚で裸足で過ごすのが気持ちのいい空間です。

ベッドスペース

窓際のディスプレイはどんなことを心がけて飾っていますか?

高低差がないとのっぺりした印象になるので、空間にリズムが出るようにDIYで出た端材や本、額縁のガラスなど、家にある物でバランス良くなるように飾っています。

窓際のディスプレイスペース

家のものを循環させて、
“ありもの”DIY

収納に関して、工夫していることはありますか?

収納家具は買わず、持っている板などを組み合わせて家のサイズに合った収納スペースをDIYしました。あと、我が家ではりんご箱とワイン箱が大活躍。これならば引っ越しのたびに部屋のサイズに合わないからと手放さずに済むし、運搬箱としても使えて便利です。

この家ではどんなものをDIYしましたか?

ローテーブル

DIYと呼んでいいものか悩みましたが(笑)、ローテーブルは〈IKEA〉で購入したスツールに板を乗せたもの。天板は、以前住んでいた家のウォークインクローゼットで使っていた板を60cm四方にカットし、ひと回り小さな板に打ちつけて繋げています。天板とスツールは接着しているわけではないので、注意して使うようにしています(笑)。

ウォールラック

以前住んでいた家のデスクスペースで使っていた有孔ボードに、ホームセンターでカットしてもらった木の板と2×4材を組み合わせたウォールラック。鏡を見ながら身支度をしたり、お香をつけたり。裏側では仕事用の撮影をしたり、LDKとベッドスペースを分ける、ちょうどいい仕切り壁としても機能しています。

ものへの愛着が生まれる、
おうちメンテナンス

お家での休日やオフの時間は、どのように過ごしていますか?

冬でも晴れている日は暖房いらずなほど暖かいので、窓辺でのんびり本を読んだり、無垢の床が気持ちいいのでごろごろしたり。あとは掃除をして、家のメンテナンスをしたりしています。

家のメンテナンスは具体的にどんなことをしていますか?

植物の剪定や、植え替えをしたり。あとは、床を水拭きしたり、レモンオイルで磨くことも定期的にします。床を磨くと気持ちも空間もすっきりするんです。

最近、趣味はありますか?

最近は『金継ぎ』。おばあちゃんになっても続けられる趣味がほしくて、やってみることにしました。ちょっとかけてしまった器も金継ぎするとかっこよく生まれ変わります。今は現代金継ぎに加え、漆を使う本格的な金継ぎも勉強中です。

メンテナンスやDIYで“長く使う”を楽しむ、細沼さんのコンパクトライフ。後編では、細沼さんの好きなものや、ものに宿る思い出、今年の夏から始めた2拠点生活の話など、詳しくご紹介します。ぜひ後編もお楽しみに!

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