コンパクト物件でも気分はゆったり
自宅の中で、特に気に入っている場所を教えてください。
リビングチェアに座って眺める部屋の景色が大好きです。台形の部屋は(遠近法)が効いていて、実際より広く見えるからなのかゆったりとした気分に。さらに、窓のように見立てている、友達が撮ってくれた野原の写真も目の保養になっています。
我が家は珍しい台形の間取り。真四角な家ではない分、工夫のしがいがあって面白いです。例えば、デットスペースが生まれた部屋の隅にはDIYで部屋と同じ台形の棚を作りました。ここには、今読んでいる本やこれから読む本を置いています。また、リビングダイニングは1日中日がたっぷり入るので、植物がぐんぐん育つのも嬉しいです。
37㎡とは思えないほど広々感じる岩佐さん宅。スペースづくりの工夫を教えてください。
圧迫感を感じないように低めの家具を取り入れたり、背の高いグリーンや壁にアートを飾るなどしながら、高いところにも視線を誘導するようにして、物を立体的にレイアウトするようにしています。床に物を置きすぎるのは部屋が狭く感じる要因になるので、壁面に収納を作るなどの工夫もしています。光の入るリビングダイニングは、モダンな家具を取り入れながら動的に過ごせる空間に。一方で、落ち着いた明るさの寝室は天井を高く感じながらのんびりできる静の空間。日本の古家具や〈無印良品〉の低めのベッドを選びました。床には素足で歩いても気持ちのいい大きめのジュートラグを敷いて、照明はイサム・ノグチのAKARIシリーズをチョイス。和紙から漏れる柔らかな光が、さらに安らぎを与えてくれます。
リビングチェアの横にあるライトは、ペンダントライトを壁に吊るして省スペースに。電気屋さんで購入したアタッチメントをつけて、コンセント仕様にしました。
収納に関して、工夫していることはありますか?
既製品の中で家に合う収納がなければ、DIYでぴったりサイズのものを作るようにしています。また、キッチンの一角、グラスやピッチャーなど美しいものは、飾りながら収納。気分によって手前のライトをつけるのですが、キラキラ光が反射して、それをうっとり眺める時間も好きです。逆に、食品パッケージや細々したものなど、自分がノイズと感じるものは、戸棚やカゴの中にしまうようにしています。
植物の飾り方にもひと工夫
岩佐さん宅には生き生きとした植物がたくさん!植物の飾り方も工夫があって素敵です。
シルバーメタルを育てている、ちょっと不思議なアクリルの鉢は〈boskke〉というブランドのもので、見た目もユニークな上に、機能性にも優れています。土を入れるスペースの底がテラコッタになっていて、そこから少しずつ植物が水を必要になった分だけ吸水する仕組み。水をあげすぎて枯らすこともなく、水やりの頻度も少なくて済みます。
ダイニングの棚上に飾っている花器は、ガラス作家・安藤里美さんの作品です。そこに合わせている透明のボックスシェルフはDIYで自作したもの。白い木板の四方に接着剤を塗って、そこにアクリル板をくっつけました。壁付けもできる仕様です。
植物を育てる上で心がけていることはありますか?
とにかくちゃんと水をあげることですね。表面の土が乾いたら、鉢の底から水が出るまでたっぷりあげます。土から老廃物を出してあげるイメージです。室内にある植物はベランダに出して水をあげています。なんだか植物も生き生きして見えるし、水をあげている自分もすごく気持ちがいいです。
小さな家でも取り入れやすい、壁を「飾る」アイディア
岩佐さんが実践している、壁を飾るおすすめのアイディアを教えてください。
板を使ってポスターを飾る
ポスターに合うちょうどいいフレームがなかったので、木の板を土台に飾ってみました。シートタイプのマグネットを板に貼り付けたら、もうひとつマグネットを使って上からポスターを固定。ポスターに穴が開かないのもうれしいポイント。木の板の小口だけ白く塗ることで、ちょっとかわいく仕上げてみました。
キッチンパネルを楽しむ
キッチンでは、張って剥がせてきちんと現状復帰ができる、強力な両面テープを重宝しています。ザルやまな板をかけているシルバーのフックも両面テープで固定。どこまで強度があるのか実験中です。また、大きなクリップをキッチンパネルに張って、そこに小さな写真を挟んで飾ってみたりもしています。クリップは北欧のブランド〈MOEBE〉のものです。両面テープを使うときは、まず壁にマスキングテープを貼ってから両面テープを貼ることで、壁を傷つけないようにしています。
壁に小さな飾り棚を設置
リビングに少しだけ飾れる小さな棚をDIYで作りました。ホームセンターで三日月型にカットしてもらった板を、穴が目立ちにくいピンで固定しています。
大きい布を飾る
大きい布をタペストリーとして壁に飾ってみると、それだけで部屋の雰囲気がガラッと変わりました。今飾っているのは、染織家・柚木沙弥郎さんによってデザインされた、スクリーンプリントの布。カメラのフィルムのネガをイメージしたテキスタイルで、〈Swimsuit Department〉で購入しました。布に穴を空けないように、クリップで布を挟んで虫ピンにひっかけて飾っています。
「いつも小さな実験を繰り返しながら家づくりを楽しんでいます」と教えてくれた、岩佐さん。家が狭いと感じるならば、壁を飾って目線を上に誘導してみたり、日々の生活動線を振り返って、家具を置く場所を見直してみたり。どうしたらもっと家が好きになれるのか、そう立ち止まって考えてみることで、住み慣れた家もまだまだ楽しくなるはずです。
前編では、家探しで重視したことや家づくりのテーマ、好きなインテリアについてもご紹介しています。前後編合わせて、ぜひご覧ください。
明るく風通しのいい、台形の住まい
今の物件に決めた理由を教えてください。
部屋探しでまず重視したことは、“光”と“風通し”です。光の入りづらい北向きの寝室にも明かり取り用の窓がついているおかげでリビングから少し光も入り、風も通ります。また、床も木の風合いを生かした木材を使っていて、とても気に入りました。内見したとき、『ここで仕事をするだろうな』、『ここにベッドを置きたいな』など、生活がリアルに思い描けたのも決め手になりましたね。
実際に住んでみて、今の家に引っ越して良かったなと思うことは何でしょうか?
我が家は珍しい台形の間取り。真四角な家ではない分、工夫のしがいがあって面白いです。例えば、デットスペースが生まれた部屋の隅にはDIYで部屋と同じ台形の棚を作りました。ここには、今読んでいる本やこれから読む本を置いています。また、リビングダイニングは1日中日がたっぷり入るので、植物がぐんぐん育つのも嬉しいです。
『動』と『静』で暮らしにメリハリを
自宅作りのテーマを教えてください。
我が家はリビングダイニングと寝室で、光のコントラストがはっきりとしています。そのため、『動』と『静』をおのずと意識するようになり、仕事とプライベート、ONとOFFの切り替えが自然と家づくりのテーマになりました。
たっぷり自然光の入るリビングダイニングは、モダンな家具を取り入れながら動的に過ごせる空間に。一方で、落ち着いた明るさの寝室は天井を高く感じながらのんびりできる静の空間。日本の古家具や〈無印良品〉の低めのベッドを選びました。床には素足で歩いても気持ちのいい大きめのジュートラグを敷いて、照明はイサム・ノグチのAKARIシリーズをチョイス。和紙から漏れる柔らかな光が、さらに安らぎを与えてくれます。
本を積み重ねているのは『裁ち台』といって、もともと布を裁断するときに使われていた日本の古いもの。芦花公園駅近くのビンテージショップ〈FURUICHI〉で購入しました。
好奇心をくすぐられるインテリア
家具はどのようなものが好きですか?
国やデザイナーによって様々な特徴と良さがあるモダンデザインの家具は、純粋に使ってみたいものが多いです。例えば、ダイニングの黒い椅子は、イギリスのFaye Toogoodというデザイナーが作ったもので、牛の搾乳時に使うスツールと、農作業用の鍬(くわ)の取っ手を組み合わせたデザイン。牧歌的でありながら、どこか洗練された都会的要素も感じられる、そんな魅力がたまりません。
また、ヴィンテージのダイニングテーブルもお気に入りです。この台形の部屋でも使いやすい、円形のテーブルを探していたときに、飯能にある〈REFACTORY antiques〉で見つけたもの。インパクトのあるデザインなので、これを軸に家全体のインテリアを組み立てていきました。REFACTORYさんが天板も丁寧に仕立ててくださったので、大切に使い続けていきたいです。
岩佐さん宅には『これどこの?』と聞きたくなる、珍しいものが多いですね。
見たことのないものに強烈に魅かれる習性があるのです(笑)。ボビーワゴンの上にある石のオブジェは、カリフォルニア州バークレーを拠点に活動する、〈Shizu Designs〉さんの手作り。モチーフの飾り結びは、どこか日本のスピリットも感じますよね。和と洋の間、伝統とモダンの間、手仕事と自然物の間など、カテゴライズされない素敵な個性のあるものを見ると好奇心が刺激されます。
住まいに合った暮らし方を楽しみながら、特殊な台形の間取りも好奇心旺盛に住みこなす、インテリアスタイリストの岩佐さん。後編では、岩佐さんが実践している、家時間を楽しむための小さな工夫について教えてもらいます!