余白のある家で、世界各国の“とっておき”を飾る(後編)

古今東西さまざまなものをミックスする、
インテリアの楽しみ方

どんなインテリアが好きですか?

自分が好きなものはいろいろで、なかなか一概には言えないのですが、『北欧家具』『アメリカのミッドセンチュリー』『世界の民芸』『クラフト品』などは好きですね。今家にあるものは、一気に揃えたわけではなくて、徐々に出会って集めてを繰り返していたら、自然とテイストがミックスされていきました。家に合わせてものを選ぶのではなく、気に入ったものに出会ったらまず買う。直感で持って帰ってきて、どこに飾るか考えるのも楽しい時間です。

家の中心にあるサイドボードには、どのようなものを置いていますか?

今は、メキシコのオブジェやアフリカのかご、チベットの経典、アメリカの木工作家、ジョージ・ピーターソン氏の木のオブジェ、東京で活動する須田二郎さんの木の器などを飾っています。民藝もあれば現代アートもある、ひとつのジャンルだけではなく、いろんなものをミックスして飾れるのがインテリアのおもしろいところ。季節ごとに少しずつ入れ替えをしながら楽しんでいます。このデンマーク製のサイドボードは、見栄えも良く、収納にも使えて非常に便利。また、絵画のようにして壁に飾っている、友人から旅のお土産でもらったハンド刺繍の布もお気に入りです。

インテリアを楽しむために心がけていることはありますか?

我が家は、夫婦揃ってインテリアが好き。どうしてもものが増えてしまうので、サイズの大きなものばかりを選ばないように気をつけています。小さなサイズのものを選んでものをたくさん置けるように工夫したり、大きな家具を置いたらその分周りには小さな家具を置いたり、スケール感のバランスを取ることは意識していますね。あとは、フローリングを無垢にして、床置きでもインテリアも楽しめるように工夫しました。

例えば、リビングの床置きスペース。アフリカの民芸品やメキシコの蝋燭台、柳宗理さんのバタフライスツールを組み合わせています。柳宗理さんはアフリカのものや民芸品が好きでよく集めていたそう。そんなエピソードも踏まえてここのインテリアは考えてみました。どうしても木のものが増えてしまうので、鮮やかな色を要所で入れたり、素材をミックスしたり、空間がのっぺりしないように飾りながらバランスよくまとめることも意識しています。

ご夫婦でインテリアの趣味に共通点はありますか?

二人ともに共通している価値観は、“味がないものよりは味があるものが好き”なところ。ただ正統派というものよりかは、少し遊び心があるような、洗練されすぎていないものが好きです。人によっては「ガラクタじゃない?」と思えるものにどこか惹かれたりすることもありますね。

インテリアのアイディアや知識はどのように養いましたか?

若い頃に、仕事で店舗のレイアウトを考えていたとき、ものをよく見せるために配置を繰り返し考えてきた経験が、今でも家のインテリアを考える上で役立っています。昔の建築家の人や家具デザイナーの方の家を洋書で見て、どんな植物を置いているのか、こんな組み合わせもありなんだ! など、気づきをもらいながら感覚を養いました。直感でいいなと思ったものも、背景を調べることによって、さらにその良さを感じることができますし、組み合わせの幅も広がりますよ。

備え付け収納がない住まいで、
ものを上手に収納する方法

どの部屋にも押し入れやクローゼットなど、備え付けの収納スペースがないですね。

もともと、収納スペースのある部屋もあったのですが、それもすべて潰してとにかく空間を広く取れるようにリノベーションしました。普段使っているものも部屋のアクセントになるという思いから、基本的にはしまわずに見せながら収納しているものが多いですね。

どうしても生活感の出やすい細々としたものを収納する上で、役立つ道具はありますか?

世界各国のかごはインテリアにも溶け込みやすいのでよく使っています。本棚横に並べている、北米やアフリカの小さなかごには電池やピンなど小さなものを収納。大きいかごはストールやバッグなどを収納するのに便利です。かごは軽いから移動もしやすいし、インテリアの一部として楽しめるところがいいですよね。

プライベートな時間を持てる、
セカンドリビングのある暮らし

セカンドリビングのある間取りが印象的ですね。

本棚のあるスペースをセカンドリビングとして活用することで、より暮らしの自由度が高まりました。おそらく、扉をつけて完全に空間を分けていたら物置きみたいになっていたと思います。ここでは、本を読んだり、ちょっとした仕事の作業をしたり、たまに妻がヨガをしたり。人が泊まりにきたときは、暖簾のように布を吊るすことで空間を仕切ってゲストルームのように使っています。この間取りにしたおかげで夫婦それぞれがストレスなくプライベートな時間を持てるので作って正解でした。

大きな本棚はどちらで手に入れたものですか?

本を収納できて、かつ上段にオブジェなどを飾れる、ちょうどいい高さの棚を探していたら、ヤフオクで見つけました。おそらくこれは、学校のロッカーや靴箱として使われていたもので、1万5千円(!)で購入。本棚に飾っている器は、〈ヒースセラミックス〉の器にアーティストのジェフ・マクフェトリッジ氏がハンドペイントした作品で、とてもお気に入り。彼は、カリフォルニアでミッドセンチュリースタイルの家に住んでいて、それが本当にかっこいいんです。

セカンドリビングでもダイニングテーブル上でも使っているバブルランプも素敵です。

ジョージ・ネルソンの古いバブルランプです。金属フレームに繊維状のプラスチックを吹き付けることで、優しく光を透過するシェードは、現存させるのが困難だといわれているなかで、我が家のバブルランプは穴も開いていない状態で、何十年とよく壊れずに現存していました。セカンドリビングにスタンドで置いているバブルランプは、スタンドとランプを別々で購入。スタンドはおそらく鳥籠をかける台だったものと思われます。

同じ花瓶がたくさん置いてありますね!

一輪挿しの〈ヒースセラミックス〉の花瓶です。たまたま安く販売していたのでまとめて購入して、友人たちに少しずつプレゼントしています。我が家のインテリアには、友人からもらったものがたくさんあるので、私たちも同じように、良いと思ったものを共有できたらいいなと思っています。

横溝さんが理想とする住まいは、“人が来てくれる家”。ほどよい生活感のある空間で、好きなものをとことん飾る横溝さん宅には、横溝さん夫婦らしさがしっかりと表現され、それが訪れる人への安心感につながっていました。自宅は自分の個性を知ってもらえる絶好の場所で、好きなものを飾ることこそが、暮らしを楽しむ秘訣そのもの。いつか気軽に人を呼べるようになるその日まで、自分たちらしい部屋作りを楽しんでみてはいかがでしょうか?

好きなものを飾るために、
自由度の高い余白のある家にリノベーション

家づくりのテーマはありますか?

好きなものをミックスしながら楽しめる家にしたいと思っています。家にあるものは国も年代も異なるものばかり。それを上手に組み合わせて飾ることが楽しみのひとつです。何も置かずにきれいな部屋よりも、ものがあるけどまとまりのある家の方が私は落ち着きますね。

リノベーションではどのようなことにこだわりましたか?

我が家は、夫婦揃ってインテリアが好き。だから、どうしてもものが増えてしまうので、シンプルにひとつの平場をリノベーションで作ってもらったというイメージです。リビングダイニングの壁を抜き、フローリングは床置きでもインテリアが楽しめるように無垢のオーク材を入れてもらいました。また、備え付けの造作は極力つけていません。新しい家具が入ってきたとき、配置換えをすることもありますよね。気分が変わっても家は家具のように簡単に変えることができないし、備え付けのものがあると自由にインテリアが楽しめなくなる。だから、“完成させすぎないこと”も意識しました。ドアは市販のメラミン材の化粧板などテカテカした材質のものではなく、合板ですがシートを貼らない状態で取り付け。これは、工事費の節約にもなったし、気分が変われば自分たちで色を塗ることもできます。壁ももともとあった壁紙の上から白い塗装をしているだけで、ここも節約。インテリアにお金をかけたい分、内装はできるだけ節約しながら、余白を作れるように。自由度が高い分、住みやすい家にアップデートしていけるのが楽しいですね。

家具は長く使えるものを選んで、
循環させながら変化を楽しむ

特に思い入れのある家具について教えてください。

唯一、引っ越した後にこの家に合わせて購入した、〈ウェグナー〉のダイニングテーブル。インテリア好きの先輩を自宅に招いたとき、「ひとつくらいスケールアウトした家具を置くとメリハリが出るよ」とアドバイスをくれて。それまでは、今置いているダイニングテーブルの半分ぐらいのサイズのものを使っていたのですが、思い切って大きなものを買おうと決意。でも、なかなかこれというものが見つからなくて、3年かけてようやくこのテーブルを迎え入れました。エクステンションテーブルなので、真ん中を畳んでコンパクトに使用することもできます。私は料理が好きで、人を招いて食事することも大好きなので、結果的に大きなテーブルにしてよかったなと思っています。

ダイニングチェアはどのようなものをセレクトしていますか?

置ける数が限られているなかでも、いろんなものを使いたいと思って、〈イームズ〉のDCMや〈モーエンセン〉のシェーカーチェア、〈アアルト〉のCHAIR69を置いています。

家具を選ぶ基準はありますか?

20〜30代の頃は派手な色の家具が好きだったのですが、今は木そのものの風合いが活かされた家具を手に取るようになりました。家具は金額的に気軽に買い替えることができないし、出したりしまったりするのが難しい。そう考えるとあまり奇をてらわず、ベーシックで長く使えるものを選ぶようになりました。一方で、家のものは循環させることも前提に考えています。その場しのぎで買うことや、なんとなくのDIYはエコじゃないし、したくない。だから、しっかり人に譲れるものを選ぶことも基準のひとつになっていますね。

家具やインテリアでお気に入りのお店はありますか?

以前大阪に住んでいた頃によくお世話になっていたのが、〈Swanky Systems〉や、神戸の〈LIKELIKE〉。今は神奈川・厚木にある〈talo〉、東京・羽根木にある〈Out of museum〉などによく行きますね。

家具の配置で意識したことはありますか?

部屋の真ん中に空間を作るために、家具はすべて壁付けで置くという人が多いと思うのですが、あえて部屋の真ん中にも家具を配置することでその周りに奥行きを持たせて、空間にメリハリをつけることも意識しました。我が家では、ダイニングとリビングの間に、あえてベンチを置くことでゆるやかに空間を仕切っています。ベンチは、長野の〈松本民芸家具〉のもので、人を招いたときにも重宝。リビングには低い家具を置いてくつろげるように、ダイニングに向かって徐々に背の高い家具を置くことで視覚的にも静と動のメリハリを意識しました。

ダイニングとゆるやかにつながる、料理好きのキッチン

自宅の中で特に気に入っている場所を教えてください。

料理が趣味の私にとって、キッチンは特にお気に入りのスペースです。キッチンタイルはサンフランシスコの〈ヒースセラミックス〉のもの。日本では仕入れているお店がなかったので、現地で買い付けて個人輸入で持ち帰りました。税関の書類提出が大変だったのと重さが240キロほどあって、軽トラックで運ぶのに苦労した思い出がある分、非常に気に入っています(笑)。また、オリジナルで造作してもらった流し台や収納棚は、ビームス時代の後輩で建築士になった知人にお願いして作ってもらいました。

キッチン作りで意識したことはありますか?

コンパクトですが使いやすさは重視して、自然とダイニングとつながる空間になるように意識しました。もともとシンクは奥の壁沿いに設置されていたのですが、我が家は人を招くことも多くて、料理や洗い物をしながらでもゲストと気軽に話したいという思いから、今の場所にシンクを取り付けることにしました。後ろのホワイトの棚は〈String〉 のもので、自分たちで後から取り付けたもの。便利なユニットシェルフで、本棚などとしても使える優れものです。

お気に入りの世界各国の器と収納アイディア

料理好きというだけあって、器もたくさんありますね!

日本のものだと、大分の小鹿田焼や沖縄のやちむん、島根の出西窯、栃木の益子焼だったり。海外のものだとキッチンタイルと同じアメリカの〈ヒースセラミックス〉のものや、妻が好きな〈ASTIER de VILLATTE〉だったり。器もインテリアと同様、いろんなものが好きですね。ビームスの〈fennica〉というレーベルで器を取り扱っていることもあり、自然と若い頃から器はよく見ていました。窯元に見に行って、現地で購入することも多いです。

なかでもお気に入りの器はありますか?

赤絵が特徴的な沖縄の山田真萬さんの器、沖縄の菅原謙さんの器、サンフランシスコに工房がある〈ヒースセラミックス〉の器や、イギリスのスリップウェアの古いものなど。どれもお気に入りの器だからこそ、我が家ではたくさん使うようにしています。

食器収納のアイディアはありますか?

食器棚に入り切らない大きな器はインテリアの一部のようにしてベンチの上や、ダイニングテーブルの上に置いています。あとマグカップなど重ねにくいものは大きなカゴにまとめることで省スペースに。今使っている食器棚はデンマークの60年代のもので、チーク材が贅沢に使われていてお気に入りではあるのですが、食器はもう少し増やしたいところ。そろそろ新しいものに買い替えたいなと検討中です。

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