ジュエリーが持つ、御守りのような力
眺めているだけで気分の上がる素敵なドレッサーですね!
私の大好きなものが集まるパワースポットです。朝、日が差し込むこの場所でメイクをして、その日身につけるジュエリーを選べば、自然と心身のスイッチがオンになります。私の財産ともいえるジュエリーたちは、熊谷峻さんが手がける神秘的で優しい色合いのガラスプレートや、鈴木麻起子さんの鮮やかな青の器、鉱石の上などに乗せてじっくり休ませています。このドレッサースペースは、気分が落ち込みがちだった自粛期間中も“1日がんばろう!”と励ましてくれた、大切な場所です。
土村さんが手がけるジュエリーブランド〈Jaipur Jewelry by Masami〉について、教えてください。
インドのジャイプールで活動する、信頼できる職人さんたちにオーダーで作ってもらったハンドメイドジュエリーを展開しています。インドならではの素材を、日本人らしい洗練された感覚に落とし込み、毎日を精一杯生きる現代女性たちの御守りとしてお届けしたいと思っています。
バックパックを背負って旅をしていた2005年頃、東洋の手仕事のルーツを追い求めて辿り着いたのが、“宝石の街”と呼ばれるインドのジャイプールでした。そこで心奪われたのが、インドの女性たちが身に纏う極彩色のサリーや幾重にも飾られたジュエリーの美しさ。インドの人々にとってジュエリーとは、ファッションの一環ではなく、パワーの源であり、御守りであり、財産であり、民族性を示すアイデンティティであり、彼女たちの体の一部のように輝いていました。その姿が本当に素敵で、私もそんなジュエリーを身につけてみたいと自分用に作ってもらったのがJaipur Jewelry by Masamiのはじまりでした。当時初めて作ったのは、7色の天然石を用いた「7カラーリング」。指の裏まで石が取り囲むようにと考えた「マハラジャリング」の原型です。
寝室からインドの海辺の街へ
寝室はリビングのイメージとはまたガラッと変わった印象ですね。
寝室は私が大好きで何度も訪れている、インドのゴアの夜をイメージしています。たくさんのビーチがあって、世界中からツーリストが集まる街。ゴアはもともとポルトガル領だった地域で、インドだけどヨーロッパの名残をとどめる、いい空気が流れています。照明は、ゴアの民家ではどのお家もつけている、星型の照明を吊るしました。ベッドの上に敷いている布も、ゴアで見つけた思い出の布。絵のように飾っている正面の大判ストールは、葉山で活動されているFunatabi atelierさんの作品。布の上に花や野菜の皮などを散らし、それをくるくると巻いて媒染し染め上げたもので、ゴアの空気にもすんなり溶け込んでいます。
ジュエリー同様、洋服もたくさん持っている土村さん。衣類の収納で工夫していることはありますか?
服は備え付けのクローゼットだけでは、どうしても収まり切らないので(笑)。しまえない分は、季節によって好きなコーディネートを3つ表に飾っています。
“好き”に思いを巡らす酔いどれタイム
お家での休日やオフの時間は、どのように過ごされていますか?
愛猫・クインちゃんを膝にのせて映画やYoutubeを観たり、夕方早めの時間からおつまみを作って飲み始めたりしてのんびり過ごします。好きな時間は夕暮れで暗くなり始めるマジックアワーの頃。地球儀を眺めて、インドのみんなは元気かなと考えたり、ジュエリーのデザインを考えたり、いつも照明を暗めにしてまどろむことができるようにしています。
酔いどれタイムのお供を教えてください。
お酒はレッドアイがマイブームです。今日の酒器は、吹きガラス作家・河上智美さんのピッチャーと、マルヤマウエアさんの陶器のグラスで。肴のチーズをクインちゃんと分け合いながら飲むのが日課です。我が家のリビングテーブルは、旅先から持ち帰ってきたものなど常時ものに溢れています。好きなものが近くにある、この空間が落ち着きますね。
ずばり土村さんにとって、家とはどんな空間ですか?
遠い過去のことから、今朝から夜まで一日のこと、外で見つけたいろんなもの、感情を持ち帰る場所です。そのことを肴にしながらおいしいお酒を飲むことができる、最高の酔いどれ空間ですね。
旅先で見つけたものや、愛猫の成長と共に増えていく猫コレクションなど、過去の大切な思い出が今も幸せな時を紡いでいる、土村さんの素敵な住まい。せわしない日々の中でもふと立ち止まり、一呼吸を与えてくれる。そんな思い出の詰まったものを家に飾ってみることで、忘れていた自分らしさに気づけるかもしれません。
前編では、家づくりのテーマや家具の話、長年の夢だった猫との暮らしについてもご紹介しています。前後編合わせて、ぜひご覧ください。
色に囲まれた賑やかなリビング
自宅作りのテーマを教えてください。
旅先から持ち帰ってきた品々と猫のクインちゃんを眺めながら、毎晩夫と美味しいお酒を楽しむことができる、温かい家づくりが1番のテーマです。
家族が集まるリビングルームは、色彩豊かな空間ですね!
私はエキゾチックなものが好きで、夫は色や木のぬくもりのあるものが好きです。2人とも、モダンやアーバンなどスタイリッシュなイメージよりも、ナチュラルなものや温かみを感じられるものが好きで、色もモノトーンやアースカラーのみでまとめないようにしています。夫が色×無地のものを置き、そこへ私が柄物をプラスしていく。リビングはそんな風にコーディネートしています。
お気に入りの家具を教えてください。
基本的に家具は夫チョイスです。部屋の大部分を占めるリビングのソファは目黒通りにあるソファ専門工房〈スタンリーズ〉でオーダーメイドしたもの。紺と赤のコントラストはなかなかインパクトがありますよね。あと、わざわざ名古屋まで行って選んだ紺と橙色のギャべ(絨毯)も草木染の風合いが鮮やかでお気に入りです。
夫婦各々で楽しむインテリア
コンパクトな住まいでも、好きなものが異なるご夫婦でインテリアを楽しめるように工夫していることはありますか?
我が家では、コーナーごとで好きな見せ場を作って棲み分けるようにしています。例えば、玄関は植物が好きな夫の聖域。朝起きたらすぐここへ向かって、せっせとお世話をしています。
ゆっくりお酒を愉しむダイニングテーブル横のパワースポットは、エキゾチックな旅土産を中心に飾る私の聖域です。インドのゴアから持ち帰ってきた、美と豊穣、家庭を司る女神・ラクシュミーの像や、カンボジアとタイで出会ったブッタ。猫のオブジェはスペインで見つけました。夫とクインちゃんが刺繍されたnutelさん作の刺繍絵も我が家の家宝です。
愛猫・クインちゃんとの暮らしで心掛けていること
自宅のインテリアを考える上で、ルールにしていることはありますか?
愛猫・クインちゃんにとって安全かどうかが、我が家の一番大切なルールです。クインちゃんはなんでも口にしようとするので、猫にとって危険性のあるグリーンは絶対に置かないようにして、安全なものでも手の届かない場所に置くようにしています。
クインちゃんと住み始めて、生活にはどのような変化がありましたか?
クインちゃんがやってきた10年前を境に、家にいる時間をもっと大切にしたいなと思うようになりました。夫はどちらかというと犬派だったのですが、今ではすっかりクインちゃんの虜に。半日でも家を開けるとそわそわしちゃうぐらいの溺愛っぷりで、仕事の合間にわざわざ様子を見に帰ってきたりもします(笑)。
猫との暮らしで工夫しているインテリアのアイディアはありますか?
クインちゃんは基本的に爪研ぎポール以外では爪を研がないのですが、ハンスJ.ウェグナーデザインのシングルソファだけはお気に入りのようで。よく爪を研ぐ背もたれ上には布をかけてガードしています。
また、猫グッズはできるだけインテリアに馴染むものを厳選。amazonで購入した紫のベッドドームは見栄えもよく、クインちゃんのお気に入りスポットです。上の蓋がパカっと開く仕様で掃除もしやすく、下敷きは裏返せば夏使用にもできます。
あと、ごはんの器はフィリップ・スタルクデザインのものを愛用。我が家ではさらにその上にグラスと器を乗せて、食事がしやすいようにしています。
ご自宅には至るところに猫モチーフのアイテムがありますね!
クインちゃんと出会う前、上京してから10年以上ずっと猫と暮らしたいなと思っていて、その反動からかどんどん猫にまつわるものが増えていきました。気づけばもう100個以上はありますね(笑)。お気に入りは、唐津の櫨ノ谷窯の先代・吉野魁さんが焼かれた猫のような虎の蓋物菓子器。眺めるたびに穏やかな気持ちになれる素敵な作品です。
猫と旅を愛する土村さんらしさが詰まった、素敵な住まい。後編では、日々身につけているジュエリーの話や、旅気分を身近に感じられる家づくりについてお届けします。