感性を刺激する、
家を小さなギャラリーに
家のあちらこちらにアートが飾られていますね。
家づくりをするにあたり、“感性を刺激する空間“はひとつテーマにしました。夫婦ともにアートが好きなので、部屋の各所にアートを飾っています。
どんなアートが好きですか?
明確にはないですが、抽象画は好きかもしれません。いろんな解釈ができるし、インテリアにも馴染みやすい気がします。玄関に飾っている高屋永遠さんの作品は初めてアーティストさんから直接買わせてもらった思い出深いアート。前職時代、会社で行われていた若手アーティストの作品を集めたイベントで購入しました。『A woman』というタイトルで、遠くから見ると女性像を表しているのがわかります。アートは旅先や知り合いから購入することが多く、出会いも楽しみたいなと思っています。
ワークスペースに飾っているアート作品もお気に入りです。こちらはスペインに暮らしている日本人アーティストの作品。黄色はアジア人、白は白人、黒は黒人、茶色はラテン系を表していて、人種は違えど皆同じ赤い血が流れているというメッセージが込められています。見た目もポップで家の雰囲気にすんなり馴染みました。
アートを飾るとき、心がけていることはありますか?
アートは実際に購入しているのですが、気分としては“大切な作品をお預かりしているような感覚”。なので、なるべく直射日光が当たらない場所に飾るようにしています。今まで美術館やギャラリーで観ていたアートを家で楽しめるというのは、また違った感じ方があります。
旅で鍛えられた、
カラフルな色彩感覚
海外のインテリアも上手に取り入れている印象ですが、どうやってその感覚を養っていますか?
Pinterestで海外のインテリアを見たり、たまに行く海外旅行も良いインスピレーションを得る機会になっています。旅行中は荷物を増やしたくないので、買い物は小物程度ですが、ホテルの内装や街並みから、『こういうアイディアがあるんだ!』と刺激を受けることも多いです。
なにかご自宅で実践しているアイディアはありますか?
今、本棚があるスペースは、もともとクローゼットにする案も出ていたのですが、海外のようにカラフルでインパクトのある本棚にしたら良いアクセントになるかもと思い、実践してみました。我が家は洋書も和書もどちらも読むのですが、洋書の方が圧倒的にカラフル。そのため、目線の高さにくる上の段は洋書、下の段には和書と分けてしまうことにしました。
たくさんの色が使われていながら、どこかすっきりとした印象のあるMiwakoさん宅。色使いで心がけていることはありますか?
かっちり決めているわけではないですが、ポイントカラーは意識するようにしています。例えば、リビングはアクセントチェア、花瓶、クッション、雑誌などをオレンジの色味でリンクさせています。
自室とベッドルームはピンクをポイントに。フォトグラファーの友人から譲ってもらった写真作品と、高屋永遠さんの桜の情景を描いた作品がたまたまピンクだったので、このエリアはアートを軸にポイントカラーを決めました。ピンクは眺めているだけで癒されるカラーで、結果的にプライベートな空間にぴったりでした。また、ベッドの奥のアクセントウォールはピンクと相性のいいグリーンをチョイス。飽きがきたら、そのときは塗り替えようと気軽な気持ちで今の色を楽しんでいます。
大人になってから始めた趣味
趣味はありますか?
大人になってからピアノを始めました。もともとピアノは聞くのが好きでいつか弾けるようになりたいなと思い、今習い始めて7年目になります。週1回ほど先生が来て教えてくださっています。
インテリアとしても素敵なピアノですね。
ヤフオクで見つけた70年代の古いピアノ。販売していた埼玉のピアノ店までわざわざ行って現物を見てから購入を決めた思い出の品です。家族経営のお店で、古いものを大切にリサイクルして販売している姿勢に心を打たれました。また、ピアノとマンションが同じ70年代生まれなので、そのあたりの親和性も気に入っているところ。古いピアノですが、サイレント機能をつけたので、電子ピアノとして使うこともでき、夜でもヘッドホンをつけて弾くことができます。
ピアノの隣にあるエリアは?
小さなバーエリアです。バーテーブルはアメリカのアウトレット通販サイトで見つけて個人輸入しました。お酒は主に夫の趣味。ジンは小規模生産でラベルまで凝っているものも多く、国内外問わずご当地ものを集めて楽しんでいます。
「自分の家は完璧さを求めるよりも、偶然の出会いが積み重なった空間にしたい」、そう教えてくれたMiwakoさん。住む人の生き様や趣味趣向が図らずも滲み出る、そんな住まいにこそ、真の意味での豊かな暮らしは存在するもの。さまざまなスタイルをミックスして自分らしく楽しむ、それこそが自宅インテリアの醍醐味とも言えるでしょう。
前編では、物件探しのエピソードやリノベーションのこだわり、インテリアの好みやお気に入りの家具について、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。
管理が行き届いた、
築約50年の中古マンションを購入
賃貸から分譲へ引っ越そうと思ったのはなぜですか?
もともとインテリアは好きで、賃貸の頃から貼ってはがせる壁紙を活用するなど、いろいろ工夫しながら暮らしていたのですが、やはりできることに限界があって。『いつかは自分たちで1から考えたインテリアに囲まれて暮らしたい』、『リノベーションを経験してみたい』そんな思いで中古マンションの購入を決めました。
物件探しで今の家に決めた理由を教えてください。
一番は環境の良さ。駅からアクセスが良い上に、緑もあって眺望の抜けもある。そして、地盤が強い高台なので水害や地震でもリスクが抑えられると思いました。また、リノベーションすることが最大の目的だったので、リノベーションがしやすい物件であることも重要視したポイント。お風呂やトイレの位置を変更したかったので、配管の位置なども事前にチェックしました
築年数は約50年。今まで古くて困ったことはありましたか?
実は、たまたまこのマンションの別の部屋に賃貸で4年ほど住んでいたことがあり、生活上問題なく暮らせることはわかっていたので特に不安を感じることはありませんでした。古い物件ですが、水道や電気などライフラインに関する設備はしっかり大規模修繕されていて、この部屋もスケルトンにして水道管やガス管などすべて古いものは取り替えたので、特に不便を感じたことはありません。
古いものと新しいものが共存する、
『パリのアパルトマン』をイメージして
リノベーションのテーマを教えてください。
『パリのアパルトマン』をリノベーションのイメージとしました。パリはこれまで出張やプライベートで何度も訪れたことがあり、旅先の中でも好きな都市。古いものを大事にしながら、新しいものを取り入れる、そんな文化が根付いています。我が家も築約50年のマンションなので、無理に若作りをするのではなく、古いものと新しいものが自然と共存する空間を作りたいと思いました。
リノベーションで特にこだわったポイントを教えてください。
床と窓周り
理想のイメージに近づけるために、床と窓周りは特にこだわりました。面積が広い分、ごまかしが効かない、かつ賃貸では変更が難しい箇所なので、この部分の工夫は、中古マンションのリノベーションの醍醐味だと感じました。リビングの床はヘリンボーン、廊下はパーケットなど、ヨーロッパの古い家でよく見られるフローリングを参考にしています。
リビングダイニングの窓周りは、窓から見える緑の景色を生かしつつ、窓のアルミサッシを隠すために、ウッドシャッターを取り入れました。ウッドシャッターは横にサッとスライドするだけで窓の開閉ができるので、ブラインドよりも扱いやすいなという印象です。
ベッドルームは、中途半端な窓のサイズをカバーするためにあえて天井に近い位置からカーテンを取り付けるように工夫しました。
廊下の照明
廊下の照明はデザイナーさんにお任せだったのですが、明るさを適度に抑えたスポットライトのような照明で、部屋の雰囲気がぐっと洗練されました。光の陰影をつけると、空間に奥行きが生まれるのだと学びました。
ベッドルームの壁
アール壁のアクセントやモールディングをあしらった壁など、日本の賃貸マンションでは実現するのが難しい要素を随所に取り入れています。
バスルーム
我が家の大きなリノベーションポイントのひとつが、もともとキッチンだったスペースにバスルームを作ったこと。バスタブとシャワーブースが別にある、海外のホテルのようなデザインにしました。『掃除はしやすいの?』とよく聞かれるのですが、床は石なのでガシガシブラシで洗えるし、バスタブもシンプルな形状なので掃除がしやすく、むしろユニットバスよりもカビが発生しにくい印象です。また窓があるおかげで風通しが良いことも、カビが発生しにくい理由かなと思います。
偶然の出会いも受け入れる、
おおらかで自由なミックススタイル
インテリアはどんなものが好きですか?
シンプルすぎない、レトロモダン&コンテンポラリーなデザインに魅かれます。「古いものと新しいものの融合」は家作りのテーマにもなっていて、例えば年代物のピアノや箪笥、椅子などを置く一方で、若手作家のアートを飾ったり、コンテンポラリーの家具を置いたり。たまたま旅で見つけたものを持って帰ってきても調和するぐらい“余裕”がある家で気楽に住みたいと、ミックススタイルに行き着きました。
思い入れのある、気に入っている家具を教えてください。
桐箪笥
富山でアップサイクル家具をつくっている〈YES〉のもの。嫁入り道具として約50年前に作られた家具に、モダンなデザインを施して現代に再生させているというコンセプト、ストーリーに共感しました。
自室は桐箪笥を軸に、和のテイストを取り入れて禅を感じる空間に。和紙のライトは〈イサム・ノグチ〉のakariシリーズの初期モデル。この夏、ニューヨークのノグチ美術館へ行った際に購入しました。クローゼットは扉ではなくカーテンにすることで、部屋全体がやわらかな雰囲気になるようにしています。
リビングのコーヒーテーブルとアクセントチェア
なかなか気に入る家具が日本にないのが最大の悩みで、家の中の家具はいくつか、海外から個人輸入しています。その中でも、リビングに置いている〈CB2〉のコーヒーテーブルと〈ALLMODERN〉のアクセントチェアがお気に入りです。このアクセントチェアは、日本だとあまり聞き馴染みのない『バレルチェア』と呼ばれる形状のものです。
家具を選ぶ基準はありますか?
家具を選ぶ基準は、「デザインそのものが好きか」、「部屋に調和しているか」、「価格に納得できるか」この3つを軸に考えます。
家具の配置で心がけていることはありますか?
『ここでどんな時間を過ごしたいか』、それが家具の配置にも表れるように思います。例えば、ワークデスクは壁付けするのではなく、あえて外の景色が見える位置に配置。パソコン画面に疲れたら、目を窓の外に移してリラックスできるように考えました。
家具はどんなところで買うことが多いですか?
外国にしかないデザインで欲しいものがあったら、個人輸入で買うことも多いです。なかなか気に入るものが見つからないときは、ひとまず〈IKEA〉の家具をリメイクして使ったりもします。DIY文化が根付いているアメリカにはIKEA家具のリメイクパーツが売っているお店があるんです。ワークスペースのサイドボードも、ベースはIKEAで、パーツ売りされていたものを組み合わせてアレンジしています。
理想を詰め込んだ中古マンションで、国籍、年代、ジャンル問わず、好きなものを自由にミックスしながら自分らしく暮らしを楽しむ、Miwakoさんのコンパクトライフ。後編では、自分らしく暮らしを楽しむMiwakoさんの趣味や好きなものについて、詳しく掘り下げます。ぜひお楽しみに!