アパレルディレクターの偏愛生活
【今関龍介さんのコンパクトライフ 後編】

憧れの名作椅子コレクション

部屋には椅子がたくさんありますね!

椅子はフォルムが好きで、ついつい集めてしまいます。素材や形、どこで使われていたものかなど、そのものの背景を知るのが楽しくて。我が家は色物も多いので、基本的に椅子の足はアイアンやシルバーのものをチョイス。80年代チェアのPhilippe Starckがデザインしたバースツールや、〈MarioBotta〉のPrimaをはじめ、ただ置いているだけでオブジェのように楽しめる、個性的なデザインのものが多いです。

リビングの窓際

特にお気に入りの椅子をいくつか教えてください。

Philippe StarckデザインのDr. Sonderbar Chair

計算され尽くされた抜けのあるフォルムにパンチングシートだけというミニマルな形だけど大きさもあって存在感のあるラウンジチェア。先ほどのバースツールと同じPhilippe Starckの作品で、遊び心のあるデザインが素敵。一脚あると空間にデザイン性が生まれる気がします。サイドテーブルは、女性建築家の草分け的存在であるアイリーン・グレイのが手がけたE1027。天板がガラスでフレームがシルバーなので圧迫感もなく気に入っています。

ピアノスツール

作者不明の1930年代のピアノスツール。座面は張り替えてありますが、もう90年以上前に作られた椅子なのに、座り心地も良いんです。当時はアールデコ建築が主流で、そのテイストが全面的に表現されているデザインが魅力的。

ミニチュアの椅子コレクションもかわいいですね。

これは〈Vitra〉から出ている名作チェアのミニチュア模型。1/6スケールに縮小しつつ、ネジやパーツなどの細かなところまで職人さんによって作られており、かなり再現性の高いシリーズで建築学校の授業でも取り入れられているみたいです。欲しいけど手に入らない椅子はこれで満足しています(笑)。

お気に入りのポップな雑貨と、
ディスプレイテクニック

ものを飾る上でどんなことを心がけていますか?

我が家のインテリアはとにかく色が多め。何も意識せずに置くとただ散らかっているように見えてしまうので、素材か色でまとめることが多いですね。

リビングの一角
ディスプレイ棚

部屋のアクセントになっている、青い置物は何のコレクションですか?

〈BITOSSI〉というイタリアのブランドで、アルド・ロンディが手掛けたRIMINI BLUシリーズです。「リミニブルー」というカラーは緑と青が混ざったような深みのある色。見る角度によってさまざまな表情を見せてくれるのが面白いです。オブジェを飾るときは本で高さを出して飾ってみたり、少し動きが出るように工夫しています。

リビングの一角

緑のゾーンもかわいいですね。

きのこのようにニョキッと生えている緑のランプは、スウェーデンの女性2人によるデザインユニット〈フロント〉が手がけたライト「CURVE」。インテリアに目覚めるきっかけとなったアイテムで一目惚れでした。左はルーマニアの民芸のお皿。パリのセレクトショップ〈Merci〉で購入した作家もので、右のスツールはMartino Gamperがデザインした、Arnold Circus Stool。内部は空洞になっているので、洗濯カゴや傘立てとして使っている方もいるみたいです。

身につけるものも
その日の気分でコーディネート

香水がたくさんありますね。

香水は好きですね。ウッディやベチバー、柑橘系が多いです。特に気に入っているのは、韓国で見つけた〈KINFOLK〉の香水。ほどよくミントっぽい爽やかな香りで、ハンドソープなどもまとめて購入しました。

いつもどのように使い分けていますか?

朝の出勤前や夜外食しに行くときなど、出かけるときはウッディ系など深みのある香りをつけることが多いです。自分は家でも香水をつけるタイプで寝る前にもつけるのですが、寝る前は香りが軽めのフルーティなものやベルガモット系をつけることが多いです。

アクセサリーはどんなものが好きですか?

ヴィンテージものが多いですね。デコラティブなデザインのものに魅かれる傾向があって、昔の〈HERMES〉や〈GIVENCHY〉のものも大切に使っています。さまざまな洋服に合わせやすいように、ゴールドとシルバーどちらも使われているデザインを多く揃えています。

ファッションはどのようなスタイルが好きですか?

僕はどんなジャンルも着るタイプ。トラッド、ミリタリーやワーク、スポーティーも好きだし、いろんなジャンルをミックスして着るのを楽しんでいます。

インテリアとファッション、リンクするところはありますか?

インテリアもファッションも正解がないですよね。どちらもトライアンドエラーを繰り返しながら、自分の“好き”を表現していくものだと思っています。

洋服もインテリアも、そのもの独自の背景を知ることが面白いと教えてくれた今関さん。背景も含めて好きだと思えるものに囲まれた彼の住まいは、クリエイティビティに溢れた、アイデアの源泉というべき空間でした。

前編では、この物件を選んだ理由や、家づくりのテーマ、インテリアの好みやお気に入りの家具について、詳しくご紹介しています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください。

スタジオ使いもできる、
海外アトリエをイメージした空間づくり

この物件に決めた理由を教えてください。

仕事柄、家でも頻繁に撮影するので自然光が入りやすい空間であることは決め手になりました。また、リビングの一角が丸みを帯びている面白い間取りだったり、キッチンとリビングが完全にセパレートしているところも、生活感が抑えられて気に入っています。

リビングの窓際

家づくりのテーマはありますか?

海外のデザイナーさんや職人さんのアトリエを参考にしながら空間づくりをしています。空間のイメージをガラッと変えてくれたのが白の床。もともと一般的なフローリングだったのですが、賃貸でも使用可能なタイルの床材を敷き詰めることで、フラットで無機質な印象を演出できたかなと思います。リビングは、ソファやローテーブルが置いてあるエリアをくつろぐエリア、大きな鏡のある広々としたエリアを撮影ができるスタジオエリアとして分けて過ごしています。

リビング全景

どこを切り取っても画になる空間ですね!生活感を抑えるアイデアはありますか?

コード類を目隠しするのに役立っているのが、ファッション界を拠点に活動する〈BLESS〉の延長コード。インテリアとしても楽しめて、実用性もしっかり兼ね備えています。

あと、文房具など細々したものの収納に役立っているのが、壁掛けできる収納ラック「ウーテンシロⅡ」のヴィンテージ。もともとは真っ白だったと思うのですが、いい感じに日焼けして、味のあるクリーム色になっているのがお気に入りです。

ミッドセンチュリーベースの、
ジャンルレスインテリア

インテリアはどんなものが好きですか?

洋服も古着が好きなように、家具もひとつ一つ表情が異なる古いものや、昔誰かが使っていたストーリーを感じられるものが特に好きです。最初はミッドセンチュリーモダンにはまって、スペースエイジやポストモダンも気になり出し、最近では現代のアーティストさんの作品も増えてきて、それを“全部のせ”にしたのが我が家です(笑)。服もテイストをミックスして着ることが好きで、インテリアも同じ感覚で、年代や国籍、ジャンル問わず集めています。

特にスペースエイジの家具は取り入れるのが難しいイメージがありましたが、うまくミックスされていますね!

床を白くしたり、家具の足をできるだけシルバーで揃えるのも、空間に馴染みやすい理由かもしれません。スペースエイジの家具は特に高価なものが多く、なかなか見つからないのが悩ましいところ。壁のVerner Pantonのファブリックパネルや、趣味で集めているスターウォーズグッズ、リビングの宇宙船のような〈Petite Friture-Vertigo〉のペンダントライトからもスペースエイジ感が滲み出てるかもしれません。

リビングのくつろぎスペース
リビングのスタジオスペース

名作家具がもたらした、
ミニマリストマインド

インテリアが好きになったきっかけを教えてください。

ブランドを始めて、ハウススタジオへ行ったり、いい内装に触れる機会が増えたことは影響している気がします。もともとインテリア自体興味はあったのですが、家具ってやっぱり高価だからなかなか手が出せなくて…。でも、20代後半になって、少しずつ自分のお金でほしいものが買えるようになりました。デザインすることが仕事なので、インスピレーションにもなる、いいデザインには常に触れていたいという気持ちがあります。

お気に入りの家具をいくつか教えてください。

E&Yのローテーブル

〈E&Y〉という日本のブランドのもので、二俣公一さんがデザインを手がけています。天板の下にはハンモックのような大きなカゴが浮かんでいて、今は〈青山フラワーマーケット〉でみつけた流木のような植物などを飾っています。

C&B ITALIAのソファ

一番最近買った家具です。名古屋のヴィンテージの家具屋さんに行ったら、ちょうどその日が大型コンテナの到着日で。オンラインショップに出る前にこのソファを見つけました。でも、ちょうど僕の前にひとり悩んでいるお客さまがいたみたいで、しばらく待つことに。買えるのかわかるまでは毎日が気が気じゃなかったです(笑)このソファは、〈B&B ITALIA〉の前身となる〈C&B ITALIA〉時代のプロダクトで70年代のもの。マリオ・ベリーニの初期の作品であるアマンタシリーズのひとつです。背面のプラスチックとファブリックのコーデュロイの対比が面白く、ブラウンの色味がラウンジチェアと同色でバランスもいいなと思い即決でした。

USMハラーのキャビネット

オーディオ機器をディスプレイしているのは、ずっと憧れだった〈USMハラー〉のキャビネット。引っ越す前と引っ越した後でひとつずつオーダーで注文しました。

好きなインテリアショップはありますか?

いろんなところに行きますが、なかでも清澄白河にあるギャラリー〈stoop〉さんは好きです。セレクトが良いのと、店主さんがものの背景を教えてくれるので勉強になります。

もの選びの際に心がけていることはありますか?

古着もそうですが、買い逃したら同じものは買えないので、良いと思ったものはなるべく早く決断します。最近はミニマリストになろうと、選ぶものはより厳選するようになりました。

ミニマリストに興味が湧いたきっかけは?

妥協せず、良い家具を身の回りに置くようになってから、自然と物欲が無くなってきたのだと思います。どんどん上を求めるのではなく、それよりも今持っている家具を大切に、良いものを長く使い続けたいというマインドに変わってきました。ミニマリストというのも、その延長線にあって。持っているものを手放してみると、『これ失敗したな〜』と勉強することもたくさんありました。“大切なものをより大切にする”、そのミニマリストマインドはものに限らず、時間の使い方などにおいても好きだなと思います。

名作家具とポップな雑貨がセンスよくミックスされた、アパレルディレクター・今関龍介さんの住まい。後編では、個性豊かな椅子のコレクションやお気に入りの雑貨、香水、アクセサリーなど身につけているものまで、今関さんの偏愛コレクションを深掘りします。ぜひお楽しみに!

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