メンタルケアにもつながる、
花との暮らし
大矢さんが花のある暮らしに目覚めたきっかけを教えてください。
バーに勤めていた6年ほど前、太陽を浴びない昼夜逆転の暮らしにどっと疲れてしまって。そのタイミングで何気なしに1輪の花を家に飾ってみたら、心がホッと癒されて、それから花を飾ることが習慣になりました。
大矢さんの花屋「doigt(ドワ)」について、教えてください。
店舗を持たずに活動する花屋です。他の花屋さんではなかなか出会えないような、ワクワクできる花や、自宅で楽しみやすい花をたくさんご用意しています。普段はイベント出店での活動が主。花屋ってなぜか緊張してしまうという人も、リラックスしながらゆっくり選んでもらえるお店づくりをしています。今年は自分でイベントを主催して、好きな人たちとお花を通したコミュニケーションを楽しみたいです。
大矢さん自身は自宅に飾る花を買うとき、どんなことを意識していますか?
僕はお店で花をじっくり選ぶ時間が大好き。買うときは、純粋にいいなと思う花をいくつか買って、家に持ち帰ってからどこに飾るか、どの花瓶に生けるかを考えます。服をコーディネートするときと同じような感覚かもしれません。これとこれを重ね着したらかわいいよね、という感じで花の組み合わせを考える時間も楽しいです。
花を生けるとき、どんなことを心がけていますか?
まず、水の量は花の種類によって変えています。茎がやわらかいガーベラやチューリップなどは茎が腐りやすいので水は少なめで、枝物やバラなど、茎が硬めのたくさん水を吸い上げる植物は多めに。また、こまめに水を替えて、その都度花が水を吸いやすいように茎の先端を1cmほど切ってあげることも大切です。ハサミの切れ味が悪いと導管が潰れてしまい、花がうまく水を吸えなくなるので要注意。僕がいつも使っているハサミは〈Amazon〉で3,000円ほどで購入したもの。バタバタと忙しい仕事中はすぐものをなくすので、高いハサミを買うのが怖くて(笑)。手頃なものでもしっかり研いで切れ味良く保っています。
一輪挿しなど、洗いにくい形状のフラワーベースは、どのようにメンテナンスするのが良いでしょう?
100円均一などで細長いブラシを買って洗うのもありですが、わざわざそれ用に買うのも…という方は、まとめて漂白剤で洗ってしまうのもいいかと思います。
家で飾るお花はどこで買いますか?
一輪、二輪ほしいなというときは、友人や知り合いの花屋へ行くことが多いです。渋谷のスクランブルスクエアにある大きな〈青山フラワーマーケット〉には、お世話になった方が働いているので定期的に訪ねていたり、あと最近は去年オープンした千歳船橋の〈FRAM〉という友人のお店にも行きたいです。
ワンルームのコンパクトキッチンでも、
快適さをあきらめない!
自宅の中で、特に気に入っている場所はどこですか?
陶器のシンクがあるキッチンです。キッチンは原宿の〈LABOUR AND WAIT〉で購入した黒いフライパンを軸に空間づくりをしていきました。ここで料理をして、ブログ用の写真を撮影するのが趣味のひとつ。キッチンの天板は抗菌効果が高く、汚れが染み込みにくいリノリウム。見た目もよく気に入っています。できるだけ広々使えるように、よく使うキッチンツールはマグネット式収納で省スペースにするなど、ところどころ工夫しています。
キッチンはどうしても生活感が出やすい空間ですが、リビングダイニングやベッドスペースと違和感なく馴染んでいますね。
存在感がある冷蔵庫はDIYで木の囲いを作ることでインテリア性を重視。囲いの上は蒸篭やお酒を飲むときに使うグラスなど、最近出番の多いものの収納場所としても機能しています。また、見た目の気になる調味料類は透明のビンに移し替えて使っています。調味料やお酒を収納しているシルバーの作業台は〈IKEA〉で購入したものです。
キッチン台の下に置いている白い箱型の家電はなんですか?
据え置きタイプの食洗機です。水道につながずに使えるので、大きな工事も必要なく、賃貸でも気軽に取り入れられます。また、場所を取らないので、コンパクトなキッチンでもおすすめです。
ひと手間かける、料理とお酒
家ではどんな料理を作るのが好きですか?
僕は毎日お酒を飲むので、お酒に合う料理を作ることが多いです。あまりおしゃれなものは作らないですが(笑)、最近は回鍋肉や青椒肉絲など中華にハマっています。あと冬は、蒸し料理もよく作ります。メンテナンスは少々手間ですが、蒸篭で作るとおいしいです。
家では普段どんなお酒を飲みますか?
お酒はなんでも飲みますが、特に気に入ってストックしているのが〈HOLON〉のクラフトジン。ジンは蒸留酒なので度数は高めですが、HOLONのジンはそれを感じさせないぐらいフレーバーの心地よさ、味わいがあって、ストレートでも飲めてしまうぐらいおいしいです。春夏秋冬で限定フレーバーを出していて、金木犀を基調とした秋のジンはおかわりで2本購入しました。お茶で割ったあと、最後にドライのキンモクセイの花びらを散らすことで、さらに香り豊かに楽しんでいます。
いつもの部屋にまずは一輪、好きな花を飾ってみたり、毎日の晩酌もお酒づくりにひと手間かけてみたり。ほんの少しのことで、毎日はもっと捗るはず。自分がごきげんになることを見つけて、暮らしに小さな革命を起こしてみてはいかがでしょうか?
前編では、今の住まいを選んだ理由や家づくりのテーマ、コンパクト物件でも自分らしくインテリアを楽しむ工夫についてなど、詳しくお聞きしています。ぜひ前後編合わせて、お楽しみください!
朝日が気持ちいい、
屋根裏部屋のような物件
今の物件に住み始めた経緯を教えてください。
もともとは、同じマンションの下の階の部屋を内見しに来て。ちょうど最上階も空いたからと見せてもらったのが、このちょっと変わった物件でした。キッチンのシンクが賃貸では珍しい陶器だったり、角部屋で三面採光なこと、ヘンテコな斜めの壁も気に入りました。
改めて、今の家に引っ越してよかったなと思うことは何ですか?
朝、とても日当たりが良くて、朝日と共に目覚めるようになりました。以前はバーで働いていたこともあって夜型の生活でしたが、今は完全朝型に。最近取り入れた〈TOSO〉のバーチカルブラインドは、ほんのり光を取り込める透け感のあるタイプ。縦の空間を意識できるようになり、天井を高く感じられ、部屋全体がシャープな印象になったと思います。
ポップな花と意外性のあるインテリアで、
心躍る空間づくり
自宅づくりのテーマを教えてください。
好きな色を自由に使ったり、アクセントクロスで空間に奥行きを持たせるなど、パリのアパルトマンのように、コンパクトな住まいを自分らしく楽しむことはひとつのテーマです。さらに、花が引き立つようなインテリアコーディネートも意識。大きな家具や床、壁の色は、白、グレー、ベージュをベースにすることで、花の色が引き立つようにして、花と相性のいい緑は多めに取り入れています。家具は気軽に変えられないものですが、お花は気軽に変えられる要素。そのときどきの気分に合わせた花を取り入れています。
アクセントクロスを貼ったベッドスペースについて、詳しく教えてください。
賃貸でも使える、剥がせるアクセントクロスは、壁紙専門店の〈WALPA〉の実店舗で実際に色を見て購入しました。テラコッタに似た色で植物との相性も良く、飽きが来ないだろうと選びました。
ベッド上にかけている写真をモチーフとしたブランケットは、韓国のインテリアブランド〈SLEEPTIGHT OBJECT〉のもの。チェジュ島の大自然と、そこに佇む馬の群れが素敵。ぬいぐるみなどで使う生地で作られているので、手触りが良いのもうれしいポイントです。
インテリアはどのようなものが好きですか?
ポストモダンや無機質だけど温かみがあったり、意外性のあるインテリアに魅かれます。
例えば、床置きしているくねくねした形の照明は、〈IKEA〉と立体アーティスト〈GELCHOP〉のコラボアイテム。期間限定で販売していました。六角レンチをモチーフにした奇抜なデザインがかわいいですよね。
部屋づくりを考えるにあたり、軸となったインテリアアイテムはありますか?
ガラスウェアブランド〈TOUMEI〉のペンダントライトは、我が家のアイコニック的存在。“ポップ”という言葉だけでは片付かない魅力があるなと、銀座の〈シボネ〉で一目惚れ。明かりをつけていないときもアートとして楽しめます。また、我が家にはTOUMEIのデザイナー・アーティストの髙橋漠さんが手がけたガラスオブジェの写真も飾っています。
また、TOUMEIのプロダクトを愛用していることをInstagramで投稿したら、なんと〈ほぼ日〉の方が見つけてくださって、TOUMEIとのコラボが実現!一緒にフラワーベースを作ることになり、ちょうど最近完成しました。
TOUMEIさんとほぼ日さんと約半年ほどじっくり相談しながら製作しました。口径が狭すぎると洗いづらいし、広すぎるとお花があばれて生けにくい。日常的に自宅で使ってみることで微調整を繰り返し、サンプルづくり3度目にしてようやく理想的なフラワーベースが完成。僕もTOUMEIさんもインテリアが好きなので、お花を生けなくても楽しめる花瓶に仕上がりました。
18㎡・ワンルームで、
上手に暮らすアイデア
ダイニング兼デスクスペースについて、教えてください。
ダイニングテーブルも兼ねているデスクは〈IKEA〉のMICKE。鉄脚はホワイトにしたかったのでマスキングテープで加工しています。椅子はオランダのヴィンテージ。個性的だけど温かみのあるチェアを探していたら〈Yahoo!オークション〉で見つけました。デスクの上に置いている、プリンターのような家電は〈Aladdin〉のオーディオ内蔵型プロジェクター。壁から最低24cm離せば100インチの大画面が楽しめる超単焦点モデルでコンパクトライフにおすすめです。
他にもコンパクトライフにおすすめなアイテムを教えてください。
takayo katayamaさんの籐のモビール
温かみのある籐で洗練された曲線美を描いた作品。ずっと欲しかったのですが今まで欠品続きで、最近ようやく手に入れることができました。大きくて存在感はあるけれどシンプルで圧迫感が出ないので、コンパクトな部屋でも高い位置の空間を上手に飾れます。
オーディオテクニカの「Sound Burger」
コンパクトでどこでも手軽にレコードが楽しめるレコードプレイヤー。スピーカーはBluetoothにつなげて使えたり、充電式だったり、レトロな見た目ながら現代人にマッチした性能を備えています。
Kartellの「コンポニビリ」
ベッド横に置いているのは、イタリアのインテリアブランド〈Kartell〉の収納家具。Kartellはプラスチック加工技術を活かした、モダンなデザインの家具が魅力的なブランド。我が家では、ベッドサイドテーブルとしても活躍しています。
コンパクトな住まいでもすっきり暮らすためにどんな工夫をしていますか?
収納については、ベッド下のスペースをフル活用。オフシーズンの服や使用頻度の低い掃除用品、本などをしまっています。ベッドは〈IKEA〉のものですが、しまうものが多すぎたので、もともとついていた引き出しは取り外し、ローラー付きの衣装ケースをそのまましまえるように改造しました。
あとは、意識的にモノの住所を決めること。コンパクトな住まいだと少しでも散らかると気になるので、モノの定位置を考えるのは大切だなと思います。僕はそのときどきのライフスタイルに合わせて模様替えをこまめに行うタイプ。そのため、その都度住所変更しています。さらに、必要以上にモノを持たないことも大事。1個買ったら1個手放すことを意識して、1年使わなかったものは処分するようにしています。
8畳・ワンルームというコンパクトな住まいのなか、様々な工夫で部屋を広く使いながら、色とりどりの花と好きなインテリアを目一杯楽しんでいた大矢さん。後編では、大矢さんの暮らしでは欠かすことのできない花の話や、コンパクトでも快適なキッチンづくりの工夫、気分転換にもなっているという料理やお酒について詳しくお聞きしています。ぜひお楽しみに!