新築でも味がある、「non color」なインテリアと自然体に暮らす(後編)

自作の新しいものと古いものが共存する、
北濱さん流インテリアのマイルール

アクセサリーをお店のディスプレイのようにして収納しているのも印象的ですね。

妻が趣味で作った指輪もインテリアに取り入れたいと思っていたので、ショーケースを作りました。天板はもともと古い家具の扉だったもので、ベニア板をくり抜き、同じサイズのガラスをはめています。

ご自宅には自作しているものが多いですね!

大学は美術大学に通っていて、工芸工業デザイン学科のインテリアデザインコースに在籍していました。その頃から図面を描くことは多かったのですが、実際にものを作るようになったのはインテリアショップのVMDを担当するようになってからです。仕事では、壁の塗装からテーブルや棚などの家具、アクセサリー用の小さなディプレイ小物まであらゆるものを自作。普段からピンタレストや海外のインテリアサイトから様々なアイディアを収集しています。

ご自宅には、新しいものも古いものも同じくらいありますが、見事に一体感を醸し出しているのが不思議です。インテリアのマイルールはありますか?

色使いは特に意識するようにしています。ベースになる色をある程度絞って、空間のなかで色が移っていくような感覚で、使う色をところどころリンクさせながらディスプレイすると上手くまとまるような気がします。あとは、見せたいもの以外は見せないこと。夫妻揃ってものが好きですが、好きなものをすべて表に出してしまうと上手くまとまらないので、もの同士のバランスを見て、そのときどきで入れ替えながらインテリアを楽しんでいます。我が家は収納スペースもたくさんあるので、昔手に入れて眠らせているものも結構あります。リビングに敷いているラグは7年ぐらい経ってようやく日の目を見ました(笑)。ものを選ぶときは組み合わせありきで選ぶのではなく、単体でもしっかり好きだと思えるものを選ぶこと。気に入ったものしか置かない空間であれば、ものが簡単に増えることもないし、空間をきれいに保ちたいと掃除もやる気になれますよ。

古いものと自然物の心地いい関係

ご自宅には古い家具が多いですが、古い家具でもどのようなものが好きですか?

マホガニー材を使っているような、いわゆるTHEアンティークの赤茶色のものよりは、経年変化して自然物に近づいた柔らかい色味だったり、単調ではない風合いのものが好きです。例えば、リビングでディスプレイに使っているイギリス製の古い棚は、もともと植物を置くために使われていた棚で、土がそのままペンキで塗り固められていたり、棚板の切りっぱなし感であったり、おそらくとてもラフに使われていたと思うのですが、そんな自然体な佇まいが気に入っています。

飾っているオブジェやアンティークの家具、自作のものに共通点はありますか?

作為的ではない、自然な風合いのものは美しくて好きです。自分がなにかを作るときも自然に委ねることを意識しています。石膏を使ったものづくりをすることも多いのですが、マーブル模様などは思いもよらない表情が生まれるので好きですね。

なにかコレクションしているものはありますか?

鉱石は大好きです。年に2回ほど開催している石の展示会「ミネラルショー」へ行って購入しました。一般の方でも入れる展示で、世界中から石のディーラーさんが集まります。見たことのないような美しい石がたくさん手に入りますよ。

時代に埋もれた古いものが甦る、
寝室は「好奇心の戸棚」

寝室作りのテーマはありますか?

好奇心を掻き立てる生物学的なオブジェを取り入れながら、“キャビネ・ド・キュリオジテ”をイメージしました。キャビネ・ド・キュリオジテとは、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの王侯貴族や学者、文人の間で流行したという様々な珍品を集めた博物陳列室のことで、“好奇心の戸棚”という意味です。ただ、キャビネ・ド・キュリオジテのインテリアは重厚なものが多いので、生活空間としては重くなりすぎないように、色は白を基調に軽やかに見せられたらと思いました。

カーテンも部屋の雰囲気によく馴染んでいますね。

寝室のカーテンは、布にプリントしてくれる業者さんに注文したオリジナルのもの。版権が切れている古い本の写真を自分たちでコラージュしてプリントしてもらいました。

寝室に置いている家具について教えてください。

本棚とベッド以外はすべて古いもので、60〜70年代ぐらいのヴィンテージのものが数多くあります。なかでも当時の人々にはその良さがあまり理解されずに、“時代に埋もれたもの”に魅かれます。今見ても素敵で新しく、本当に古いものなの? と感じられるようなものは、おそらくそのものが生まれた当時には流行らなかったはず。そんなものを見つけると発掘したという喜びがあります。例えば、ゴールドのバーカートや隣に置いている椅子は、今見ても新しく感じられる古いものだと思います。

古いものと新しいもののちょうどいい具合を探りながら、たくさんの好きなものを自分たちらしくまとめあげていく。その過程がなによりも楽しいと話してくれた北濱さん。趣味であるインテリアを通じてコミュニケーションを深めていく、ニュートラルな北濱さん夫妻の住まいには、夫妻で自然体に心地よく住まうためのたくさんのアイディアが詰まっていました。

ノンカラーが落ち着く、
ニュートラルでゆとりのある部屋作り

住まい作りのテーマを教えてください。

ずばり、「non color」です。我が家のインテリアは、落ち着ける白やベージュを中心に、経年変化した古い家具や自然物が生み出す、単一ではない、何色ともつかないノンカラーな色彩がベースです。妻と住み始めてからは、彼女の好きなゴールドもアクセントに取り入れるようになりました。また、国やブランド、年代に捉われないという意味でも「non color」でありたいと思っています。家具はヨーロッパの古いものが多いですが、リビングの奥には竹のようなヤシ科の観葉植物をセレクト。東洋的なイメージも取り入れて、シノワズリな要素もプラスしました。○○テイストと括られることのない、僕たちが心地いいと思える空間を作っていければと思っています。

特にお気に入りの家具を教えてください。

粗削りでラフな造りが気に入っている、フランスの古いダイニングテーブルです。海外のアンティークものだと、奥行きが90~100cmぐらいあるものが一般的ですが、このテーブルは奥行きが68cmととても珍しいサイズ感なのです。人が対面して座っても近すぎず、横幅があるので4人でも座れます。仕事でご一緒している家具のディーラーさんから運良く購入させてもらいました。造りを見る限り、ブランド家具ではなくお店の什器などとして作られたもので、だからこそ生まれた珍しいサイズ感なのだと思います。また、別で購入したダイニングチェアは、前足だけに装飾が付いていて、華美でないデザインがお気に入りです。地元札幌のアンティークショップ〈unplugged〉で購入したもので、このお店では家具表面の塗装を剥がして、無垢な状態に戻した家具を多く販売しています。

家具選びにルールはありますか?

我が家は広くないので、狭いなと感じてストレスがかからないように、特に家具のサイズ感にはこだわっています。なるべく奥行きのない家具を選ぶことで、動線をしっかり確保。また、夫婦揃ってインテリアが好きなので、お互いのこだわりをすり合わせることも大切にしています。必要な家具があれば、僕が3つぐらい候補を挙げて、妻も意見が合致するものを購入。小物を飾るときも、お互いが納得したものを厳選するようにしています。

古い家具を選ぶときに心がけていることはありますか?

できるだけラインの細いものを選んで、空間に圧迫感が出ないように心がけています。ダイニングチェアも背もたれの面が抜けているものを選ぶことで軽やかさを意識しました。

家具はどこで購入することが多いですか?

基本的には海外のサイトから個人輸入で購入することが多いです。その方が安く手に入るし、選択肢が増えます。探すのは大変ですが、それが楽しいと思える性分。僕は英語が堪能ではないので、翻訳サイトを駆使しながらやりとりしています。

「飾る」をめいっぱい楽しむための、
大胆なリビングアイディア

11畳ほどのコンパクトなリビングダイニングの中央に、あえて博物館や美術館で見かけるような「スタチュースタンド」を置くというのは思い切った発想ですね!

部屋全体で見たときに、ダイニングチェアの明るい木の色だけが浮いてしまうと思って、同じ質感の家具を探していたら、妻がこのスタチュースタンドに一目惚れ。ダイニングチェアと同じく〈unplugged〉で購入しました。これを置くことでソファは置けなくなってしまったのですが(笑)、部屋の家具に高低差が出て、空間全体のバランスが上手い具合に取れました。結果的に置いてよかったなと思っています。

スタチュースタンドの周りに飾っている壁がけの作品群も素敵ですね。

中央に飾っているのは、石膏を使って自作したアート作品。仕事で繋がりのあるガラス作家さんに石膏の扱い方を教えてもらって以来、ディスプレイ用什器などの制作でもよく石膏を使用しています。左のものは、近所の神社で定期的に開催する小さな骨董市で購入した和紙。右は、イスラエルのマーブリングペーパーを額装したもので、どちらも500~1,000円くらいの安価なものでしたが、とても気に入っています。

リビングは「飾る」が主役の空間ですね! ディスプレイでとっておきのアイディアはありますか?

チェコの古いグラスを6つ買ったのですが、使っていたら2つ割ってしまって……。どうにか割らずに愛でる方法はないかと考えた結果、グラスをガラスドームに見立てて、妻がコレクションしていた古い写真を飾ってみました。これは、田舎の暮らしを撮り下ろした海外の写真集を眺めていたときに偶然得たアイディアでした。ディスプレイは正解があるものではないので、自分が「好きだな」、「心地いいな」と思う感覚を大切にしながら自分なりに試行錯誤しています。アイディアは、ピンタレストを見たり、アート系の洋書などからヒントを得ることも多いです。

家事がもっと楽しくなる!
見た目のいいキッチンと使えなかった器の話

キッチンの家具や収納グッズはどのようなものを使っていますか?

ステンレスのスパイスを収納している小さなラックと冷蔵庫横の大きなラックは〈dinos〉、白い大きな棚は〈IKEA〉で購入したもの。キッチンのインテリアはリビングダイニングの家具に投資する分、少々控えめですが、妥協はせずにシンプルなデザインでキッチンらしいインダストリアルな雰囲気のものを厳選するようにしています。また、スパイスなどの調味料は瓶などに移し替えて使用。小さなことですが、キッチンの見た目が良いと料理も楽しくなるし、掃除も俄然やる気になれます。あと、僕はお酒を飲むのが大好きなのですが、ビンやカンのゴミが見えないように〈ALUTEC〉のアルミコンテナに入れて目隠ししているのもポイントです。

キッチンで気に入っているインテリアはありますか?

我が家のキッチンに合わせて妻が描いてくれた油絵です。17世紀の静物画をもとにアレンジして描いたもの。キッチンもリビングやダイニングと同じように部屋の一部として楽しめればと思っています。

食器もたくさんありますね!

器も夫婦揃って大好きで、日々集めています。以前は、いい食器を集めてもなかなか使う勇気が出なかったのですが、割りたくないからといって使わないでいると扱い方がわからず、結局割ってしまうことに気がついて……。今では、お気に入りの食器こそたくさん使うようになりました。やっぱり同じ料理でもいい器で食べた方がおいしいなと感じます。

器はどこで購入しますか?

洋食器は出張でパリに行ったときに、蚤の市で買ったものも多いです。和食器は、西荻窪の〈魯山〉という器屋さんが大好きだったのですが、つい先日閉店してしまいました。あとは、〈PASS THE BATON〉や〈CIBONE〉も好きで買いに行くことが多いですね。

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