シンプルでいて味わい深い、時代を超えて愛される家
【滝沢時雄さんのコンパクトライフ 前編】
滝沢さんの住まいは、モダン・デザイナーズマンションの先駆けとも言える、建築家・内井昭蔵さんが手がけた、築54年のヴィンテージマンション。11年前の内見時は、お世辞にも“味がある”とは言えないほど、ボロボロで薄暗かったというこの部屋。今では名作家具もしっくりなじみ、明るく洗練された空間へと生まれ変わっています。前編では、この家に引っ越した経緯やリノベーションの話、リビングダイニング・キッチン・洗面所の空間づくりについてなど、詳しくご紹介。
憧れのヴィンテージマンションを、
快適にアップデート
今の物件に行き着いた経緯を教えてください。
ずっと古くて雰囲気のある物件を探していました。もともとこのマンションは友人が住んでいて、いいなと思っていて。空きが出たらすぐに内見できるように、近くのマンションに住んでチャンスを伺っていました。どの住戸も同じ造りで、横に長く、窓が多く、開口部が広い。角部屋ではない限り、あまり出会えない個性的な造りに可能性を感じていました。また、収納部が外にせり出しているので、その分居住スペースを広く使えることも理想的だったり、緑豊かな中庭の景色が高台にあって見晴らしが良いことも決め手に。実はこのマンション内でも3、4軒内見していて(笑)その中でもリフォームがされていなかった今の物件を購入しました。
リノベーションはどのような業者に依頼しましたか?
ワークショップ形式で住まい手も家づくりに参加できる〈ハンディハウスプロジェクト〉に依頼しました。間取りのプランニングから素材やパーツ選びをはじめ、床を張ったり、壁を塗ったりする作業も含め、とても楽しかったです。
家づくりはどのように進めていきましたか?
薄暗かったので、壁は真っ白に塗り、窓からの光が全体に回るように2LDK の間取りを1LDKにリノベーションしました。あまりセオリーに捉われすぎずにアイディアを出していきましたね。例えば、当時はまだ当たり前ではなかった寝室の内窓は「ここに窓があったらきっと明るくなるだろう」と自由に発想したもの。寝室なので下半分は磨りガラスにしています。あと、我が家には巾木がなかったり、窓枠は黒で塗っていたり、内装の装飾は極力シンプルになるよう工夫しました。
寝室のドア、重厚感があって素敵ですね。
これは1920年代のイギリスのアンティーク。番号が書いてあるイギリスの玄関ドアが好きで、長い間探していました。家に入れてみたら、想像以上に大きかったです(笑)。ガラスの部分はもともと入っていたステンドグラスを取り外して、隣の窓と同じ鉄線入りのガラスへ入れ替えています。
機能的で美しい、暮らしの道具
家の中で一番長く時間を過ごすのはどこですか?
リビングダイニングですね。ダイニングテーブルに座っていると、テーブルの上か足元か、猫が大体近くにいるので、一緒にゆっくりしています。ダイニングテーブルは大好きなデザイナー、ジャン・プルーヴェがデザインしたヴィトラ社のテーブルで、この家に引っ越したときからの愛用品。天板のスペアもあるのでまだまだ使い続ける予定です。
テーブル上のライトは、シェードを好きな角度に調整できる猿山修さんデザインの「自在照明」。椅子はイームズチェアを合わせています。
家具など、暮らしの道具はどんなものが好きですか?
装飾的にデザインされたものよりも、機能的に作られていて、それが美しいというのが理想的だと思っています。例えば、〈Russell Pinch〉の木製スツール。折り畳んで壁にかけることもできるデザインで、アーツアンドクラフトがルーツにある、イギリスらしいクラフトマンシップを感じます。用の美を感じる佇まいが良いなと思います。
薄暗かった水回りも
明るく清潔感ある空間に
リノベーション前、特に印象が暗かったキッチンと洗面所。今はどんな空間ですか?
キッチン
キッチンは光がたっぷり差し込むように窓辺に移動し、〈IKEA〉で購入したキッチン台を導入。コンロ上に取り付けた〈MOEBE〉のセラミックペンダントランプは、シェードがコードに固定されていないため、光を落とす向きを調整できるという優れもの。また、食器類を収納している〈Tse&Tse associees〉のインディアンキッチンラックは、見た目もよく、使いやすくてお気に入りです。
洗面所
白とシルバーで統一することで、明るく、清潔感のある印象に。〈IKEA〉のシンクをベースに、タイルを貼ったり、工業用の取手を取りつけるなどして工夫しました。メガネや香水を置いている白いウォールシェルフも〈IKEA〉。鏡はフレームのないシンプルなデザインが気に入った〈MOEBE〉のものを取り入れました。
シンプルだけど味わい深い、滝沢さんの住まいづくり。後編では、滝沢さんが今思うインテリアの考え方や好きなもの、愛猫・あおくんとの暮らしや休日の過ごし方、2021年に立ち上げた自身のブランド〈山と猫〉についてもご紹介します。ぜひお楽しみに!
※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。
Photo : Shinji Serizawa / Text : Runa Kitai