INTERVIEW

アートがもたらす、ポップな暮らし(後編)

〈VOILLD〉の店主・伊勢春日さんの自宅は、3年前に引っ越してきたという、1LDK、40㎡のマンションの一室。コンパクトな住まいでも自分らしい暮らしを満喫する秘訣は、“好きなアートを存分に飾ること”。後編では、お気に入りの場所であるリビングの話や、小さな頃からアートとともに暮らしてきた彼女が考える、アートとの心地いい暮らし方を詳しくご紹介します。

人もグリーンもアートも居心地のいい、
日の当たるリビング

自宅の中で、特に気に入っている場所があれば教えてください。

内見した際に一目惚れしたリビングです。広くはないのですが日当たりが良く、開放感があって気に入っています。この家に越してきてから育てているグリーンも急激に成長しました。ソファはもともと2人掛けの小さなものを使っていたのですが、一番いる場所だからこそと思い切って、今年はじめに大きなサイズのものを購入。L字が最高すぎて、本当に買って良かったなと思います。

出窓に飾っている作品たちも素敵ですね。

一番のお気に入りはロダンの『接吻』のレプリカ。骨董屋で購入したもので、5千円で売っていました。お店の人には「よくこんなの買うね」と言われたのですが、私は即買いでしたね(笑)。

アート作品をインテリアとしてたくさん飾る場合、まとめるのが難しいと思うのですが、どんなことを意識して作品を配置していますか?

その作品が一番生き生きしそうな場所を無意識のうちに考えている気がします。例えば、ロダンの『接吻』のレプリカは、なんとなく日当たりのいい窓際に置くのが素敵だなと思い、ここに落ち着きましたね。

ギャラリーでの経験が自宅作りで活かされていることはありますか?

壁のアートは自分で額装しています。今は賃貸でも絵を飾れるいろんなグッズが販売されていて、我が家では特殊な画びょうと貼ってはがせる粘着剤で跡が残らないように設置。ソファの背面の絵は、新進気鋭のアーティスト・BIENのドローイング。購入した作品の額装を考える時間も楽しいひとときです。

ふとした瞬間に元気をもらえる、
アートのある暮らし

アートを家に飾り始めたのはいつ頃からですか?

実家では母が好きな五木田智央さんのカレンダーを飾っていたり、小さな頃からアートは身近な存在でした。中学校の頃には、宇田川町にあったタワーレコード渋谷店のタワーブックスに通い詰めて、知らない海外のアーティストさんの作品集を買ったり、『relax』や『STUDIO VOICE』などのカルチャー誌を隅から隅まで読んだりして情報収集していましたね。

部屋のアートは、伊勢さんにどんな作用をもたらしてくれますか?

視界に入るだけで元気をもらえる存在です。作品を見ていると、買ったときのことを思い出したり。私は、知り合いの作家さんから作品を買わせてもらうことも多いので、ふとしたときにその人のことを考えたりして、家にいる時間が賑やかになります。

普段アートに慣れ親しんでいない人にもおすすめしたい、アートを飾る方法はありますか?

今は、手軽に買える作品もたくさんあるので、まずは気軽に買ってみること。買うとやっぱり飾ろうと思えるし、飾ってみたら必ず暮らしが豊かになるはずです。また、額装はどうしようと考えるのも楽しみのひとつですね。

もう少し身近なアイディアで言えば、壁にポスターを貼るだけでも楽しいと思います。我が家でもキッチンとの仕切り壁には、〈アホネン&ランバーグ〉の展示で配っていたポスターをマスキングテープで貼っています。

また、フライヤーやチラシを貼ってみるのもおすすめです。我が家にもキッチンの一角に何枚か貼っています。『$6 OFF』と書いてある紙はニューヨークで拾ったタクシー会社のクーポンです(笑)。

デジタルでアートを見ることと、生でアートと向き合うことにはどんな違いがありますか?

作品は生で見る方が記憶に残ります。見られる角度とか、見られる距離とか、情報量が圧倒的に現物の方が多いです。私が好きなのは作品を見に行くまでの過程。道中の思い出やその作品があった場所の雰囲気、匂いなど、五感で体感したことが加味されて、作品がさらに魅力的に見えたりします。

以前、ニューヨークのイサム・ノグチミュージアムに行ったのですが、それがいわゆるスラム街のような場所にあって。彼が生まれ育った場所に建っているのですが、駅から30分くらい歩く場所にあり、途中怖い映画に出てきそうな人たちに絡まれながらようやく辿り着きました。着いたときの喜びは半端なくて、一生忘れませんね(笑)。それもノグチ先生の意図なのだと思います。

アートの魅力とはどのようなところにあると思いますか?

アートは、自分の知識が増えることで新たな発見が生まれるもの。例えば、小さな頃に自分が薄っぺらい気持ちで眺めていたピカソなど、著名人の作品は、知識やたくさんの絵に触れてから改めて見ることでがらりと捉え方が変わります。それはいまだにあって、年々アートは楽しいです。もともと美術系の学校に通っていたのですが、最近は改めて美術史を勉強し始めました。

特に思い出のある作品があれば教えてください。

現代美術作家の加賀美健さんの作品です。2015年にロンドンで開催されたアートフェアで、加賀美さんが何百人もの人を即興で描くパフォーマンスをされていたとき、並んで描いてもらいました。これは宝物です。家にあるアートはどれも思い入れのある作品ばかり。だから、いつどこで買ったかというのは全て思い出すことができます。そういうものを家で眺めながら、いろんなことに思いを巡らせています。

自分が好きなアートを思う存分飾れる自宅は、自分や大切な人とのコミュニケーションを育める絶好の場所だと教えてくれた伊勢さん。アートは、自分の感性をアップデートしてくれる存在であり、大切な人と言葉にできない感性を共有する手助けにもなってくれるはず。なんだか気になってしまう作品があるのなら、それは自分の心に何か作用している証拠。そんな作品をまずは自宅に招いてみてはいかがでしょうか。

※本ページ掲載のお部屋は、SEARCHページでご紹介している物件ではありません。