INTERVIEW

エシカルディレクター・坂口真生さんと考える、これからの暮らし(前編)

「エシカル」という言葉が浸透しつつある今。改めてエシカルの意味を学び、自分たちの暮らしに取り入れてみるいい機会かもしれません。エシカル活動は、企業や団体ではなく個人でも取り組んでいけるので、実は気軽にトライできるもの。どんな暮らし方をしていてもその方向へ興味を持てば、自ずとエシカルなライフスタイルへと変化していきます。豊かな暮らしをサポートするTokyo Compact Lifeは、その楽しさや取り入れる意義を知るため、『アッシュ・ペー・フランス』エシカル事業部でディレクターを務める坂口真生さんにお話を伺いました。

「エシカル」と出会ったときに、
ライフワークにしていこうと決意

坂口さんがエシカルという言葉と出会ったきっかけを教えてください

もともと両親が福祉事業をしていた関係で、小さい頃から気づいたらフェアトレードのアイテムが家にあったり、そういう環境で育ちました。高校3年生のときから交換留学生としてアメリカへ行って、それから大学、社会人と向こうで過ごす中で、福祉や社会貢献活動をやることに関してずっと思いはあったのだと思います。実は社会福祉をやることや、他人のために自分の人生を捧げるほうが豊かなんじゃないかと。そういう思いと、アメリカでファッションや音楽の仕事をしてプロモーションやブランディングをやってきた自分の経験とが、エシカルという言葉と出会ったときに全部つながったんですよね。僕らがやってきたプロモーションという仕事、おしゃれに見せるやり方で、エシカルをつなげることができる。そう思ったのが8年くらい前ですね。書店で、エシカルという言葉と出会って「これだ!」と。それ以降、僕はライフワークにしようと決めて、今は道半ばという感じです。

現在、エシカルを広めるために様々な活動をされていますが、アメリカでの経験も役立っているのでしょうか?

それはあると思います。アメリカには20~25年前にいたのですが、当時、すでにニューヨークにはオーガニックのカフェやヴィーガン対応のカフェもたくさんあって。そこにおしゃれな人が集まるという、そういうカルチャーが始まっていたので、それをリアルタイムで見ていたというのもあると思います。

そもそもエシカルとはどういった意味を持つのでしょうか。

サステナビリティやロハスなど、似たような言葉はいろいろありますが、エシカルは地球環境や社会貢献につながる“やさしい選択”という意味です。“やさしい選択”をするという行為そのものだったり、価値観や概念みたいなもの。オーガニックコットンを使う、フェアトレードを取り扱う、有機のものや無添加のものを選ぶなど、具体的な目標のあるSDGsに比べると抽象的かもしれません。エシカルはそういう具体的な目標を立てるとき、選択をするときの基盤になる気持ちや、概念のことを指します。ものを買うときにその背景を考えながら買い物をする、エシカル消費(=人や社会、環境のことを考えた消費活動)というのも、ほぼ同義となります。ペットボトル飲料を選ぶのではなく、マイボトルに飲み物を入れて持ち歩くことでプラスチックごみの減量につながる。その選択によって環境問題にも関わってくるので、今広まりつつある概念だと思います。

サスティナブルなことをしている人たちも
クリエイターだと認識している

それでは、どうやって『アッシュ・ペー・フランス』でエシカル事業部を作ったのでしょうか。

エシカル事業部の名刺を渡すと、「エシカル事業部なんて存在するんですね」って珍しがられます。会社として認めてもらって事業部が作れるのは、『アッシュ・ペー・フランス』の代表が作った創業理念と合っていたというのはあると思います。『アッシュ・ペー・フランス』の理念は、クリエイションで世の中を豊かにするということ。僕らは、サスティナブルな世の中を作る人たちもクリエイターだと思っているから、そういう人たちと一緒に豊かな世界を作るというのは大きな意義があることだと思います。

実際に取り入れて体験すると
その楽しさ、気づきが増える

暮らしをエシカルな方向に転換することでどんな風に変化するとお考えですか?

楽しいと思います。そういう目線で見ると、自分ができることが意外にたくさんあることに気づくと思います。自然のこと、歴史のこと、モノづくりのこと。エシカルとは、「背景に目を向ける」ことなので、たとえば今、NHKで「エール」という朝のドラマがやっていますが、あのドラマは戦前の話なので、まだプラスチックが開発される前なんですよね。だから家に置いているものがすべてエシカルだって思いながら観ているんです(笑)。ガラス瓶を使い回したり、木箱や木桶を使ったり。プラスチックがないだけなんですけど、でも逆にこの短期間でプラスチックがこんなに溢れちゃったんだって気づくんですよね。そこから、それをそぎ落とすのにはどうしたらいいんだろうって考えたりします。産業革命後に一気にこうなって地球がここまで汚れて、それの反動がSDGsということになる。そういうことを考えていくと人間の進化や資本主義ってなんだろう、というところまで考えが深まっていきます。そういう気づきが必ずあると思うので、その人その人の興味のあるところから始めるのでいいと思います。政治学、経済学、環境学、人間心理学……全部に関わってくるものだから。新しい視点が増えると思います。

エシカル生活を習慣化するために意識されていることはありますか?

先ほどと同じことですが、楽しめないと続けられないので、自分の身近なところで楽しめるところから始めるといいんじゃないでしょうか。「エール」の話のように自分で観て感じたり体験すると、人と話したくなりますから。友達、家族、仕事仲間、そういう人と共有できることが楽しかったりしますし、つながっていくのもおもしろいですよね。気づきや発見、疑問をアクションしていくとつながるんですよね。SNSのハッシュタグで調べたらそこにつながって、これだけの人がこのことに興味を持っているんだ、同じ意識を持っている人たちとつながっているんだと感じられるはず。そういう実感できることを小さなことでいいので、自分なりに作っていくと習慣になっていくんじゃないかなと。おしゃれなサスティナブルメディアも出てきているので、そういうメディアに触れてみるのもいいかもしれません。

withコロナと呼ばれる今の時代、以前からの変化を感じていますか?

エシカルやSDGsという視点においては、認識はより強くなったんじゃないかなと思いますね。もともと、Z世代(1990年代後半から2000年生まれの世代を指す)の子たちの間ではずっとあったと思うのですが、withコロナとなったことで確かに広がったように感じます。人生の豊かさとは? 幸福とは何? というのを考えた人は絶対多いと思います。そしてそう考えることが、サステナビリティ、エシカルそのものだと思うので。コロナだけではなく今まで大流行した疫病なども、もとをたどっていくと環境問題につながっていくと思うので、当然これからも意識は高まっていくと思いますね。

坂口さんにエシカルの定義やエシカルを生活に取り入れることによって訪れる変化などについてお聞きした前編。次の後編では、坂口さんの今後の活動や愛用されているエシカルアイテムについてお話を伺ったので、引き続きお楽しみください!

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