DIYで叶える、理想をあきらめない暮らし
【sakiさんのコンパクトライフ 後編】
壁を自作し、家具をリメイクし、いつも愛でたい好きなものを飾る。賃貸でも自分らしい暮らしをとことん追求するsakiさん。後編では、原状回復できるDIYの工夫やすっきり整える収納のこだわり、デンマークで出会った宝物について伺いました。
便利さと美しさを両立させた、
リメイク棚で隠す収納
家の中はすっきりと整った印象ですが、収納について意識していることはありますか?
我が家はものが多い方だと思うのですが、「見せる収納はしない」と決めています。パッケージが派手な食品や、デザインが好みではない生活用品は、すべて引き出しの中へ。デザインが好みでなくても便利なら取り入れる。そのぶん“しまい方”を工夫して、視界をすっきり保つようにしています。

sakiさん宅にはたくさんの棚がありますよね。
寝室には、和ダンスをリメイクしたドロワーチェストを置いています。ヨーロッパヴィンテージのドロワーキャビネットをずっと探していたのですが、良いと思ったものは驚くような価格だったのでDIYしました。メルカリで4,000円の和ダンスを購入し、ソファー用の木製脚を取り付け、引き出しは木工所で面取り加工してもらった板を前板に重ねて、全体を塗装とヤスリでヴィンテージ風に仕上げました。見た目は小さな引き出しがたくさんあるように見えますが、実際は6つ。デザイン性と実用性、どちらも重視しました。

リビングとダイニングの棚はそれぞれ〈Re:CENO〉のもの。それぞれ下段はオープン棚とガラス扉でしたが、DIYで引き出しを追加し、徹底して隠す収納に。取っ手とネームタグも付け、愛らしく実用的に仕上げています。


ものが多くなりがちなキッチンまわり。収納はどんな工夫をしていますか?
システムキッチンの収納だけでは足りなかったので、〈無印良品〉のラックや〈Etsy〉で購入したヴィンテージのオフィス用ドロワー、壁際にはDIYしたキャスター付きのスリムワゴンを置いて、収納スペースを作りました。また、黒で存在感の強い冷蔵庫は、格子をDIYして目隠ししています。

賃貸でもあきらめない、
理想を叶えるDIY
DIYをはじめたきっかけを教えてください。
高校生の頃から家具をリメイクしていました。最初は『やればできるじゃん』という感覚で、そこから一気にハマりました。両親も『なければ作る』という考え方だったので、その影響も大きいと思います。
sakiさん宅は、空間をガラッと変えるほどの大規模なDIYが印象的です。詳しく教えていただけますか?
テレビボード
賃貸でもテレビやアートを壁掛けできるように、原状回復可能な方法で壁を自作しました。シンプルで扱いやすい〈カインズ〉の突っ張りアジャスターを付けた2×4材を柱にし、その上にプラスチックダンボールを貼って“ふかし壁”を作り、さらに家の壁に一番近い壁紙を貼っています。壁の裏は収納としても活用していて、〈無印良品〉のポリエチレンケースがちょうど入る奥行きに設計しました。夫が帰省中にひとりで組み立てたので、本当に大変でした(笑)。


寝室の壁
朝、光が漏れないように窓の端を隠すように壁を作りました。テレビボードと同じ要領で、突っ張り棒とプラスチックダンボールを組み合わせて制作。テレビボードでは、壁紙仕上げにしたのですが、上手に貼るのが難しかったため、こちらは漆喰風に仕上がる塗料を手塗りしました。

洗面所
洗面所の床には〈東リ〉の建材タイルと目地を敷き詰め、洗面台の下には棚をDIYしました。身だしなみ用品やゴミ箱なども収納できるようにしています。

初心者でも挑戦しやすい、DIYアイデアを教えてください。
ドライフラワーを吊るすアイデアです。天井に穴が目立たないフックを取り付け、デッドストックの焼き網を引っ掛けてドライフラワーを飾っています。ドライフラワーは〈TODAY’S SPECIAL〉で購入したもの。農家さんが専門で作っているそうで、色持ちが驚くほど良いんです。古くなったら新しいものに入れ替えながら楽しんでいます。

モノの背景やストーリーが、
暮らしの温度を上げる
家に飾っている小物、かわいいものが多くて気になります。
年に一度ほど、夫の故郷・デンマークに帰省するのですが、そのとき出会ったものが多いです。デンマークを代表する陶磁器ブランド〈Kähler〉の白い家のキャンドルホルダーや、〈カイ・ボイスン〉のモンキー、空港でも買える鳥のオブジェなど。


また、コペンハーゲンの蚤の市は掘り出し物の宝庫です。約200円という破格で手に入れた自転車のおもちゃは、タイヤに黒いゴムチューブがついていて、両輪ともちゃんと回る精巧なつくり。ちょっとサビがついているヴィンテージ感も含め、お気に入りです。

夫の兄から譲り受けた小さなネズミのオブジェも大切にしています。私があまりに気に入って『かわいい!』と言い続けたら、根負けして譲ってくれました(笑)。ブランドはわかりませんが、ストーリーがあるからこそ大切に思える。そんな背景のあるものを暮らしに迎えたいですね。

インテリアを選ぶとき、どんな基準がありますか?
「10年後も大切にしているかどうか」を考えます。自分が素敵だと思うお家に合うかどうか、10年前の自分の家に置いても違和感がないか――そんな想像をします。時代を超えても愛せるものと、ゆっくり暮らしを重ねていきたいです。
「なければ作る」「長く愛せるものを選ぶ」―――sakiさんの住まいには、そんな暮らしの哲学がにじんでいます。デンマークの文化に触れながら、自分たちにとって心地よい空間を少しずつ形づくる日々。限られた間取りのなかで、手を動かし、工夫し、思い出を積み重ねていく。暮らしに手間を惜しまないその過程そのものが、暮らしを豊かにしているように感じました。
前編では、引っ越しの経緯や家づくりのテーマ、暮らしに欠かせない照明やアートの話について、お聞きしています。ぜひ前後編合わせてお楽しみください!
※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。
Photo : Shinji Serizawa / Text : Runa Kitai