東京建物『Brillia』のメタバース開発
よりよい住環境を共創する東京建物では、2024年2月 、メタバース上に新たなサービスを展開します。その名も『Tokyo Meta Living』。“住まいや暮らしのアイディアの共有を通して、自分らしい生活空間を体験する”をコンセプトに、実生活での暮らしがより充実したものになることを目指しています。記事では、メタバース自体の説明やTokyo Meta Livingができた経緯、コンテンツの詳細に加え、これから増えていく楽しみについても詳しくご紹介していきます。
実生活にポジティブな影響を与えてくれる、
『メタバース』とは?
メタバースとは何ですか?
北さん:我々の捉え方では、デジタルファーストの生活圏が3DCG技術で構築された空間と考えています。もう少し説明すると、アバター(仮想的な分身)を使って、ユーザーが3DCG技術で構築された世界で様々な活動ができたり、他の人と交流したりできる空間になります。ゲームができたり、Tokyo Meta Livingでいうと部屋のシミュレーションができるなど、サービスごとにできることは様々です。
池田:メタバースと聞くと完全に独立したデジタル上の世界で、そこでの生活は現実世界と切り離されたものとイメージしがちですが、実際には現実生活と影響し合えるサービスも多くあるんですよね。
北さん:そうですね。社会生活の一部をバーチャルで楽しむ感覚でしょうか。メタバースの中で社会生活を完結するというよりは、今のリアルな生活があって、リアルでできないことをバーチャルで体験するなど、バーチャル空間での経験が現実社会の生活の一部になるイメージかと思っています。
例えば、学校を例に説明すると、いろんなタイプの学校がある中で、その選択肢のひとつにメタバース上で学べる「MEキャンパス」というものがあります。メタバース空間のアバターで学校生活を送りながら、メタバースを構築・運営するクリエイターのスキルを課題制作が中心となっているカリキュラムで実践的に学べる学校です。社会活動の選択のひとつに、メタバース上の選択肢があるということです。
『Tokyo Meta Living』を開発したきっかけを教えてください。
池田:住まいを提供するデベロッパーとして、“住まうこと”をもっと楽しく、豊かにするために私たちは何が提供できるのか、日々模索してきました。これまでBrilliaから生まれた住まいと暮らしの共創プロジェクト「bloomoi」や、自分らしさを大切に暮らす人々を紹介する「Tokyo Compact Life」の取り組みを通じて、多様な人々の声を聞き、共創の幅を拡げ、より自分らしさを表現しやすい商品・サービスの創造に取り組んできました。最近ではスマートフォンの普及により、見やすい、イメージしやすい、操作しやすい等、ユーザビリティ重視の最適なコンテンツをより強く意識し、最新技術を活かしたコンテンツ制作にも積極的にチャレンジしています。人々が住まいについて自分らしく自由に想いを描けるように、また、住まいについての情報交換を気軽に行える場を作れるように、私たちはメタバース領域での住まい開発に挑戦することを決めました。
自由度の高いカスタム空間で、
自分らしさに出会える
Tokyo Meta Livingでは、具体的にどんなことを楽しめますか?
北さん: ユーザーが「マイルーム」内で自分らしい生活空間をシミュレーションできたり、それを他のユーザーと共有できるところが特徴です。また、展示やイベントなどを楽しめる「ロビー」空間もご用意しています。
マイルームでは、どんなカスタムを楽しめますか?
北さん:3タイプの中から好きな部屋を選んで、家具や家電、壁紙や床材、BGMなどを自由にコーディネートできます。リリースのタイミングでは、家具や家電のバリエーションは多くは無いのですが、今後さらにラインナップを増やしていく予定です。木の家具は木目をリアルに再現するなど、クオリティにもこだわっています。
池田:現実世界では試すことが難しい、部屋の印象を大きく左右する壁・床のコーディネートや、キッチンのレイアウトなども固定概念に縛られずに試すことができます。また、選べる家具等については、今後アイテムを増やしていきたいと思っています。
マイルームを他の人と共有できるシステムも面白いですね。
池田:マイルームのリンクを友人やパートナーに送って実際に入室してもらうこともできます。さらに、マイルーム画面はキャプチャすることも可能で、それを投稿し共有できるSNSのようなサービスも実装しています。たくさんの人に見てもらい、周りからの共感・評価を得られることは部屋づくりのモチベーションにもつながりますし、評価の高い投稿は部屋づくりの参考にもなりますよね。将来的にはプロの空間デザイナーや、インテリアスタイリストの方が作った部屋を紹介したり、定期的にコンテストやイベントも実施することで、より盛り上げていきたいと思っています。
Tokyo Meta Livingはどのような方に、どんな目的で楽しんでもらいたいですか?
池田:分譲でも賃貸でも、住まいを検討する際には、間取りだけでなく、家具やレイアウトについても考えるもの。植栽やオブジェなどを追加で置いてみることで、こんなレイアウトもありだなと発見してもらうこともできると思います。また、一人住まいではない場合、家づくりはパートナーと意見を出し合いながら進めることが一般的ですが、イメージの共有が難しいですよね。Tokyo Meta Livingでは、“私らしい”コーディネートをシミュレーションできますし、ときにはパートナーをメタバース上の部屋に招待し、「こういう雰囲気の部屋にしたいけどどう思う?」とイメージの共有をスムーズにしてくれるのではないかと考えています。
お二人は自分の暮らしで、Tokyo Meta Livingをどのように役立ててみたいですか?
池田:なにか家具を買う前に活用してみたいです。家具は大きな買い物ですが、買う前に自分の部屋に置いてみて、他の家具や小物、壁、床との相性を確認することは現実的に難しいですよね。そこで、自宅の雰囲気に合わせてコーディネートしたマイルームに、欲しい家具に近いものを配置し、今持っている家具との相性や色の組み合わせ、置くとどれぐらいのスペースを占めるかなど、簡単なシミュレーションをすることで「家に置いてみたら違った」という失敗も未然に防げるのではと思っています。
また一方で、いつか住みたい理想のマイルームも作ってみたいです。今住んでいる家はコンパクトなので、広いスペースに大きな家具を豪快に置いて、一人称視点で部屋を見渡したときに、どんな感覚を楽しめるのか。“こういう空間に住みたい”というイメージを膨らませたいです。
北さん:私には中学2年生の娘がいるのですが、物が多いタイプで。最初に今あるものをマイルームに全部置いてみて、ものを減らして整理すると視界がこれだけすっきりするというのを見せてあげたいですね(笑)。
住まいの可能性を広げていく、
これからのTokyo Meta Living
Tokyo Meta Livingの今後の構想について教えてください。
池田:Tokyo Meta Livingでは、住まいのコーディネートを楽しめるマイルームのほか、展示スペースや大きなモニターが実装された、広い「ロビー」も設けています。ここでは、アートや家具の展示や、インテリアのプロをゲストに招いたセミナーなど、住まいづくりの手助けとなる催しも計画中。また、マイルームの家具・家電のアイテム数や機能はさらにアップデートしていく予定。まずはマイホームを検討しているかどうか関係なく、楽しいと思ってもらえるコンテンツづくりに尽力します。
Tokyo Meta Livingに今後搭載したい技術があれば教えてください。
北さん:今、弊社で開発中の生成AIを活用したAIアバターに期待しています。チャットボットにアバターがくっついたような機能で、ゲームでいうプレイヤーのいないキャラクターのような存在。住まいや暮らしにまつわるプロの知識を集約したアバターができれば、24時間365日いつでもプロの意見も交えながら住まいづくりに取り組むことができます。一人で空間を作っていくのも面白いですが、専門家と相談しながら空間づくりを楽しむことができるのではないかと。Tokyo Meta Livingで生まれたアイディアを実際の住まいや暮らしに活用するところまでしっかりつなげられるように、ひとつひとつ課題を解決していきたいと思っています。
自由に思いを描くことのできるメタバース上で、本当の自分らしさに向き合いながら住まいを模索できるTokyo Meta Living。メタバースサービスと聞くと、一見難しそうに感じるかもしれませんが、操作はゲーム感覚で楽しめて、普段ご使用のスマートフォンやPCのWebブラウザから気軽にアクセスできます。ぜひTokyo Meta Livingで自分らしい生活空間を体験してみてくださいね。
Photo : Serizawa Shinji / Text : Runa Kitai