自分の“好き”を培う、ストイックなギャラリーのようなワンルーム(前編)
『自分らしい住まいとは何か』。そんな大きな問いと向き合うべく、3年前に実家暮らしを卒業し、一人暮らしをはじめたというインテリアスタイリストの竹内さん。はじまりの舞台は、この約40㎡のワンルーム。半年ほどかけてセルフリノベーションしたというギャラリーのような空間には、選び抜かれたモダンでクリーンな家具たちが、柔らかな光のなかに美しく佇んでいます。生活感を匂わせないこの部屋で、竹内さんはどのような暮らしを営んでいるのか。シンプル住まいのアイディアを詳しくご紹介します。
セルフリノベーションで叶えた、
置く家具を選ばない、フラットな住まい
この物件を選んだ理由を教えてください。
木目のシートやビニールクロスなど、床や壁、建具にフェイクの素材があしらわれていない、無機質でシンプルな内装が気に入りました。これから先、気分が変わって木の家具を置きたくなったとしても、フローリングの色を気にする必要がなく、置く家具を選ばないシンプルな内装であることは重要でした。また、窓が多く、夕暮れまでたっぷり自然光が入ることも決め手のひとつ。一日の中で光の移ろいを感じたり、光の色で季節を感じられるようになりました。
内装はどのような箇所をセルフリノベーションしましたか?
もともとここは建築事務所だった物件で、リノベーションは床に敷かれたタイルカーペットをすべて剥がし、グレーのペンキを塗るところから始めました。その他には、寝室に小上がりの床を作ったり、出窓を自作したりしました。リノベーション費用は、手伝ってくれた友人たちへのお礼も含めて、総額50万円ぐらい。大学では建築を学んでいたので、最低限の知識はあったのですが、リノベーションの腕は素人同然だったので、知り合いの建築事務所の方に話を聞いたり、YouTubeを見ながらどうにか形にできました。
部屋を作る上でテーマにしたことはありますか?
ギャラリーのような空間を目指しました。家具は長く使いたいと思いつつ、インテリアスタイリストという職業柄、いろんな家具を使ってみたいという思いも見越して、置く家具を選ばないフラットな空間にしたいと思いました。ベースとなる内装は無機質にして、家具や置物などをアクセントにしています。また、空間がストイックな分、グリーンも入れながら柔らかさをプラス。同系色でまとめている分、いろんな質感の素材を使うように心がけています。
リビングの収納スペースはどのように確保しているのでしょうか?
リビングの収納棚やキッチンが隠れる位置に、白いコットンを二重にした全長6.2mのレースカーテンを設置しています。カーテンをサッと引くだけで生活感をシャットアウトできるように工夫しました。
もの選びはとにかく悩んで、自分の“好き”を探求!
リビングルームの家具について教えてください。
グレーのアームチェアは白金にある〈BUILDING〉でリペイントして、座面も張り替えて販売されていた〈THONET〉のもの。クラシカルで美しい曲線美がたまらない名作です。ソファは中古で譲り受けた〈arflex〉の〈MARENCO〉。ユニット式で2人掛けから3人掛け、4人掛けへと自在に変形できるので、暮らしの変化に応じた使い方が可能です。また、ローテーブルは店舗什器用に販売されていた資材をネット注文して自作しました。テーブルの足組みとなるポールは長さをオーダーし、それに合わせてガラスの天板とジョイントパーツを購入。ガラスを使うことで、部屋が狭くても圧迫感が出ないように配慮しています。
自宅のインテリアはどのようなものを選んでいますか?
すべて純粋に自分が好きなもので、モダンかつコンテンポラリーなものを選ぶ傾向にあります。仕事柄、常時ものに囲まれているので、自宅では仕事を想起させない特徴のないものやあまりお店に置いていない珍しいものに魅かれます。アイテム単体の個性が主張しすぎず、我が家に合うかどうかを意識しながら馴染むものを選んでいます。
もの選びで大切にしていることはありますか?
中途半端なものは買わないこと。よく考えてから買うようにしています。僕はとても悩むタイプで、今もティーポットが欲しいのですが、まだ理想のものに出会えておらず、もう3年以上探しています(笑)。日用品ひとつにしても、デザインが気に入るか、使い心地は良いか、飽きがこないかを常に吟味。中古であっても良いものを買うことで、生活の質はぐんと上がるもの。気に入ったものなら、海外の通販サイトからも注文して手に入れます。
コンパクト物件ならではの、省スペースアイディア
コンパクトな物件で暮らす上での工夫を教えてください。
部屋に圧迫感が出ないように、収納スペースは扉をつけたりして雑多なものが目に入らぬよう、できるだけ目隠ししています。あとは、置く家具の高さを低めにしたり、色のトーンをまとめたり。また、バッグやコートを吊るすなど、床だけではなく、上の空間も利用しながらものを収めるのもポイントです。
玄関前のコート掛けはどのように作ったものですか?
ガス管用のパイプを天井からワイヤーで吊っただけの簡易なものです。ショップで見かけるインテリアを参考に作りました。シンプルな造りで場所を取ることもなく気に入っています。下の革靴を収納している真っ白な箱は〈楽天市場〉で注文したもので、靴箱も統一しています。
隠し扉をつけている洗濯機置き場もすばらしいアイディアですね!
部屋の隅にあった微妙な凹みに合わせて、木の角材と合板で扉を作りました。サイズぴったりの棚を探して、洗濯機のほか、掃除道具なども収納。扉には全身鏡もつけています。
※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。
Photo : Shinji Serizawa / Text : Runa Kitai