愛しい手仕事に囲まれた、縦長の小さな住まい(後編)
「豊かな暮らしを写真で表現するために、まずは自分の生活と向き合うことから」。そう胸に決めて、この家での暮らしを始めたというフォトグラファー・上原未嗣さん。コンパクトな住まいでも、模様替えやDIYを楽しみながら、じっくり暮らしを育んでいる様子。後編では、床で過ごすリビングの話や、インテリアの好み、好きな家時間について、お話をお伺いしました。
床で過ごすリビングは、
戸棚を活かして部屋をすっきり
リビング作りではどのようなことを意識しましたか?
リビングは、床でくつろげる空間を意識しました。家具は目線の高さに合わせて、背の低いものを配置。床に座るという古風な過ごし方に合わせて、家具も小物も民芸のものを多く取り入れています。
上原さん宅には戸棚が多いですね。
部屋をすっきりさせたいので、我が家の収納は見える収納よりも、隠す収納がメインです。とにかく本がたくさんあるので、それらをしまうためにも棚はたくさんあります。本はオープン棚で収納するのが一般的ですが、我が家は量がありすぎるので、インテリアを楽しめるようにあえて戸棚へ。これは、コンパクト物件ならではの工夫ですね。棚は、背の高いものを置くと圧迫感が出てしまうので、背の低いものを少しずつ配置。小さな棚は、移動がしやすく、模様替えもしやすいので気に入っています。
個性をミックスしながら、
調和のとれるインテリア
居心地のいい住まいへと整えるために、どんなことを実践していますか?
日常的に模様替えをします。ものの魅力が最大限に発揮できる場所を探しながら、居心地のいい住まいを少しずつ作っています。引っ越してきた当初はものが少なく、リビングのものをダイニングに移動したら、リビングが寂しくなってしまったり。あまり模様替えを楽しめなかったのですが、ここ2年ぐらいでようやく好きなものが集まってきて、家時間を思う存分楽しめるようになりました。夏は湿気が気になるので、その分風通しが良くなるようにドアを外して、家具の配置を見直したり。あと、新しいものがきたときにガラッと模様替えをします。
インテリアはどのようなものが好きですか?
特に手仕事の跡を感じられるものが好きです。個性を感じられるものが多く集まることで、より、ものの“らしさ”が見い出せるのではないかなと思っています。ものを購入するときは、すでに家にあるものとの共通点を探りつつ、調和が取れるものを迎え入れます。
小さなインテリアを飾る上でのマイルールを教えてください。
ものにとって、居心地のいい場所を見つけてあげたい。そんな気持ちで配置を考えます。我が家には棚が多い分、ものを飾れるスペースがたくさんあるのですが、棚上はなんとなく色やテーマでものを振り分けています。例えば、リビングの黒い棚の上には、緑や黄色、赤をテーマカラーに、民族感のあるものを並べてみました。
ダイニングのハンス J. ウェグナーの棚上には、シンプルで洗練された棚の雰囲気に合わせて、品のあるものを集めています。急須は岩田圭介さんの作品。ぽってりとした柔らかなフォルムは眺めているだけで気持ちが落ち着きます。
好きなインテリアショップを教えてください。
海外の民芸品を多く扱っている、横浜の〈巧藝舎〉は大好きです。店主さんが、ものの貴重なストーリーをじっくりと教えてくださいます。このお店との出会いを機に、我が家には海外の民芸品がたくさん増えました。お気に入りは、ペルーで作られた木彫りの人形。もう1家族しか作っていない民芸品なのだとか。貴重な手仕事の品は特に家に迎え入れたいなと思います。
そのほかには、世界のモダンデザインと民芸を扱う古道具店〈LET EM IN〉や、下北沢にある古道具店〈ナンセンス〉にもよく行きます。あと、地方出張の際、空いている時間に地元の古道具屋さんへ行ってみるのも好きです。
間接照明でぼんやりと過ごす、
お気に入りの夜時間
日々の暮らしの中で特に好きな時間はありますか?
夜、レコードでジャズを聴きながらまったりとくつろぐ時間が好きです。夜は、家に点々と配置している間接照明をつけて過ごしています。夜の時間が好きなので、照明は常に探しています。
押し入れをレコード置き場として活用しているアイディアもお見事です!
インテリアの収集がひと段落したので、最近、レコード機器を買い揃えました。家にいる時間が格段に楽しくなりましたね。押し入れの一角は余白スペースのように使っていて、今はレコード置き場に。奥の壁に布やオブジェを飾ることで、リビングとの一体感も意識しています。
まさにフォトグラファーらしい、どこを見ても気持ちの良い眺めに整えられた、上原さん宅。日常的に模様替えをしたり、不満点をDIYで補ったり、常に自分の手を動かしながら工夫を凝らすことで、住まいへの愛着は確かに増していくもの。住み心地の良さは、必ずしも部屋の広さとは比例しないことを教えてくれる、とても素敵な住まいでした。
※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。
Photo : Mitsugu Uehara / Text : Runa Kitai