INTERVIEW

リノベーションの着想は『洞窟』から。素材感が活きた、陰影のある住まい(後編)

ほぼ日の当たらない暗がりの部屋も、『洞窟』に見立てることで居心地のいい空間へと昇華させた、建築家・松山敏久さんのご自宅。部屋の印象を大きく左右する壁や天井には、土や木、コンクリートなど陰影を楽しめる素材をあえて使ったり、隠すことが一般的な寝室を思い切ってLDKと一体化させたり、住宅作りでは“型破り”とも言える独自のアプローチで、居心地のいい住まいを作り上げています。後編では、ワークスペースや洗面所周り、キッチンについて詳しくご紹介します。

玄関から土足で入れる、
2.5畳のワークスペース

コンパクト物件で暮らす上でのスペース作りの工夫を教えてください。

部屋の広さは、なんとなく決めるのではなく、用途を踏まえて必要最低限の広さを割り出しています。家作りでは、部屋の最小の広さを4.5畳と捉えることが多いですが、就寝するだけの空間であれば3畳でも充分機能は果たすなど、部屋でどんなふるまいを実現するかで、どれだけのスペースを確保すれば良いかがわかるはず。こうやって少しずつ広さを見直していくことで、我が家では無駄なスペースをなくすことを心がけました。

コンパクトな住まいながら、ワークスペースもしっかり確保されていますね!

我が家のワークスペースは2.5畳ほどの空間ですが、仕事はデスクワークなので十分に感じています。ワークスペースは、リビングや寝室などの生活空間とは切り離したいと思い、玄関脇の土間エリアに配置。土足で入れるスペースにしています。そうすることで、仕事とプライベートのオンとオフが明確になりました。コンパクトな空間ですが、秘密基地のようで気に入っています。

ホテルのように、
清潔感のある広々バスルーム

素敵なバスルームですね! リノベーションのポイントを教えてください。

バスルームはもともとあったユニットバスをなくし、モルタルの壁と鋼板ホーローのバスタブを入れて、少し広さを拡張しました。洗面所と浴槽の壁は『モラート』という、防水性能を持った特殊セメントモルタルで仕上げています。僕はお風呂の時間が好きで結構な長湯派。クローズドされた浴室だとなかなかくつろげないので、入口の壁をガラス張りにすることで抜け感のある空間を意識。建具には錆止めのメッキ加工であえて仕上げた銅製建具でバスルームを特長付けています。シャンプーなどを収納しているバスラックも同じ素材で作ってもらいました。

すでに2年住んでいるとは思えないほど清潔感がありますね。

たくさんのこだわりが詰まった住まいなので、なるべく長く維持できるように比較的掃除はこまめにしています。浴槽のガラスは1週間に1度は磨いたり、洗面台はこまめに拭き上げたり、掃除は日課にできるように心がけています。ここまでいろんな素材を使った家作りは初めてだったので、実際に生活してみてどう汚れるかを実験しているような感覚です。

暮らしの可能性が広がる、
キッチン&リビング

自宅の中で、特に気に入っている場所を教えてください。

キッチンとリビングです。我が家のリビングはあまり広くないので、キッチンカウンターの奥行きを広く取ることで、ダイニングテーブルとしても使っています。キッチンカウンターは自分の身長に合わせて造作しました。料理を作って、そのままサーブしてすぐに食事ができるし、シンクとの距離が近い分、すぐに片付けもできて効率的。また、バーカウンターのようにしてお酒を飲むときにもちょうどいい場所です。テレビを見たいときは、ソファに座って食事をしたり。その時々でいろんな楽しみ方ができるリビングとキッチンはお気に入りの場所ですね。

キッチン壁側の収納棚の一部は奥行きが深く設計されていますね。

キッチンの収納棚の一部は、洗濯機置き場も兼ねています。洗濯機の大きさに合わせて深めに作っているので、扉は2方向から開けられるようにして、収納しやすく設計しました。

家で過ごすオフの時間は、どのように過ごしていますか?

休日は、妻と一緒に料理をしたり、リビングでドラマや映画を見たり、次のオフにどこへ出掛けるか情報収集をしたり。平日もできるだけ早く仕事を切り上げて、19時くらいから一緒にごはんを食べて、ゆっくりテレビを見たり。夫婦で過ごす時間を大事にしています。

また、この家に引っ越してからは人を招く機会も増えました。今はご時世的になかなか叶いませんが、『家開き』というイベントもよくしていました。これから家を作る人や、リノベーション経験者が集まって、意見交換しながら料理やお酒を楽しめる場。SNSでも参加者を募るオープンな会で、初対面の方もきてくれました。また、落ち着いた頃に開きたいなと思っています。

一般的な築古物件を、まるでホテルのような特別感漂う住まいへと一新させた松山さん。松山さんにとって家とは、「可能性を秘めた空間」。今の家を購入してから、交友関係が広がったり、個人の仕事が増えたり、生活が大きく変化したといいます。人それぞれ暮らし方が異なるからこそ、家作りにも自分なりの答えを持っているもの。既成概念に捉われることのない自分らしい住まい作りから、生活に新たな風を吹き込んでみてはいかがでしょうか。

※本ページ掲載のお部屋は、Brilliaの分譲マンションに限らず、ご紹介しております。

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